JR九州のななつ星という豪華列車をデザインした水戸岡さんの本(電車をデザインする仕事 「ななつ星in九州」のデザイナー水戸岡鋭治の流儀)を読んでいます。
最近まで水戸岡さんのことはまったく知りませんでしたが、ななつ星のデザインの素晴らしさからそのデザイナーが誰かを調べ、その存在を知りました。
多くのJR九州の列車をデザインし、岡山の電気軌道MOMOや、和歌山のローカル列車などをデザインしてきたとのことでした。
MOMOにも何度も乗ったことがあるし、九州新幹線つばめも乗ったことあったのに、水戸岡さんのことを知らなかった自分を後悔しました。
それで、ななつ星のあまりの美しさを受け、最近出た水戸岡さんの本を買って読んでいるのです。
デザイナーの方の書いた本なので、自分の仕事とは分野違いだろう、と予想して読み始めたのですが、読めば読むほどなにか自分の仕事上の悩みや考え方について教えられるような内容でとても驚いています。
たとえば、、、
・昔の村仕事には「米仕事」と「花仕事」があり、米仕事が金を設けるためのもので、花仕事は公益的な仕事のことを指してきた。そして、誰でもこれを両方こなしてきた。デザイナーの仕事も同じように、金儲けだけを考えてやっていてはいい仕事はできない。
・デザイナーの意向と依頼者の意向とが、51:49の比率を守れるようでないときには依頼を断るようにしている。デザイナーの意向を越えて依頼者の意向が大きくなりすぎるようだとそもそもプロであるデザイナーに頼む意味がないし、いい仕事ができない。
・依頼者との十分なコミュニケーションが成り立たないことには依頼者の意向を十分にくみ取ることができないから事務所ではおいしいお茶や茶菓子をタイミングを見て出すようにしている。新人スタッフにはお客の顔色を見て美味しいお茶等を出せるよう鍛えさせている。お客がお茶を楽しんでくれることでコミュニケーションがはかどり、良い仕事につながる。
などです(いずれも本文を私なりに要約しています。)。
どれもこれも弁護士の仕事に通じる部分があり、非常に驚いています。そして、水戸岡さんはこれらをデザイナーとして実践し、人々を魅了する素晴らしい列車をデザインすることに成功しているのです。
他にも、
・列車のデザインというのは列車の持つ価値の1%を占めるに過ぎず、そのほか99%は列車本体を作るあらゆる技術が占めている。しかし、1%を占めるデザインが失敗すれば列車の持つすべての価値が失われる。だから列車におけるデザインはとても重要な意味を持つ。
・列車のデザインは自分の個人的な希望でデザインをするのではなく、その列車に乗る人たちの便益や好み、価値観を自分というデザイナーを通じて車両に落とし込む仕事であるからあくまで列車と言う公益を実現するものでなくてはならない。
など。
やはり、一流の人というのは物事の考え方がしっかりしていて、洗練されており、視野も広く、なおかつ謙虚なため、他の分野にも応用が効くのだと感じました。
この本を読んでいると何か私の仕事のことについて水戸岡さんが相談に乗ってくれているかのような錯覚すら覚えます。
おそらく私以外でもいわゆる専門職の人などであれば私と同じような感想を持つのではないでしょうか。専門職以外でも、あらゆる職業の人にとって、「プロの意識」を学ぶことの価値は大きいと思いました。
今年最後の読書であろうこの本がなんだか私の一年を締めくくってくれているような気がし、来年に向けての抱負を考えさせてくれています。