
この記事を書いた弁護士
代表弁護士 呉 裕麻(おー ゆうま)
出身:東京 出身大学:早稲田大学
2008年に弁護士登録後、消費者案件(出会い系サイト、占いサイト、ロマンス詐欺その他)、負債処理(過払い、債務整理、破産、民事再生)、男女問題(離婚、不倫その他)、遺言・遺産争い、交通事故(被害者、加害者)、刑事事件、インターネットトラブル(誹謗中傷、トレント、その他)、子どもの権利(いじめ問題、学校トラブル)、企業案件(顧問契約など)に注力してきた。
他にも、障害者の権利を巡る弁護団事件、住民訴訟など弁護団事件も多数担当している。
このコラムについて
このコラムでは、最近急増しているアダルト動画のトレントを通じたダウンロード、アップロード行為に関し、突然、意見照会書を受け取り、ご不安を強めている方が、どのようにして弁護士を選ぶべきかなどを解説しています。
弁護士の中には
「即示談しないと刑事事件に発展して大変なことになる」
などと言ってさらに不安感を煽り、示談させようとする弁護士も一定数いると伺っています。
そこで今回は、このビットトレントの件で実際にどのような弁護士を選ぶべきなのかを詳しく解説したいと思います。
1 ビットトレント開示請求の基本知識について
弁護士選びを検討する前に、まずは突然届いた意見照会書(『発信者情報開示に係る意見照会書』)がどういう意味を持つのかなど、ビットトレントの仕組みなどにも基づきながら解説をしたいと思います。
⑴ ビットトレントとは?
まず前提として、ビットトレント(BitTorrent)とは、
P2P(Peer to Peer)通信方式を用いたファイル共有システムの一種
です。
これは、特定のサーバーを介することなく、ユーザーの端末間で直接データをやり取りする仕組みです。
ビットトレントを利用するためのアプリには、デスクトップ版(例:qBittorrent、BitTorrent、uTorrent)やモバイル版(例:BitTorrent、uTorrent、Flud)などがあります。
これらのアプリはパソコンにもともと入っていたりすることもあるなど、非常に身近なものともなっています。
そして、そもそもこのトレントシステム自体が直ちに違法ということではありません。
しかし、このシステムを使用してアダルトビデオや漫画など、他人の著作物データを著作権者の了解なくダウンロードすると、トレントの仕組み上、自動的にアップロード(送信)も行われることになります。
そして、最近問題となっているアダルトビデオのトレントの案件では、このインターネット上の違法アップロード行為を著作権上の侵害行為と構成し、開示請求がなされているのです。
すなわち、トレントを通じた違法な著作権侵害行為が法的には問題となるのです(最近とても多いのがアダルトのケースですが、他にも映画や漫画、アニメ、音楽などもあります)。
⑵ トレントにおける開示請求の仕組みについて
著作権者(制作会社など)は、著作権侵害行為の検出システムを用いて、違法なアップロードが行われた際の
①IPアドレス
②ポート番号
③タイムスタンプ
などの情報をリサーチします。
すなわち、トレントの検出システムは、ビットトレントのネットワーク上で、特定の著作物に関し、いつ、どこでアップロードがされているのかを監視し、検出するのです。
そして、そのアップロードが検出された際に、上記のような①~③の情報を記録します。
制作会社はこれらの情報に基づき、プロバイダーを特定し、代理人弁護士を通じて契約名義人の氏名や住所の開示を求める手続き(発信者情報開示請求)を行うのです。
すなわち、制作会社は、検出されたIPアドレス等を、Whois検索を通じて、当該IPアドレスがどのプロバイダーに割り当てられたものかを特定します。
そして、当該プロバイダーに対して発信者情報開示請求を行うのです。
続いてプロバイダーは、この開示請求を受け取ると契約者に対して「意見照会書」を発送します。
