インターネットに書き込みをされた際の開示費用は加害者に請求できるでしょうか。
被害者としては書き込みされた被害を追うだけでなく、開示のための費用まで自己負担となるのではたまったものではありません。当然、加害者に負担を求めたいところです。
この点、現在の裁判例では、要した開示費用について加害者にその支払いを命じるのが通例です。やはり発信者情報開示請求という専門的かつ迅速性を要する手続きには弁護士への依頼が必須なので加害者にこれを認めないことはあまりに不公平だからです。
とはいえ、要した費用のうち「いくら」を認めるかはまた別問題です。
そして、認められる金額についてはこれまで多くの裁判例では「一部」に留まっていました。たとえば開示のための費用が70万円だったとしてもそのうちの半分とか2割とかに留まることが多いようです。
しかし、昨今のインターネット誹謗中傷被害の甚大さと開示のための手続きの難しさに照らし、徐々にではありますが、調査費用に対する認容額が高額化しつつあるように思われます。
つい先日も要した費用の全額を認める高裁判決が言い渡され、今後は(誹謗中傷の内容や程度にもよるとは思いますが)、調査費用の相当額を認める事例が増えていくものと思われます。
ちなみに、木村花さんに対する誹謗中傷に対する損害賠償を求める訴訟では、被告が欠席しての判決の結果、調査費用の全額が認容されています。これは被告が欠席したがために、調査費用の全額を被告が認めたものと法的に擬制された結果ですので、ある意味では当然の結論でした。
なので、上記の高裁判決は実務的に非常に重要な意味を持つと言えます。