人が生まれ、成長し、婚姻をするなどし、子を設け、その子が成長し、また孫を設ける。
当然、すべての人が子を設ける訳ではありませんが、仮に上記のように親→子→孫と命が繋がった場合、子は親よりも、孫は子よりもそれぞれ「幸せ」になる必要があるのでしょうか?
なぜこんな命題を考えたかというと、日経新聞の調査で、若い人ほど親世代よりも自分は不幸せと感じる人が多いという結果が示されていたからです。
そもそも人は自分の赤ちゃんに「不幸になって欲しい」などと思うことはありません。多くの場合、わが子に愛情を注ぎ、子育てすることでしょう。親は自分のしてきた苦労はさせないように子どもに教育をするでしょう。
それなのに調査結果では、若い人は親世代よりも不幸せと感じる人の方が多いのです。
これはどうしてなのでしょうか。
社会が健全に成長をしていればきっとこのような結論にはならなかったはずです。
しかし、日本の現状では、雇用や賃金、経済、環境、自然災害、人口動態など多くの問題があり、その結果、若い人は「昔の方が良かったのでは?=親世代の方が良い時代を生きたのでは?」と思ってしまっているように感じます。
これは当然、若い人たちの責任ではありません。日本の抱える問題が長年放置され、その結果が若い人たちに押し付けられてしまっているのです。
こうした状況を踏まえ、若い人の多くが「自分は親世代より幸せになれない。自分の子どもなんて今の自分よりも不幸になる。」ともし考えるようになったらどうでしょうか?
それこそ日本の将来はないに等しいと言わざるを得ません。
実際、最近は「反出生主義」という思想が人気のようです。
これは「自分は生まれてこないほうがよかった(誕生の否定)」と「人間は生まれない方が良いので生まない方がよい(出産の否定)」について考えるという思想のことです。
自分自身を否定する人が、積極的に子を設けるとは考え難く、私はこのような思想が注目を浴びている現代の日本社会を見ていると非常に悲しい気持ちになります。
子を設けるかどうかは完全に個人の自由ですが、親世代よりも不幸だから、子は自分よりもさらに不幸になるから設けない、との結論は非常にさみしいものを感じます。
いずれにしても、今の大人は(私も含めて)、若い人に対して「生きていることの喜びや価値」を作り出し、伝えていく責任があると思います。そして、少なくとも私に関わる子どもたちには、私よりもっとずっと幸せになって欲しいと願っています。