平成28年7月12日、東京高裁は、ある男性がグーグルの検索結果から自分の逮捕歴に関する記事の削除を求めていた事案において、いわゆる「忘れられる権利」を否定する決定を出しました。
この報道を見て、一般の方は「裁判所が『忘れられる権利』を否定した以上、過去の犯罪報道やプライバシー情報などの削除はもはや一切認められないのか?」と誤解されるかもしれません。
しかし、裁判所の判断は、「忘れられる権利」という権利を否定したに過ぎず、その他の権利に基づく削除請求権すべてを否定したわけではありません。
すなわち、「忘れられる権利」といわなくとも、名誉権、プライバシー権、人格権などの各明文の根拠のある権利に基づき、過去の犯罪報道やプライバシー情報の削除は可能なのです。
上記の東京高裁の決定でも、「忘れられる権利」以外の人格権やプライバシー権に基づく削除の可否を判断しています(ただし、両権利に基づく削除請求も、当該逮捕報道記事の公共性等を根拠に結論としては否定されました。)。
新聞等の報道では、「『忘れられる権利』を否定!逮捕記事の削除を認めず!」みたいな取扱いなので、誤解されないようしてください。
また、日本でもそのうち議論が進み、「忘れられる権利」が明文化されることもあり得ます。私も、このような権利認められてしかるべきと思っています。
誰でも「忘れたい過去」「忘れてもらいたい過去」はありますからね。