このコラムでは、アダルトビデオ(AV)など他人の著作物を、ビットトレント(BitTorrent)を通じてアップロードしてしまったことにまつわる諸々の疑問にまとめて整理をし、回答しています。最近増えている著作権侵害についての対応でお悩みの方は一読下さい。
Q1 そもそもビットトレント(BitTorrent)とは何か?
A1 ビットトレント(BitTorrent)とは、P2P通信方式によるファイル共有システムのひとつです。P2Pというのは、特定のサーバーを介することなくデータを端末ごとでやりとりするシステムのことです。
Q2 ビットトレントビットトレント(BitTorrent)は違法なのか?
A2 ビットトレント(BitTorrent)自体は違法ではありません。ビットトレント(BitTorrent)を通じて著作権侵害行為が行われていることが問題です。なので、ビットトレント(BitTorrent)の使い方に注意さえすれば何ら問題はありません。
Q3 ビットトレント(BitTorrent)を利用したことに伴いプロバイダーから発信者情報開示請求に関する意見照会書が届いたが、どうしてか?
A3 ご自身もしくはご家族、場合によっては会社で契約をしているプロバイダーから発信者情報開示請求に関する意見照会書が届くケースが増えています。
それは、ビットトレント(BitTorrent)を利用して映画、漫画、音楽、アダルトビデオ(AV)などのデータファイルをダウンロードしたり、アップロードしたりする行為が蔓延しているところ、これら問題に対処するため著作権者である製作会社などが次々と発信者情報開示請求の手続をとっているためです。
Q4 どうして自分のアップロードが発覚するのか?
A4 著作権を有する製作会社などは、P2Pファインダーなどの著作権侵害検出システムを用いて日々、ビットトレント(BitTorrent)を通じた著作権侵害行為の有無をリサーチしています。
そして、これらシステムを用いると、当該著作物であるファイル(ハッシュ値により特定)について、どのIPアドレス、どのポート番号、どのタイムスタンプにてアップロード行為がなされているかをリサーチができるとのことです。
製作会社などはシステムを通じて知り得たこれら情報から、当該IPアドレスを割り当てられているプロバイダーを特定し、そのプロバイダーに対して発信者情報開示請求を行うのです。これを受けたプロバイダーは、プロバイダー責任制限法4条2項に基づき、意見照会を行うのです。
Q5 届いた意見照会に対して同意で回答をしたらどうなるのか?
A5 意見照会に同意にて回答をすれば基本的にはプロバイダーから開示請求者に対して契約者情報等が伝えられることとなります。
Q6 届いた意見照会に対して不同意で回答をしたらどうなるのか?
A6 不同意で回答をすれば、プロバイダーは、開示をするか否かの法的要件である権利侵害の明白性の有無を判断することとなります。そして、これが認められるとプロバイダーにて判断すれば、契約者情報等を開示することとなり、他方でこれがないと判断すれば開示をしないこととなります。
Q7 意見照会に対して何も回答をしなければどうなるか?
A7 プロバイダーからの意見照会の回答期限である2週間以内に何も回答をしない場合には、開示請求に対して発信者からは特段の主張は行わないものとして扱われます。したがって、何らかの主張がある場合には2週間以内に回答をしておくべきといえます。
なお、届いた意見照会書には、回答期限が2週間と指定されていることから、この期限を厳守しないとならないのではないかと強く不安を覚える方が相当多数いらっしゃいます。
この点、回答期限は確かに2週間と指定されていますが、これを過ぎた場合には一切、回答を受け付けないということは実際上にはほぼありません。プロバイダーとしても回答期限を過ぎた後でも届いた回答を踏まえて開示をするかどうかの判断材料にしているといえます。
さらには、回答期限までに仮に回答が間に合いそうにない場合には、プロバイダー宛てにその旨を伝えることで期限を伸長してもらえることが通常です。
弁護士への相談の際にも、回答期限を踏まえた相談スケジュールを調整しているのでその点も心配する必要はありません。
Q8 意見照会に不同意で回答をした場合に、開示になる確率はどうか?
A8 ビットトレント(BitTorrent)の利用により他人の著作物であるファイルをアップロードしていたということであれば、著作権侵害は否定しきれない場合がほとんどであり、そうすると権利侵害の明白性が肯定されて開示になることが通常だと思います。とはいえ、本当にビットトレント(BitTorrent)を利用していなかったとか、当該ファイルをそもそもダウンロードしていなかったとかという事実の立証が可能であれば開示にならずに済むこともあると言えます。
Q9 著作権侵害が認定された場合の責任はどうなるか?
