協議離婚、離婚調停と離婚裁判の違いについて

このコラムでは、離婚の際の方法である協議離婚、調停離婚、裁判離婚のそれぞれについてその特徴を紹介し、具体的にどの方法を選択すべきかを離婚に詳しい専門の弁護士の観点から解説しています。

離婚の方法で悩んだらまず、ご参照ください。

1 離婚のための3つの方法について

現在、日本の法律では離婚について、以下の3つの方法について定めています。

(1)協議離婚

(2)調停離婚

(3)裁判離婚

そのため、配偶者と離婚をするためにはこれらいずれかの方法により離婚をする必要があります。

そして、

(1)協議離婚と

(2)調停離婚がいずれも話し合いによる離婚を想定していること

他方で

(3)裁判離婚は協議も調停もまとまらなかった場合に備え、最終的には裁判所による判決での離婚の余地があるものの、和解による離婚すなわち話し合いによる離婚を排除するものではない

点に違いがあります。

そこで、以下、これらの3つの離婚の方法について順次説明をしたいと思います。

このコラムを読んで、それぞれの離婚の方法についてのメリットやデメリットをご理解ください。また、具体的にどの制度を利用するのがふさわしいかをご判断ください。

なお、民事事件の際の調停と裁判の違いについては以下のコンテンツをご参照ください。

2 (1)協議離婚について

(1)協議離婚の根拠条文について

民法では協議離婚について「夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。」と規定をしています(民法763条)。その上で、民法764条において婚姻届けに関する規定である民法739条を準用しています。

その民法739条には「婚姻は、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。」と規定をしているため、離婚においても、戸籍法の定めるところにより離婚届けを届け出ることによって、離婚の効力が生じることとなります。

この点、離婚調停においては調停の成立をもって離婚が成立すること、裁判離婚においては離婚請求を認容する判決の確定をもって離婚が成立することと効力の生じる時期が異なる点に注意が必要です。

すなわち、離婚調停や離婚裁判の際には、離婚が確定したことを市役所などの役場に後日、届け出るだけであり、離婚自体は離婚届けの以前に調停調書の作成日、和解調書の作成日、判決の確定日にすでに成立していることとなります。

(2)協議離婚の際の合意内容について

離婚の際には概ね、以下の内容を当事者間で協議し、口頭もしくは書面により合意をしていることがあります。そして、その内容を離婚協議書や離婚公正証書としてまとめておくことも多々あります。

なお、離婚協議書や離婚公正証書の具体的な違いや、盛り込むべき内容、記載すべき内容については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。

(1)財産分与

(2)子供がある場合の養育費

(3)子供がある場合の面会の方法

(4)離婚に伴う慰謝料

しかし、これらの事項は、協議離婚の際に必ず決めておかないと離婚ができないという離婚のための必要条件ではありません。

このことに関し、民法上は「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。」(民法766条1項)、「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。」(民法768条1項)と規定されているにとどまり、これらを定めないと離婚ができないとはしていないのです。

ただし、昨今、離婚後の養育費を支払う側の不払いや、親権者側の面会の拒否が社会問題となっていることから、離婚の際に予め養育費の支払い内容や面会の方法についてお互いで定めておくことを離婚の条件とすることが検討されていることに注意が必要です。

他方で、子どもがいる場合に、いずれが親権を持つか、その親権者については協議離婚の際にこれを取り決めておくことが必須となっており、民法上は「父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。」と規定されています(民法819条)。

したがって、協議離婚の際には、子がいなければ離婚届けの作成と届出のみで、未成年の子がいる場合には離婚届けの作成の際に親権者の定めもした上で届出をすれば離婚が成立することとなります。

(3)協議離婚の際に定めなかった合意事項の取り扱いについて

上記の通り、協議離婚の際には養育費や面会、財産分与、慰謝料についてその時点で約束しておく法的な必要性はありません。

そのため、協議離婚の成立後にこれらを改めて話し合うなどすることも当然に可能です。

以下、順次説明いたします。

(1)財産分与について

財産分与について、民法は「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。」と規定しています(民法768条1項)。

ただし、財産分与は「離婚の時から二年を経過したとき」はこれを請求することができなくなります(民法768条2項)。離婚が成立したことをもって当事者間の身分関係を早期に確定させ、後のお互いの生活の平穏を確保する趣旨と考えられます。

また、財産分与は同居中に夫婦で形成した財産を分けるものなので、離婚に先行する別居中に互いに形成した各自の財産は対象となりません。

(2)子がある場合の養育費について

養育費(子の養育にかかる生活費)については子が未成年であるなど扶養の必要な状況であればいつでもその請求が可能です。長年請求をしていなかったからといって将来分の養育費請求権が消滅することはありません。

ただし、養育費の請求は過去に遡ってこれを求めても相手方が拒否してしまうと強制的に過去の分まで支払いをしてもらうことはできません。

そのため、養育費の支払いを求める場合には早めに請求をすることが必要です。

その際には、単に口頭やLINEなどで請求の意思を告げるだけではやはり不十分であり、裁判所に養育費を求める調停を申し立てることが必要です。

すなわち、養育費は、請求を求める側の請求の意思が客観的に明らかになった時点で、具体的な権利としての側面を持つようになることから、その意思を裁判所による調停という形で明らかにすることで、その権利性を具体化できるとされているのです。