これは情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)に基づく措置であり、法的な義務とされています。
そして、ここ数年、アダルト関連の制作会社が無数の開示請求をしているため、この意見照会書の発送が激増しているのです。
契約者はこのプロバイダからの意見照会書に対し、情報開示に
「同意」
「不同意」
のどちらかを回答することになります。
人によっては回答書を出さずに無視をする方もいるようですが、その後の結論にも影響するのでお勧めはしません。
また、回答書を提出する際には、理由を付することが可能となっています。
2 意見照会書を受領した際の初期対応
意見照会書を受領した際には、やはり
とにかく落ち着いて、その後の対処を進める
必要があります。
具体的には、意見照会書の内容をよく確認すること、弁護士への相談や依頼を検討することです。
以下、解説します。
⑴ 意見照会書の内容確認
上記のような意見照会書は、ある日突然、プロバイダーから届き、その内容に非常に驚き愕然とされることと思います。
特に、トレントの利用が事実であるような場合には、
家族にばれると大変なことになる
会社に知られると解雇になる
などと不安を強める方がとても多いです。
この点、当事務所に寄せられた「ご相談者様のご不安の声」をまとめましたのでご参照ください。
これを読むことで、「自分一人ではない」と思い、少しでも気を楽にしてもらえたらと思います。
そして、上記のご不安に関し、まず、ご家族には封書の中身を知られない限りは当然にはこのことが伝わることはありません。
とはいえ、家族である以上は届いた封書をいつ見られてもおかしくないとか、追加の意見照会が届いた場合には避けようがないなどとして、最初の意見照会が届いた以降、ずっと不安を持ち続ける方が少なくありません。
他方で、会社には利用者のトレント利用が当然に知られる訳ではありません。
個人でのネット利用と会社への通知はまったく関係がなく、過度に個人情報を懸念する必要はありません。
したがって、自宅に届いた意見照会が会社に知られることを心配する必要はありません。
また、自分がしたトレント利用が刑事罰の対象と知り、刑事事件になり、逮捕や捜索があるかもしれないとか、民事上、多額の賠償をしなければならない、と感じるかもしれません。
しかし、
①刑事事件になるケースはごく稀であること(当事務所ではこの間、1000件を超えるトレント利用者からの相談を受けていますが、刑事事件になったケースはまだ聞いていません。)
②民事訴訟になるケースも1%を遥かに下回る確率でしか起こされていないこと
③仮に民事訴訟になっても、その賠償額も裁判例ではごく低額になっていること
から、決して慌てないようにしてください。
とにかく、まずは一度冷静になることが非常に重要です。
当事務所だけでもトレント案件の相談はここ数年で1000件を超えており、全国では無数の開示請求が行われているのが実情です。
慌ててインターネット上の情報に惑わされず、まずは届いた書類をじっくりと読み、内容を落ち着いて確認してください。
なお、届いた意見照会にそもそもまったく覚えがない場合には、それこそいよいよ慌てることなく冷静に対処をしてください。
具体的には不同意での回答をする必要があるのでその理由をしっかりと書いて回答書を提出する必要があります。
その方法など詳しい内容は別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
⑵ 弁護士への相談の重要性
トレントに関する情報はネット上に溢れていますが、その情報だけで不安が払拭できない場合や、その後の対応に自信がない場合は、ぜひ専門の弁護士にご相談ください。