A9 当該動画などをアップロードしたことについて、故意が認められれば刑事責任を負うことがあります。具体的には十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科することがあり得ます(著作権法119条1項)。
ただし、著作権侵害による刑事責任は、故意責任であり、過失による著作権侵害に対する処罰はありません。
他方で、民事上は過失によっても不法行為責任が認められることから(民法709条)、故意がなかったとの理由で責任を逃れることはできません。
Q10 民事上の責任について、具体的にどのように損害賠償額が算定されるか?
A10 ファイルの違法なアップロード行為に対しては、当該ファイルが他者に何回ダウンロードされたか、そして当該ファイルにより著作権者が得られたはずの利益額はいくらかによって損害額算定がなされます。具体的には、(1)ビットトレント(BitTorrent)の使用開示時期、(2)ビットトレント(BitTorrent)の使用終了時期、(3)当該ファイルの利益額を踏まえ、(2)の時点のダウンロード回数から(1)の時点のダウンロード回数を引き、その回数に(3)の金額を掛け算して算出されます。
結果、1,000回のダウンロードであり、利益額が350円であれば350,000円となります。
なお、実際に当該ファイルが何回くらいダウンロードされたかは、当該ファイルの人気具合やパソコンにビットトレントシステムを入れていた期間によって変わります。
Q11 無料でダウンロードできるからダウンロード回数が多いだけではないかとの言い分は通るのか?
A11 ビットトレント(BitTorrent)のユーザーは、無料でダウンロードできるから多数のユーザーによりダウンロードがなされ、結果、多数回のダウンロードに繋がっているだけではないか、言い換えると有料だったらここまでダウンロード回数が増えないのではないかとの言い分があり得ます。
感覚的にはもっともな言い分ではありますが、残念ながら裁判でかかる主張が認められてはいません。不法行為に基づく損害賠償額の算定に際しては、「損害の公平な分担」という観点に照らし、判断がされるところ、上記のような主張を認めることはかかる観点に反するからです。
Q12 自分がアップロードしたのは当該ファイルのひとつのピースに過ぎないのにファイル全部の損害を負担するのか?
A12 ビットトレント(BitTorrent)の仕組みに照らすと、特定のファイルを特定の一人のユーザーがアップロードする訳ではなく、多数のユーザーが多数のピースをアップロードすることで他のユーザーが完全なファイルをダウンロードすることになりますが、一部実行全部責任の観点からすると、当該一部の行為に関与した以上は全部の責任を負うこととなります。
Q13 著作権会社の弁護士から通知が届いたが、すぐに示談にした方が良いのか?
A13 いいえ、慌てて示談をすることはお勧めしません。なぜなら、ビットトレント(BitTorrent)を利用している間には多数のファイルをアップロードしていることが通常であるところ、特定のファイルについてだけ示談をしてしまうと、示談後に別のファイルについての開示請求が追加で届くことがあります。そうすると、再度示談をしないとならず、その場合には当然、追加で費用がかかります。
また、当該ファイルの製作会社との包括示談をした場合であっても、当該示談の後に他の製作会社からの開示請求が届くこともあります。そのため、意見照会が届いた後、きちんとその後にビットトレント(BitTorrent)をアンインストールし、さらにプロバイダーに残されているログが完全に削除されてからもう追加で開示請求があり得ないという段階になって初めてその間に届いた開示請求分の示談をどうするかを決めることをお勧めしています。
なお、中には、すぐに示談をしないと大変なことになるかのように謡っている弁護士事務所のウェブサイトがありますが、そのようなことはないので慌てず対処をすることをお勧めします。とりわけ急いで示談をするとQ15のような問題も生じかねないので注意が必要です。
Q14 複数の製作会社から開示請求が届いたので示談金額が高額になりかねないがどうしたらよいか?
A14 非常に悩ましい問題です。たとえばアダルトビデオ(AV)の関係で示談交渉を持ち掛けられるケースであれば、ひとつの製作会社の作品についての包括的示談は77万円で提示されますが、複数の製作会社となると数百万円に及びます。そうすると、支払いの能力の問題も生じ、反面、民事訴訟を起こされると包括示談ではなく、実際のダウンロード回数に基づく損害額(Q10参照)が算定されかねません。
したがって、このような場合には非常にリスキーですが、示談を拒否して訴訟になるかどうかを見極めて対処を決めることをお勧めします。
Q15 アダルトビデオ(AV)の製作会社側弁護士との示談交渉をしたいが自分でも可能か?