(3)子がある場合の面会の方法

面会の方法については、やはり離婚後にこれを協議することが可能です。財産分与と異なり、時が経過したとしても親子としての関係が失われるものではないため、離婚から何年経った後からでも面会を求めることが可能です。

長年、面会の実施がないため面会調停を申し立てることを躊躇するケースが少なくないと思いますが、少しでも可能性があるならぜひ面会調停を申し立てることをお勧めします。

(4)離婚に伴う慰謝料

離婚に伴う慰謝料は、不法行為に基づく損害賠償請求という性質を持つため、離婚が成立した後、3年で消滅時効にかかります(民法724条)。そのため、離婚から3年以内に請求をすることが必要です。

なお、離婚に伴う慰謝料の請求が認められるのは、主として夫婦の一方に離婚に至る原因があると明らかに認められる場合に限られ、お互いに原因がある場合や、どちらか一方の責任とまで明確には言い難い場合には認められませんので注意が必要です。

その意味では、離婚に伴う慰謝料が発生するのは、典型的には不倫(不貞行為)、DVなどといえます。また、最近では、モラハラによる慰謝料を求めるケースも増えていますが、そのためには証拠が重要となります。

3 (2)調停離婚について

(1)離婚調停の根拠条文について

離婚調停については、家事事件手続法において「家庭裁判所は、人事に関する訴訟事件その他家庭に関する事件(別表第一に掲げる事項についての事件を除く。)について調停を行うほか、この編の定めるところにより審判をする。」と規定されています(家事事件手続法244条)。

この条文は、若干分かりにくいのですが、「人事に関する訴訟事件」の中に、「離婚の訴え」が含まれる結果(人事訴訟法第2条1号)、家庭裁判所は、その「離婚の訴え」について調停を行うこととなるのです。

(2)離婚調停の調停前置主義について

上記のように、離婚の訴えが人事訴訟法で規定されているのであれば、何も離婚調停を申し立てなくても最初から離婚訴訟を提起すれば良いのではないかと考える方がいるかもしれません。

しかし、家事事件手続法では離婚については調停前置主義を採用しており、離婚調停を経ることなく離婚訴訟を提起してもそれは調停に付される(付調停といいます)こととなってしまいます(家事事件手続法257条2項)。

すなわち、家事事件手続法では「第二百四十四条の規定により調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならない。」と規定しており、離婚訴訟に先立つ離婚調停が必須とされているのです(家事事件手続法257条)。

どうしてこのような調停前置主義が定められているかですが、要は夫婦の問題についてはいきなり訴訟という公の場、公開の法廷にて裁判官が離婚原因についての主張立証を踏まえて一刀両断に結論を出すのではなく、調停という非公式の場、非公開の調停室にてお互いの言い分を調停委員がじっくりと聞き、すり合わせをすることで柔軟かつ円満に解決することが望ましいと考えられているからです。

(3)離婚調停で取り決める内容について

離婚調停の申し立ての際には、裁判所の書式に基づき行うことが多いです。参考に裁判所のウェブサイトに掲載されている離婚調停に関する申立書のひな型のページのリンクを貼っておきます。

なお、裁判所では「離婚調停」のことを「夫婦関係調停調停(離婚)」と呼びます。

また、離婚に伴い、婚姻費用や面会についても調停を申し立てる場合にはそれぞれ「婚姻費用の分担請求調停」や「面会交流調停」の申し立てを行うこととなります。

ただし、離婚調停の申し立ての際に、面会についても協議内容として明記しておけば、別途、面会調停の申し立ては必要ないとも言えますが、離婚調停が長引き、その間に面会の実施ができない場合にはやはり別途、面会調停の申し立てをしておくことが望ましいといえます。

家事調停の申立書 | 裁判所
裁判所のホームページです。裁判例情報、司法統計、裁判手続などに関する情報を掲載しています。

いずれにしても、離婚調停の際には、

(1)離婚をするか否か

(2)親権者をいずれにするか

(3)養育費をどうするか(額や終期など)

(4)面会の方法をどうするか

(5)財産分与をどうするか(年金分割を含む)

(6)慰謝料をどうするか

などについて協議を求めることが可能です。

(4)離婚調停の進み方について

離婚調停を申し立てると、申し立てから約1か月前後先に1回目の調停期日が入ることが通常です(ただし、最近では家事調停事件が増加もしくは長期化していること、裁判所のマンパワーや調停室などの設備の不足などが原因となって、申し立てから1か月以上先に期日が指定されることも少なくない状況です)。