特にこのトレントの問題で対応をしている弁護士としては、ネット上に「御三家」と呼ばれる法律事務所も存在し、光栄にも当事務所もその一つに挙げられています。
この「御三家」の呼ばれ方が始まったのは、おそらく掲示板の5ちゃんねるにおいてかと思われます。
そのように呼ばれるようになったきっかけは、トレント案件について利用者側の立場、スタンスに立って早期示談の危険性を訴え、親身な対応をとり、かつ全国的にも積極手に情報発信等をしている法律事務所が当事務所を含めた3事務所だったためだと考えられます。
当事務所としても、ネット上で「御三家」との呼ばれ方をすること自体は、当事務所のトレント案件への向き合い方を評価してもらったものとしてとても光栄に思っています。
特に、当事務所はネット上に詳しい情報を発信し続け、YouTube動画も複数投稿し、分かりやすい解説を目指しています。
また、トレント案件の取り組み当初から「早期示談」の危険性を繰り返し訴えてきました。具体的には、ログ保存期間の経過を踏まえた対応を進めてきています。
ほかにも、
示談自体を拒否する
ことでの解決も提唱してきました。
その根拠ないし理由としては、利用者のトレントファイル利用時間の短さなどを挙げています。
開示請求者は、利用者のトレントファイル利用実態、保有実態を問わずに一律の請求をしてくることへの問題性を指摘してきたのです。
反面、「御三家」と呼ばれるきっかけの背後には、「利用者側の立場、スタンスに立たない法律事務所」が多数存在したためでもあります。
実際、そのような悪質な法律事務所に依頼し、料金や対応を巡りトラブルになった方からセカンドオピニオンを求められるケースが続いています。
具体的には、
即示談するしかない
ほかに開示が来る可能性は低い
と言われ信じて示談したが、その後も追加の開示請求が続き
その都度追加の料金をとられた
とか
進め方の詳しい説明や報告もないまま案件を進められ気が付いたら示談の話になっていた
とか
弁護士に連絡が付かず職員とのやりとりしかなかった
などというものです。
当事務所としても、2022年ころからトレント案件を受けるようになり、このような悪質な法律事務所の対応を知り、以後、啓蒙をし続けています。
また、複数開示に備えた料金プラン(おまとめプラン)を設定したり、ログ期間の経過を見据えた弁護活動を取り入れたりすることでトレント利用者の方の不安や負担を最大限に軽減するよう取り組んできました。
【呉弁護士の一言コメント】
おまとめプランの選択により、ログ期間経過まで弁護士費用の追加なく依頼が可能です。
費用が高額になりすぎるのを心配される方にはお勧めです。
お陰様で現在は少しずつこのような悪質な法律事務所の存在が知られ、また当事務所を含めた御三家のネット上での情報発信が功を奏し、
「トレント案件についての正しい法律事務所選び、弁護士選び」
が広がっているように思います。
いずれにしても、当事務所を含めたトレント案件に詳しい弁護士への相談が非常に有効であることは他の分野にも増して意識をしていただけたらと思います。
また、弁護士へのご相談の際に、遠方であるがために来所できないことを気にされる方がおられます。
しかし、最近ではスマホでもオンラインビデオシステムでの面談が容易となっています。
そのため、ご相談時のご来所は必ずしも重要ではないと考えられます。
むしろ、遠方であってもトレント問題にしっかり精通して取り組んでいる弁護士に相談できることのメリットを活かしてもらえたらと思います。
なお、当事務所におけるオンライン相談のご案内は以下のとおりです。
【呉弁護士の一言コメント】
当事務所ではすでに日本国内全都道府県にお住まいの方から案件のご依頼を頂戴しており、これは遠方からのご依頼に何も支障がないことの根拠と言えるかと思います。
⑶弁護士に依頼する目的の明確化の重要性
弁護士への相談の後、弁護士への依頼を検討することがあるかと思います。
その際には
なぜ弁護士に依頼をするのか?
