京都で2014年度当時、小学5年生だった児童が同級生から日常的に叩かれるなどのいじめにあっていたことの責任を追及する訴訟がありました。
児童は、いじめの結果、学校を欠席がちになったとのことで、教育委員会が「いじめ重大事態」と判断の上、担任、学校の対応が不十分だったとの調査報告書をまとめたとのことです。
児童側は、2018年1月に京都市、加害者とその保護者に対して連帯責任を求めて提訴し、今年の1月に市が10万円、加害者とその保護者が200万円を支払う内容での和解案が裁判所から示され、三者ともに受け入れの予定となったとのことです。
(以上、京都新聞2020.5.15 13:21配信)
https://news.yahoo.co.jp/articles/c02bf1707a5c3100fe3846d503ff7d4579c7832d
日常的な暴力を伴ういじめなので、周りの生徒や担任、学校関係者がその状況や児童の様子に気が付く余地があったのであれば、担任や学校には十分な対応を求められます。
加害者の保護者も同様です。
特に、欠席がちになったということなので、その原因について十分に配慮、調査していれば被害をより少なくできたと思われます。
そのような意味で、調査報告書においては担任や学校の対応が不十分だったと認定したのでしょう。
被害者側が京都市をもまた被告としたのは学校の対応に不十分な点があると強く不満をもったためと思います。
そもそも、いじめの被害についてその第一義的責任は加害者本人(ないし保護者)にあります。学校や担任自体が責任を問われるとすれば、いじめの実態を承知しつつ加担したとか、黙認したと認められるような場合です。
今回の和解案では、京都市側が10万円との解決金なので、おそらく京都市自体の法的責任は肯定し難く、本来は市側に解決金の支払義務を肯定するのも難しいものの、事案の解決のために10万円という低額に限っての支払を裁判所は提案したのだと思います。
他方で、加害者側には200万円となっており、これはいじめの内容などにもよりますが、現在の日本の司法における慰謝料相場ないし解決金相場に照らすと「そこそこの金額」といえそうです。
当然、被害者自身が納得できる金額ではないと思いますが、裁判所の慰謝料に対する考え方(日本では慰謝料相場が低いと言われている)からすると、決して低すぎる金額とは言えないのです。
とはいえ、いじめ自体の最終的解決は、被害児童の心身の健康をいかに回復するか、いじめに遭っていた期間中の人生、青春をどう取り戻せるかにあります。今回の和解を踏まえて被害者やその保護者が前向きになれることが一番大切だと思います。