同時に、相手方に対しても裁判所から調停申立書の写しや呼び出し状などが送付され、なおかつ調停申立書の内容に対する意見書の提出が求められます。

こうして具体的に調停期日が進むこととなり、後は実際の調停期日において当事者双方で離婚についてのお互いの考えを順次、調停委員に告げることとなります。

その際、調停は個室において、調停委員と一方当事者とが面談をし、それが済んだら調停委員と他方当事者とが面談をするという流れで行われますので、お互いが直接顔を合わせることはないようにしてくれます。

調停は、1回の期日ごとに午前か午後の2時間前後を用いて行われ、その日、協議した内容を次回までに双方が検討したり、提出書類を準備したりすることとなります。そのような方法でやりとりを重ね、お互いの言い分の折り合いが付けば調停が成立するし、いくらやりとりを重ねても折り合う余地が見つからなければ調停は不成立により終了します。

(5)離婚調停の期間について

この調停が、成立、もしくは不成立するまでの期間としては、極々まれに1回目で成立することもありますが、平均的には早くて半年前後かかり、1年程度かかることもざらで、1年以上かかることも少なくありません

離婚についてお互いに合意ができているケースでもこれは同様であり、どうしてそんなに期間がかかるのかと思われる当事者の方も多いところです。

しかし、離婚について合意ができていても、親権者、面会、養育費、財産分与、慰謝料などの各点についてお互いの意見や考え方の対立が生じると、ひとつのことを決めるだけでも数か月かかるのでそれらをトータルすると1年くらいはかかってしまうのが実情なのです。

これを言い換えると、離婚の条件で妥協できないのは自分も相手も同じであるため、そのようなお互いの思惑を何とかすり合わせしようとし、着地点を見出そうとするとギリギリのせめぎあいになることから解決まで長期化するともいえます。

このように調停でも長期化することを考えると、「調停は早く不成立にしてさっさと離婚訴訟で裁判所により白黒ハッキリつけてもらった方が早いのではないか。」と言われる方もいます。

しかし、上記で述べたように、そもそも夫婦間の問題は非公開の場でできるだけ話合いで解決を試みるべきとの調停前置主義の考え方に照らすと、裁判所は容易に離婚調停を不成立にはしてくれませんし(そもそも調停不成立は当事者の一方が「不成立にしてください」と言えばそうしてくれるというものではありません)、仮に不成立になったとしても、その後、離婚訴訟を起こし、お互いの言い分について主張立証を繰り返している間に結局は1年程度の時間は過ぎて行ってしまいます。

4 (3)裁判離婚について

(1)裁判離婚の根拠条文について

民法では裁判離婚について次のとおり規定しています(民法770条1項)。

夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

一 配偶者に不貞な行為があったとき。

二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。

三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。

四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

これらの事情は、裁判離婚を訴える際に、離婚請求が認容されるのに必要な法律上の離婚原因と考えられています。逆に言うと、離婚裁判を提起しても、これらの離婚原因の主張立証が出来なければ離婚請求は棄却され、離婚は実現しないこととなります。

(2)離婚裁判での判断事項について

離婚裁判では、離婚をするか否かの他に親権者、養育費、面会、財産分与、慰謝料について判断をすることが可能です。

親権者については、民法819条2項において「裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。」と規定されており、親権者の定めが離婚裁判の必要条件であることが分かります。

養育費や面会については、民法771条において民法766条が引用されており、財産分与についてはやはり民法771条において民法768条が引用されている結果、離婚裁判にて定めることが可能となります。

他方で、慰謝料については不法行為に基づく損害賠償請求なので根拠は民法709条となります。

(3)離婚裁判の進み方について

離婚裁判については、原告が訴状を裁判所に提出すると、その内容の審査を経て被告に対して訴状等の写しと期日の呼び出しなどがなされます。

1回目の裁判期日は、概ね訴状提出から約1か月前後先に指定されることが多いですが、離婚調停の項で説明したのと同様に、場合によっては1か月以上先に期日が指定されることも増えてきています。

その後、被告からは答弁書の提出があり、それに対して原告から再反論がなされ、さらに被告から再々反論がなされ、という形で期日が進んでいきます。その都度、約1か月から2か月前後で期日が指定されるので、お互いの主張のやりとりを複数回往復するだけで半年から1年程度の期間を要します。

そうしてお互いの言い分が尽くされた後、裁判所からは和解の提案がなされることが多く、その場合には和解による解決の可否を双方が検討していくこととなります。

結果、和解での解決が可能となれば離婚裁判は終了します。他方で和解による解決が不可能となれば判決により離婚やその他の条件について裁判所が結論を出してくれることとなります。この判決による終結の場合には、不服があれば控訴が可能となります。

なお、和解と判決の違いについては別途、その説明をしていますので併せてご参照ください。

5 弁護士費用について

以上の離婚の問題について、当事務所ではご相談料は30分あたり5,500円(税込)です。

ご依頼の場合には、示談交渉の際に着手金として297,000円(税込)、調停の際には396,000円(税込)、訴訟の際には528,000円(税込)にてお受けしております。

解決した際の報酬は、解決した際の内容により個別に定めておりますので別途、弁護士費用のページにてご確認ください。

執筆者:弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)
1979年 東京都生まれ
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更
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