A15 可能です。プロバイダーからの意見照会の後、製作会社側弁護士から通知書(内容証明郵便)が届くのでその内容を踏まえて、
(1)自分がアップロードした動画ファイルの内容や数
(2)自分がアップロードした動画の製作会社の数
(3)ビットトレントシステムの利用の期間
(4)プロバイダーのログ保存期間
(5)ビットトレントシステムのアンインストール状況
(6)自分の支払い可能な金額
などを踏まえ、相手方弁護士の提示内容に応諾できるかどうかを見極めてください。
当然のことですが、開示請求は一件で終わると限らないので、その後にも開示請求があり得る前提での示談をご検討ください。
これらをご自身で冷静に検討し、分析し、対処できるのであればご自身での示談もまったく問題はありません。
とはいえ、実際には、開示請求を踏まえた現状の把握や示談の見通し、減額交渉の可否、いつまでに追加で開示請求があるのか、相手方による訴訟提起の有無があり得るのかどうかなどを判断する必要があるため、専門的な知識や経験がある方が望ましいことも事実です。
Q16 ビットトレントシステムを利用してダウンロードした動画は、自分で一回閲覧したらすぐに削除していたが、ビットトレントシステムをアンインストールするまでの間の責任を負うしかないのか?
A16 ファイルをダウンロードした後、今度は自分が当該ファイルをアップロードする側に立つことがありますが、その間のアップロード回数に応じた損害賠償を求められます。
この点、自分がすぐにファイルを削除していたとの弁解があり得ますが、確かに自分がファイルをアンインストールしていればそれ以上、アップロード行為に関与することはあり得ません。
しかし、その立証ができるかどうかが問題であり、実際にファイルを削除したことの証明が可能であればアップロード行為に対する責任はその時点までに限られるものの、立証が難しいようだとビットトレントシステムをアンインストールするまでの間の責任となり得るものと考えます。
Q17 複数の製作会社から開示請求が届いた場合には弁護士費用は倍になるのか?
A17 当事務所では、製作会社ごとに着手金、報酬を頂くこととなっております。その金額ですが、着手金は165,000円(税込)、報酬は示談で解決したら110,000円(税込)です。
そして、最初の製作会社の案件処理の継続中に他の製作会社からの開示請求が届いた際には、追加着手金は55,000円を頂戴しております(ただし、報酬は別途)。そのため、製作会社の数だけ着手金の額が掛け算になることはございませんのでご安心ください。
Q18 ビットトレントシステム利用の開示請求や損害賠償の問題に関し、弁護士に依頼することのメリットは何か?
A18 ビットトレントシステム利用に伴う開示請求、意見照会、示談交渉に関し、弁護士に依頼をすることのメリットは、ビットトレントシステム利用に伴う損害賠償請求問題全般について、単なる法律の知識に留まらず、製作会社側のスタンスや実情、裁判例の動向などを踏まえた確実かつ安心の対応が可能という点にあります。
Q16でも記載したとおり、この問題は、弁護士を介入せずとも示談解決自体は可能です。
しかし、多数回に渡り開示請求がなされる可能性があること、示談後にもそのような状況が続く余地があること、そうすると示談金額が雪だるま式に膨れ上がってしまうこと、結果、当所の示談が無意味になることという問題があります。
かつ、製作会社側のスタンスも日に日に変化しており、そのような変化にきちんと対応するためには日ごろからこの分野についての経験や知識のある弁護士へ依頼をすることが確実なのは間違いありません。
したがって、このような観点から弁護士依頼のメリットをご理解いただけますと幸いです。
Q19 ビットトレントの問題を解決するために、弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所では何をしてくれるのか?
