2021年8月26日に施行された改正ストーカー行為規制法(以下「ストーカー規制法」といいます)には、GPSの設置やこれによる位置情報の取得が規制対象になりました。
もともとストーカー規制法には、「住居等の付近における見張り」を規制対象としていましたが(ストーカー規制法2条1項1号)、この「見張り」には、GPSの設置とこれによる位置情報の取得が該当するのかが争われ、結果、最高裁は「該当しない」との判決を出しています(令和2年7月30日)。
↓最高裁の判決文です。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/611/089611_hanrei.pdf
かかる最高裁判決を受け、また昨今の情報端末の小型化、高性能化などを踏まえ、ストーカー規制法の改正に至ったのです。
改正の結果、恋愛感情等を充足する目的で、恋愛感情等を持った特定の人等に対して位置情報を取得するためのGPSの設置や位置情報の取得が規制対象となったのです(ストーカー規制法2条3項)。
この度はかかる改正法施行後、岡山県内で同規定に基づく初の逮捕事例がありました。
https://www.sanyonews.jp/article/1267690?rct=jiken_jiko
この度の報道の事件では、職場に押し掛けたことは認めているようで、これはこれでストーカー規制法の規制対象行為に該当します。
他方で、実際に住居などに押し掛けたことの証拠がないような場合でも、GPSの設置が見つかればストーカー規制法による規制をし易くなった点に本改正のメリットがあると言えます。
なお、ストーカー規制法は「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」が犯罪成立のための一要素です。
なので、GPSの設置の際にこのような目的を伴わない場合(単に夫の不倫調査のために設置した場合など)にはストーカー規制法の対象とはなりません。