を明確にしておくことが大切です。
もしくは、「弁護士依頼のメリット」を明確に説明してくれる弁護士に依頼をするべきです。
すなわち、仮に制作会社から提示された内容でただ示談をするだけであれば、ご自身で簡単に手続きができるため、弁護士に依頼する必要はありません。
弁護士に依頼する際は
回答書に不同意で回答をするのか
提示示談金額を払わない、または減額する弁護活動を望むのか
家族に知られずに解決したいのか
ログ期間を経ての解決を希望するのか
訴訟や刑事告訴を避けたいのか
など、ご自身の希望するサポートを明確にし、提供してくれる弁護士を選びましょう。
当然、当事務所でも「単に即示談するだけ」であれば弁護士依頼は不要ですとご案内をし、ご依頼をお断りすることもあります。
他にも、ご本人からの不同意での回答により案件を処理できるケースと当事務所が判断した場合にも、ご依頼をお断りすることがあります。
なお、当事務所においては、
①ご相談ご依頼の際にどんなに遠方であってもオンライン相談や打ち合わせが可能であること
②LINEでの弁護士との直通でのやりとりが可能であること(LINEを使わない方はメールで可)
③案件の進捗はオンライン上の「確認丸」にて随時ご報告し、共有していること
④これまでの経験と知識を踏まえた柔軟で多様な解決をご提案できること
などご依頼後の依頼者様の便利や安心に尽くし、依頼者様の権利を守るための弁護活動を目指しています。
【呉弁護士の一言コメント】
当事務所では、ログ期間経過までしっかりと追加の開示請求の有無を見極めての対応を推奨し、実践しています。
プロバイダーによりログ期間も異なることから依頼者様の利用プロバイダーに応じた対応を進めています。
3 身に覚えのない開示請求への対処法
意見照会書の内容を確認し、自分のパソコン利用状況等も確認したが、内容に覚えがない場合には以下の内容を踏まえた回答書の提出をご検討ください。
⑴ プロバイダーへの回答とプロバイダーの対応について
まず、プロバイダーからの意見照会書に対しては、回答期限(書類到着から2週間程度が目安。ただし、1週間のプロバイダーもあります。)が設定されています。
契約者はこのプロバイダからの意見照会書に対し、情報開示に「同意」するか「不同意」とするかを回答することになります。
人によっては回答書を出さずに無視をする方もいるようですが、その後の結論にも影響するのでお勧めはしません。
【呉弁護士の一言コメント】
回答書を出さずにいた結果、後になっていきなり開示請求者代理人弁護士から届いた通知に驚かれるケースが散見されます。
回答書を提出する際には、理由を付することが可能となっています。
そして、この期限内に何も回答しなかった場合、開示請求者の主張に対しては、特段の主張を行わないものとして扱われます。
また、回答しなかった場合や不同意で回答した場合であっても、プロバイダーは権利侵害の明白性を検討し、侵害が明らかであると判断すれば、情報開示を行うことがあります。
とはいえ、プロバイダーは、契約者からの回答が不同意の場合には開示をしないとの対応をとるところが大半かと思います。
これは特に開示請求が裁判所の開示命令申立てを経ていない任意での開示請求(いわゆるテレサ式)の場合に顕著です。
任意開示請求の場合には、発信者情報開示命令の申立書の写しや書証の写しが同封されていないことや、開示命令申立ての書式自体が定型的なものとなっているのでそのことで判断ができます。
以上と異なり、ごく稀ですが、そもそもプロバイダーが契約者に意見照会をしないで開示をするケースがあるのでそのようなプロバイダーに対しては厳重な対応が必要です。
【呉弁護士の一言コメント】
任意開示請求(テレサ書式)か否かの判断が難しい場合にはご遠慮なく弁護士にご相談ください。もしくはプロバイダーに直接お尋ねいただくことでも構いません。
⑵ 利用の覚えがない場合の対応について
そして、トレントの利用に全く身に覚えがない場合や、利用はしたものの開示請求の対象ファイルに見覚えがない場合は、プロバイダーに対し「不同意」で回答書を作成・提出します(身に覚えがないとしても無視したり放置したりはせず、回答書を出すようにしてください)。
不同意の回答書には、利用していない理由などを明記する必要があります。
