阿武町の誤送金問題が日々、注目を浴びています。
あまりにも理解不能な点が多いため、多くの関心を呼ぶのだと思います。
そこで、この間、ざっと見聞きした中で、思いつく法律問題などを簡単に書いてみます。
(1)誤送金が分かってどうしてすぐに法的措置をとらなかったのか?
→本人を銀行に同行し、組み戻しをお願いしたが応じなかったとのことです。ならばすぐに口座を仮差押えするよう町の弁護士に依頼すべきだったのではないかと思います。この点の初動の遅さは町の判断ミスと思います。
(2)誤送金をしてしまった職員の落ち度はどうなるのか?
→どのような仕組みで誰が送金手続きをとったのかについては(私の知る限り)、これといった報道を見聞きしていません。しかし、明白かつ重大な落ち度であり、当該職員の責任問題は本来避けられないのではないかと思います。回収不能な金額について、町に対する賠償問題があり得ます。
(3)民事訴訟の行く末はどうなるのか?
→勝訴判決が出ることは明らかです。問題は、判決が出たとしてどう回収するか。報道によると、本人はもう一文無しの状態とのことです。今後、回収しようにも将来、本人が働くようになったら少しずつ返してもらうくらいしか現実的には難しいでしょう。
(4)刑事責任はどうなるのか?
→ひとまず電子計算機使用詐欺罪(自分のお金でないと知りつつ、ATMを操作して送金などをしたことの責任)で逮捕されたとのことです。今後、裁判にかけられれば有罪判決になる事案です。執行猶予が付くかどうかですが、金額の大きさや悪質性に照らすと難しいかもしれません。
あとはオンラインカジノで費消したとのことなので、場合によっては賭博罪での立件があり得るところでしょうか。それにしても今回の事件のためにオンラインカジノが広く世間の注目を集めてしまいましたね。そのためにこれにはまる人が増え、借金などをしないようにして欲しいと思います。
(5)会見に応じた弁護士はどういうルートや費用で委任を受けたのか?
→本人の代わりに会見に応じた弁護士ですが、本当に大変な弁護を引き受けたと思います。どのようなルートで受けたのか、そもそも弁護士費用は受け取っているのか?受け取っているとしてそのお金の出所はどこなのか?、、、疑問がいっぱいです。
とはいえ、どんな人にも弁護士をつける権利があります。刑事弁護であればこれは憲法上の権利でもあります。
当然、弁護士自身が悪いことをしたのでもないので、どうか弁護士を非難することはしないで欲しいと思います。
ちょっとした手違いから、とんでもない事件に発展しています。人生とはきっとそういう「ちょっとしたこと」の積み重ねのようにも思います。なので、私は「他人事」ではなく、自分にもあり得ること(町の立場にしても誤送金を受けた立場だとしても)だと感じつつ、今回の報道を拝見しています。