A19 ビットトレント利用による著作権侵害について、弁護士への相談や依頼をご検討の際には、この間、当事務所にて培ってきた多数の案件処理状況を前提に、最新の情報に基づき、相談者の方の個別事情に照らした助言が可能です。
ご依頼を頂いた場合には、受任からプロバイダーに対する回答、相手方弁護士への受任通知の発送と以後の交渉のやりとり、相手方弁護士からの主張内容(具体的な損害額計算に基づく損害賠償請求)の当否の検討やご説明を前提に、プロバイダーに残されたログ保存期間を経過するまでの示談猶予の申し入れ、当該期間を経過した後の具体的な示談の当否の検討や提案をいたします。
また、追加での開示請求及び意見照会書の送付がプロバイダーからあり得ることから、プロバイダーに対しては、当事務所受任後の意見照会書の発送先を当事務所にするように求めることもしています(実際に意見照会書の送付先を当事務所とすることの当否は最終的にはプロバイダーの判断にはなりますが、代理人弁護士として窓口にしてもらうようにお願いをしています)。
したがって、当事務所では受任後すぐに示談をするべきとの提案はしていませんし、むしろ示談に至るまで諸々の状況を慎重かつ丁寧に検討した上で最終的な示談の当否を決めています。
とにかく、この問題については、置かれた状況に照らし、本当に妥当な解決を慎重に見極めることが大切です。慌てて示談をして得をすることはありません。追加の開示請求があり得ること、そうなると損害賠償額が高額になり得ることなどを踏まえ、常に最新の情報に基づく対応が重要です。
一部の法律事務所では、受任後すぐに示談を勧め、これに応じて示談をしたところ、追加で開示請求が届いて再度慌てるという問題が生じているように聞いています。このような対応には問題があると考えています。
Q20 トレント問題解決のために、どのような弁護士に依頼をすべきか?
A20 ご自身が抱えている悩み(民事上、どのような損害賠償責任になるのか、損害額としていくら負担することになるのか、支払えなかったらどうなるのか、減額は可能か、分割は可能か、追加で開示請求が届いたらどうしたらよいのか、弁護士費用はどのくらいかかるのか、刑事責任を負うことはあるのか、自宅に警察が来ることはあるのか、逮捕になるのか、会社に知られることはあるのかなど)について、ご自身が納得できる説明やアドバイスをしてくれる弁護士を選ぶのが得策です。
その際、遠方であっても電話だけ、メールだけでのご相談・ご依頼でもご自身として十分に納得できるか、理解できるかをよく考えてください。遠方の場合にはせめてオンラインでの面談が望ましいです。
そうした条件をクリアできる弁護士をしっかりと見つけ、ご依頼をなさってください。
【2023.7.7追記】
当事務所では、現在、岡山県内、香川県内に限らず、近隣他県や遠方他県からも相当多数のご相談、ご依頼を頂いている状況です。
ご相談やご依頼の際の面談にはオンライン(ZOOM利用)で実施し、個別のご連絡はLINEやメール、電話を中心にやりとりをさせて頂いております(費用はペイペイかお振込み)。
さらに、案件のご依頼を頂いた場合には、当事務所ではオンラインにて案件の進捗確認ができるシステム(「確認丸」)により、遠方であってもリアルタイムで状況の把握や確認が可能です。
そうした環境整備の結果、遠方の方からも安心してご相談、ご依頼ができたとのお声を多数頂戴しております。
トレントの問題で弁護士に相談したいが、不安な気持ちが伝わるか、汲んでくれるかご心配な方もこれらによる万全のフォロー体制を整えておりますのでご安心いただけます。
トレントによる意見照会が届いて強い不安をお抱えの方は、ぜひ専門の詳しい弁護士にご相談ください。
お問い合わせフォーム等は以下からご確認ください。
Q21 トレントを扱う弁護士費用の相場を教えてください。
Q21 トレントを扱う弁護士費用の相場を教えてください。
A21 当事務所を含めて、現在、トレント利用に伴う示談交渉等の対応をする法律事務所が複数見受けられます。
届いた意見照会を見て慌てて弁護士への相談や依頼を検討するケースがとても多いところ、実際に依頼をするとなった際には必要になる弁護士費用をしっかりとご確認頂くことも大切です。
弁護士費用については着手金(受任時の費用)、実費(郵送代など)、報酬(解決した際の費用)がありますが、トレントの関係では以下のような費用設定にしている事務所があるようです。すべての事務所の費用基準を確認した訳ではありませんが、概ね以下のような費用設定のようです。
・A事務所 : 着手金11万円、報酬11万円
・B事務所 : 着手金16.5万円、報酬22万円
・C事務所 : 着手金22万円、報酬22万円
・当事務所 : 着手金16.5万円、報酬11万円
これら費用を踏まえて、依頼する先を検討することが大切です。その際に特に注意して欲しいことは以下の点です。
①受任の範囲としてどこまでを対応してくれるのか(プロバイダーへの回答書の送付はしてくれるのか、追加の開示請求は最初の料金に含まれるのか、他社からの開示請求が届いた際の追加料金はどうなるのか)。
②受任後には方針決定やプロバイダー、相手方弁護士との交渉状況をどの程度、どのようにして報告、説明してくれるのか。
③そもそも当初の相談、受任の際にこの度の意見照会や開示請求についての見通しなどをどのような方法で(電話、メール、オンライン、面談)でどの程度説明してくれるのか。
以上を踏まえ、当事務所では、着手金165,000円、報酬110,000円にてトレントの対応をしております。
追加費用は、他社からの開示請求に関して1社あたり着手金55,000円、報酬110,000円です。
受任に際しては、必ずオンラインもしくは面談でのご相談を実施しており、依頼後の進捗管理はLINE・電話・オンラインでの連絡手段と、WEB上での進捗確認システム(確認まる)の併用により、送った文書、届いた文書を網羅的に閲覧できるようにしています。
htqtps://kakehashi-law.com/modules/inquiry/
Q22 実際に何社くらいから開示請求が来ることが多いのか?