例えば、
契約者以外の同居家族、友人、知人によるWi-Fi利用
場合によっては階下の住人によるWi-Fi利用、または対象となる動画を閲覧した記憶がない
そもそもトレントアプリケーションを保有していない
などの記載をすることになります。
【呉弁護士の一言コメント】
不同意の理由の書き方が分からない場合にも弁護士にお気軽にご相談ください。
不同意で回答することで、ほとんどのプロバイダーは不開示としますが、上記での述べたとおり、一部のプロバイダーでは不同意でも開示するところがあるため注意が必要です。
そのため、プロバイダーに対して回答書の提出前に不同意で回答をした場合の扱いを確認することも重要です。
4 身に覚えのある場合の具体的な対応
以上と異なり、トレント利用自体に身の覚えがある場合には、状況等に応じ、以下のような対応が考えられます。
⑴回答の方針について
BitTorrentを利用してアダルトビデオなどをダウンロードし保有していた場合、ファイルが自動的にアップロードされているため、客観的には著作権侵害(不法行為)の責任があること自体(金額がいくらかは別として)を否定することは極めて難しくなります。
【呉弁護士の一言コメント】
損害賠償責任があることと、賠償義務としていくらを負担するべきかどうかは別問題なので、責任があるからといって常に高額の賠償が必要とは限りません。ご安心ください。
とはいえ、そもそも意見照会の時点で、その開示請求がテレサ式の場合には不同意で回答をすることで開示結果を防ぐことも可能です。
すなわち、
発信者情報開示請求の手続きは、法律に基づく裁判所の手続きを通じた発信者情報開示命令申立て手続きによる場合
と
任意開示の方法であるテレサ書式による場合
とがあります。
そして、前者の場合には、利用自体が確実であれば後に裁判所の決定を通じて開示結果に繋がります。
他方で後者の場合には、契約者が不同意とし、プロバイダーもこれに応じて開示をしなければ開示結果にならずに終わることが通常なのです。
以上を前提としつつも、トレントを利用したことは事実なので同意をした上で妥当な金額での示談に進める方針をとることも可能です。
この点はいずれがご自身の意向に沿うかを弁護士に相談の上でご判断いただくこととなります。
その際、早期に同意をしておくと、消滅時効の起算点が早まることから、示談交渉をしつつ消滅時効期間(開示されてから3年)の経過を待つような方針をとる場合にはあり得る選択肢ともいえます。
【呉弁護士の一言コメント】
利用を前提としつつも開示に同意で進めるのか、不同意で進めるのかの判断には悩まれると思いますので弁護士へのご相談をお勧めします。ご意向に合わせた助言が可能です。
⑵民事上の責任について
いずれにしても利用していたことが事実の場合、著作権者に対して民事上の損害賠償責任を負うことになります。
賠償額は、ダウンロード回数(アップロードしたファイルを他人がダウンロードした回数)に、1回あたりの利益率を掛けて算定されます。
ダウンロード回数が増えるほど、賠償額は高額になります。
⑶刑事上の責任について
また、故意に著作権侵害行為を行った場合は、刑事責任(10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方)を負う可能性もありますが、全国無数の開示請求の全てが刑事事件になることはまずありえません。
そもそも、刑事責任におけるところの故意責任はその立証が非常に困難ですし、トレント利用者において刑事上の故意の認定が可能な利用状況のケースはそうそういないものと思われます。
そのためか、当事務所でも2022年から1000件を超えるトレント利用者のご相談をお受けしていますが、実際に刑事事件になったケースはまだありません。
⑷民事上の示談交渉の進め方
開示が行われるか、または開示の決定がされた後、制作会社の代理人弁護士から通知書が届き、示談の申し入れとして一定額の示談金が提示されます。
この示談金には、知的財産高等裁判所の判断を念頭に置いた実損害の計算が明記されていることがあります。
また、ITJ法律事務所などは、合意の方法として以下の二つの条件を提示してきます。
合意の種類
個別合意
