野洲市長の言動の一部が第三者委員会により、パワハラと認定されたことが話題となっています。
弁護士や学者で構成された第三者委員会による調査報告書(https://www.city.yasu.lg.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/9/toshinshokohyo.pdf)を見たところ、問題となった言動は次のとおりです。
1病院の整備場所について協議中、
(1)市長席の机にペンを投げつけ、(2)「三日間協議しても同じや。」、(3)「良い案がないなら市長室に入るな。」と発言をした。
2 土砂災害警報は発表されている中で、携帯に架電してきた職員に(4)「偉そうに言うな。」と発言した。
3 来客に職員を紹介する際、(5)「こいつは、頑固でうんこや。」と発言した。
4 閉会直後の議場において、(6)「ええかげんにせえよ。」(7)もっと協議したやろ、それは言えんのか。」(8)「P、お前もじゃ。」と罵声を浴びせた。
これら言動のうち、第三者委員会は、(1)、(2)、(4)、(6)~(8)の事実を認定した上で、これらをいずれもパワハラに該当すると判断しました。
他方で、(3)、(5)については事実を認定できず、パワハラに該当するとの判断に至っていません。
そもそも本件は、懸案となっていた病院の移転先を巡る市長自身の公約と、その実現が困難な状況を踏まえての職員との対立の中で生じた出来事ですが、パワハラ認定された言動は、思う通りにならない苛立ちを行動で示し、職員を黙らせ、威嚇するという側面があります。
当然、これら言動をみた他の職員は、他の案件でも「市長を怒られたら怖い。」と感じ、遠慮がちな進言もしくは市長の意に沿った進言しかしないようになる可能性があります。
よって、上記(1)、(2)、(4)、(6)~(8)がパワハラと認定されたことは当然だと言えます。
他方で、事実自体が明らかでないとして、(3)「頑固でうんこ」発言についてはパワハラの認定に至っていません。
仮にこれが事実であると証拠をもって明らかにできていれば、他人に職員を紹介するに際して「うんこ」と評することは明らかに侮辱ですし、業務上の必要性も相当性も欠く行為としてパワハラと判断できます。
ところで、市長の職員に対するパワハラ問題と言えば、数年前の明石市長の「火つけてこい」発言があります。
この事案は、立ち退きがうまくいかないことに苛立った市長が職員に対して「もう行ってこい、燃やしてこい、今から建物」「損害賠償、個人で負え」などと発言した問題です。
かかる発言は刑事罰に相当する行為をするよう求めるものですから、業務上、必要かつ相当な行為とは言えないことは明らかです。
そして、この件では、当該発言が録音されていて、マスコミにも流れたこともあり発言の有無自体は争いになりませんでした。
その意味で野洲市長の「頑固でうんこ」発言と異なる顛末を辿っています。
このように、発言を基にしたパワハラの主張に際しては、録音がいかに重要かということが分かります。
いずれにしても、地方自治体の長という権力の長に着くと、自分の政策目的実現に向けて職員に対して乱暴な言動をとるケースが少なくないことが分かります。そのため、有権者は、市長の本当の意味での人柄も踏まえて投票行動に出るべきだと思います。