A21 とても多い質問です。この点、当事務所では、ほとんどの方は1社からの開示請求に留まることが大半です。時折、2社目からの開示請求になる方もいらっしゃいますが、半数以下です。さらに、3社目となるケースは(今のところ)ほぼありません。
この間、相当多数のご相談、ご依頼を頂いている中での上記傾向です。示談の際の参考にしてもらったらと思いますが、あくまで当事務所のこれまでの傾向であること、今後も同様という確約までできるものでないことはご理解ください。
Q23 制作会社からの通知書が届いた後、示談までの期間はどの程度猶予してもらえるのか?
当事務所では、制作会社からの通知書、示談の申し入れがなされた後、すぐに示談をするのではなく、追加の開示請求の有無をしっかりと確認し、開示の対象となる内容をすべて把握してから示談の当否や内容を決めるようにお勧めしています。
それは、開示請求がなされてすぐに示談をしてしまうと、その後、引き続き開示請求が届いた際に追加で支払う示談金に苦労したり、そもそも当初の示談自体が妥当だったのかと後悔することになるためです。
たとえば、1社との示談をした直後に2社目の開示請求が届くことも少なくないのです。
当然、2社目の示談金もすぐに払えるようでしたら構いませんが、だとしても3社目の開示請求が来ることも加味して考えると、やはりたちまちの示談にメリットはあまりありません。
むしろ、自分がトレントの利用に伴い負担すべき賠償額の全体像も把握できないままに次々と示談金の負担に迫られ、不安は強くなるばかりだと思います。
そのため、当事務所では上記のとおり、全体像を把握してからの示談を強くお勧めしています。
では、その際にどの程度の期間を猶予してもらえるかですが、全体像の把握にはプロバイダーのログ保存期間の経過が必要ですので、その期間程度の猶予は当然にお願いをしていますし、実際にこれが可能です。
制作会社側としても、非常に多数の開示請求、示談交渉を抱えている現状では、半年程度、1年程度の猶予はやむを得ないし、仮に猶予はできないと返答してみたところで訴訟を起こすなど、次の手を打つ余裕もありません。
したがって、示談の猶予は半年から1年は可能と考えて頂き、その間に追加で開示が来ないかを見極めて示談を決めればよいと考えます。当然、ご依頼頂ければ当事務所にて示談の猶予やログ期間経過までのプロバイダーや相手方弁護士とのやりとりすべてを行うことが可能です。
Q24 制作会社との減額交渉は可能か?
開示請求の結果、アダルトビデオの制作会社とその賠償金に関し、示談交渉をすることとなりますが、その際に、「制作会社との減額交渉は可能か?」と聞かれることがあります。
この点、減額については諸般の理由(ビットトレントを常時接続していなかった、ダウンロードしたファイルは常にすぐに削除していた、支払い能力がないなど)がありますが、かといって示談交渉の際に相手方弁護士にてすぐに減額に応じることはありません。
これは、減額を求める事情の立証の可否という問題でもありますが、むしろ実質的には制作会社のスタンスの問題です。
すなわち、制作会社としては、日々、相当多数の開示請求を申し立てており、相当多数の開示結果を踏まえて、相当多数の利用者を相手に損害金の請求をしています。
そのような中で、個別に減額の交渉をすることは労力上の限界があることや、仮に減額に応じれば一律の基準がなし崩しになってしまうことから一切、減額には応じないのです。
したがって、減額交渉は実現しないため、当事務所においても「減額を求めるくらいであればそもそも支払い義務がない。」という交渉を持ち掛けることを提案しています。
Q25 制作会社との分割払いの交渉は可能か?
可能です。制作会社側としても、一円も支払いがないよりも、きちんとした合意に基づき分割払いにより支払いを受けることを可能と明言しています。
執筆者:弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)
1979年 東京都生まれ
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山県倉敷市に岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更
2022年 香川県高松市に香川オフィスを開所