当該ファイルに限定された示談です。ただし、他のファイル利用が発見された場合、違約金請求の可能性があります。
包括合意
その制作会社の他のファイル利用も含め全て完了し、以降の責任追求はされません。
以上を踏まえた当事務所の案件対応方針ですが、当事務所では、開示請求直後にすぐに示談することは推奨していません。
慌てて示談してしまうと、後日また追加で新たな意見照会書が届き、さらなる不安を抱えるケースが後を絶ちません。
また、そもそも制作会社からの損害賠償の請求額は一般的な相場を大きく離れたものであり、妥当でないと考えています。
我々は、プロバイダーのログ保存期間の経過を待ち、追加の開示請求が来ないかを見極めた上で、ご依頼者様が負担すべき賠償金の総額を確定させてから、最終的な示談の当否(和解するか、拒否するか)を判断することを基本方針としています。
【呉弁護士の一言コメント】
当事務所が受任をすると、制作会社側の弁護士との交渉の窓口となり、かつ相手方弁護士からは以後の請求や督促がピタッと止まることが大半です。
その意味でも弁護士に依頼することのメリットは大きいかと思います。
なお、制作会社側は原則として一律に減額交渉には応じないスタンスを取っています(赤れんが法律事務所を除く。ただし、大幅な減額に応じるということはない。)。
そのため、当事務所では、支払い拒否(ゼロでの解決)の提案をしたり、分割払いの交渉を行うことを選択肢として依頼者の方にご提案をしています。
5 トレント開示請求における弁護士の役割
⑴ 弁護士が提供するサポート
当事務所ではトレント案件に長年注力しており、その経験や知識に基づき、ご依頼者様の不安を解消し、最善の解決に向けて包括的なサポートを提供します。
開示請求が複数社に渡ること、ログ期間が非常に長期に渡ること、賠償額の不安が強いことなどを踏まえた安心の対応をお約束します。
より具体的には以下のような対応をご提供しています。
①プロバイダーへの対応窓口
プロバイダーへの回答書の作成・提出を代行します。
また、プロバイダーからの追加の意見照会の受領もお受けする場合もあります(プロバイダーによります)。
②交渉窓口の一本化
受任通知を相手方弁護士に送付し、以降、ご依頼者様が直接相手方とやり取りする必要がなくなります。
当然、ご自宅に相手方弁護士からの通知が届くこともなくなります。
③戦略的判断の提供
相手方からの請求内容の妥当性を、最新の裁判例(東京地裁、知財高裁、大阪地裁の3つの裁判例など)に基づいて分析し、ご依頼者様の個別事情に合わせた最善の解決策を提示します。
また、当事務所におけるこれまでの訴訟対応経験も踏まえて方針を検討、ご提案することが可能です。
さらには、トレントファイルの保有状況(即時削除していたなど)を踏まえ、示談をしない解決(示談拒否)も選択肢に入れて対応します。
④複数請求への備え
開示請求が複数社になる可能性を踏まえた解決判断を行います。
この点、当事務所の「おまとめプラン」は、何社からの請求でも追加費用なしで対応できる体制を整えています。
⑤ログ期間の考慮
ログ保存期間の経過を待つことで、追加の請求リスクがなくなったことを確認した上で最終結論を導きます。
そうすることで負担すべき賠償額を確定し、可能な限り最少額での解決に繋げます。
⑵ 解決事例の紹介
当事務所はここ数年で1000件を超えるトレント案件の相談・依頼に対応しており、豊富な経験と最新の情報を有しています。
以下、そのうち一部の事例をご紹介します。
ビットトレントシステムの利用に伴いプロバイダーから意見照会書が届き、その後の対応を弁護士が介入、担当し、解決した事例です。
本人名義のプロバイダーから意見照会書が届いたので回答書の送付を含めて弁護士対応をし、示談に至った事例です。
一番最初に2022年1月に意見照会が届きました。その対応を当事務所にて受けることとなり、引き続く開示請求の有無を待ちました。
結果、複数回に渡り、株式会社ケイ・エム・プロデュースからの開示請求が続いたことから同社との間では包括合意による示談締結に至りました(今回の件では示談金の相場として妥当と判断)。
プロバイダーからの意見照会書が複数続き、当初の法律事務所ではなく、途中から当事務所にご依頼の上で最終解決に至ったケースです。
KDDIからの意見照会書が届き、内容を確認するとビットトレントシステムの利用に伴う開示請求でした。利用自体には覚えがあったので同意で回答をしました。
その後、製作会社の代理人弁護士からは相当額の示談の提示がありましたが、反面、利用に伴う実損害額はさほど多額でないことなどから示談提示には応じることなく(示談金の相場を超えるとの判断)、支払いを拒絶しました。
アダルトビデオの製作会社との訴訟・裁判について和解により解決した事例です。トレント利用に伴い発信者情報開示、損害賠償請求訴訟の結果、和解により解決に至りました。
6 トレント開示請求の法的リスク
⑴ 損害賠償請求の可能性
著作権侵害は不法行為にあたるため、制作会社は損害賠償を請求する権利を有します。
相手方からの請求額が提示された条件で示談しない場合、制作会社側から民事訴訟を提起される可能性があります。
ただし、開示請求全体の件数に比べ、積極的に訴訟を起こすケースは現時点ではごく一部に留まっています。
裁判例(知財高裁や大阪地裁の判決)によると、ユーザーが責任を負うのは、トレントファイルを利用し始めた日(アップロードを開始した日)から、利用を完全に停止した日(弁護士に相談した日やファイルを削除したと申告した日)までの期間に限られます。
トレント利用開始前や、利用を完全にやめた後まで賠償責任を負うことはありません。
⑵ 刑事責任のリスク
著作権侵害は、最高で10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科される刑事責任を負う可能性があります。
ただし、この刑事責任は故意犯であるため、過失による利用の場合には問われることはありません。
また、当事務所の経験に基づけば、全国無数の開示請求の全てが刑事事件になることはまずあり得ないため、過度に怯える必要はありません。
そもそも、これまでの間、当事務所では刑事事件になったご依頼者様はまだありません。
7 トレント問題を弁護士に依頼するメリット
⑴ 専門知識による適切なアドバイス
トレント問題の解決には専門性が不可欠です。
当事務所の弁護士は、これまで1000件を超える相談実績を通じて、相手方弁護士(ITJ法律事務所、赤レンガ法律事務所、オルビス法律事務所、八重洲コモンズ法律事務所など)の最新の動向や、損害賠償額の算定に関する3つの主要な裁判例を深く理解しています。
この専門知識に基づき、ご依頼者様の個別事情(複数の開示請求の可能性や経済状況)を考慮した、最善かつ間違いのない確実な解決策を提案できます。
また、これまでに訴訟の対応経験も複数あることから、万が一、民事訴訟になったとしても経験に基づく安心安全な解決に導きます。
⑵ 精神的負担の軽減
突然の意見照会書は、強い驚きと不安を伴います。
しかも、プロバイダーのログ期間に照らし、最終的な解決まで長期に渡る不安に苛まれることとなります。
そうした中、弁護士に依頼することで、煩雑なプロバイダーへの対応や、相手方弁護士との交渉窓口を全て引き受けます。当然、専門家によるサポートの結果、日々の安心した生活を取り戻すことに繋がります。
また、当事務所の「即示談以外の解決」方針のもと、ログ保存期間の経過を待ち、追加の請求リスクをゼロに近づけてから最終結論を出すことで、
「一旦示談したけどまたすぐ届いた」
という再度の不安を回避し、依頼者様の精神的負担を軽減します。
【呉弁護士の一言コメント】
当事務所が受任をすると、制作会社側の弁護士との交渉の窓口となり、かつ相手方弁護士からは以後の請求や督促がピタッと止まることが大半です。その意味でも弁護士に依頼することのメリットは大きいかと思います。
8 トレント開示請求に関する費用
⑴ 弁護士費用の内訳
法律相談料は30分あたり5,500円です(当事務所では無料相談はお受けしておりません)。
また、ご相談時間内に十分にお悩みをお聞きし、丁寧にご助言ができる体制にしていますのでご安心ください。
さらに、案件をご依頼の際には当事務所では、ご依頼者様の状況に合わせて、3つのプランを用意しています。
プラン①【通常プラン】
【着手金】
・220,000円(2社目以降、1社あたり77,000円)
【報酬金】
・(1社あたり)示談により解決した場合: 165,000円
・示談によらず相手方の請求を断念させた場合: 220,000円
プラン②【おまとめプラン:ショートコース】
笠岡放送㈱、井原放送㈱、㈱ケーブルメディアワイワイ、大分ケーブルテレコム㈱
その他ログ保存期間が1年未満のプロバイダー。
着手金
275,000円
報酬金
275,000円
プラン②【おまとめプラン: ノーマルコース】
ショートコースおよびロングコース以外のプロバイダー。
着手金
308,000円
報酬金
308,000円
【おまとめプラン:③ ロングコース】
ソフトバンク㈱、㈱NTTドコモ、㈱オプテージ、エネコム
その他ログ保存期間が2年以上と当事務所で判断しているプロバイダー。
着手金
363,000円
報酬金
363,000円
プラン③【訴訟プラスプラン】
着手金
おまとめプランの着手金に +110,000円
報酬金
おまとめプランの報酬に +110,000円
備考
詳細は以下からご参照ください。ご依頼の際の参考になさってください。
※特にトレントの利用が多かった方には、費用が青天井になることを防ぐため、「おまとめプラン」のご利用を推奨しています。
⑵ 費用を抑える方法
弁護士費用を抑えるためには、複数社からの開示請求のリスクを念頭に置いた契約が有効です。
また、制作会社が提示する条件でただ示談をするだけであれば、弁護士に依頼する費用自体が不要になります。
弁護士に依頼する目的は
ログ期間経過までは示談をしない
その上でケースによっては提示額を払わない、または減額する弁護活動を求めること
にありますので、ご自身の希望と費用のバランスをよく検討してください。
9 トレント開示請求に関するよくある質問
⑴ 開示請求の流れについて
ご相談から最終的な解決までの一般的な流れは以下の通りです。
①プロバイダーからの意見照会書受領:プロバイダーから書類が届きます。
②弁護士への相談・方針決定:意見照会書への回答方針(同意/不同意)を決定し、弁護士がプロバイダーへ回答書を提出します。
③受任通知の発送:弁護士が相手方弁護士へ受任通知を送付し、交渉窓口となります。
④開示の実行と通知書受領:開示後、相手方弁護士から示談の申し入れ(通知書)が届きます。
⑤ログ保存期間の経過待ち:当事務所の方針に基づき、ログ保存期間の経過を待って、追加の開示請求がないか見極めます。
⑥交渉・最終解決:和解(示談金支払い)または示談拒否の当否を判断し、案件を終了させます。
解決までにかかる期間は、ログ保存期間の超過を待つため、プロバイダーに応じ半年から1年、2年未満、2年以上というケースを想定して対応します。
以上について、より詳しい内容は別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください
⑵ 弁護士相談のポイント
繰り返しになりますが、トレントの問題を弁護士に相談する際は、以下の点をご留意ください。
①慌てず、信頼できる弁護士を選ぶ
示談を急がせる弁護士や、詳しい説明なく高額な費用を請求する弁護士は避けてください。
②目的を明確にする
「家族に知られたくない」「示談金を減額したい」「絶対に払いたくない」など、ご自身の解決目標を明確に弁護士に伝えてください。
③関連書類を全て準備する
届いた意見照会書や、すでに和解・示談が成立している場合の書類など、全てを弁護士に提出してください。
④利用状況を正確に伝える
どの程度の作品を利用したか、関与した制作会社はどれくらいか、現在の経済状況など、弁護士に正確に伝達することで、最善の解決策の提案が可能になります。
⑶相談予約について
当事務所においては、メールフォーム(24時間)、LINE(24時間)、お電話(平日9時~17時)にてご相談を受け付けています。
ご相談はオンラインにて実施しております(電話相談はお受けしておりません)。
当然、ご相談内容が外に漏れることはなく、秘密を厳守いたします。
トレントのようにプライバシー性の高い案件であるからこそ、この点をご心配される方が多いのも事実です。
また、意見照会書の回答期限の関係から迅速な対応を心がけており、可能な限り即日のご相談もお受けしています。
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