この記事を書いた弁護士
代表弁護士 呉 裕麻(おー ゆうま)
出身:東京 出身大学:早稲田大学
2008年に弁護士登録後、消費者案件(出会い系サイト、占いサイト、ロマンス詐欺その他)、負債処理(過払い、債務整理、破産、民事再生)、男女問題(離婚、不倫その他)、遺言・遺産争い、交通事故(被害者、加害者)、刑事事件、インターネットトラブル(誹謗中傷、トレント、その他)、子どもの権利(いじめ問題、学校トラブル)、企業案件(顧問契約など)に注力してきた。
他にも、障害者の権利を巡る弁護団事件、住民訴訟など弁護団事件も多数担当している。
Google(グーグル)の口コミ(クチコミ)をどのようにしたら削除できるのか、悪い口コミを書かれた側の立場に基づき解説をしています。実際の削除に向けた手段をご検討の方の参考にしていただければ幸いです。
1 Googleの口コミを削除する方法について
日々の生活の中で広く浸透しているGoogle検索やGoogleマップには、これを用いる一般の方から企業、施設、病院、クリニック、美容院、飲食店など多様なサービスや店舗に対する口コミ投稿(クチコミ投稿、レビュー投稿)の機能があります。
Googleのユーザーは、自分が利用した店舗などについて、その評価を星☆1から星☆5で評価をし、加えてコメントを残すことができるのです。そのため、Googleの口コミ投稿の機能は、Googleアカウントを保有していないとできませんが、Googleアカウント自体は無料で簡単に取得ができるため、相当多くの方がGoogleアカウントを保有しているのが実情です。
かつ、一人で複数のGoogleアカウントを保有することも認められており、アカウント毎に使い分けをしているケースも多々あります。
これらサービスや店舗の利用を検討する方は、Googleに掲載されている他の投稿者からの口コミを見て利用をするかどうかを決めることも多くなっています。
そのため、サービルを提供する側、店舗を経営する側にとってはこの口コミの評価や内容が集客や売り上げに影響ないし直結しかねない重要な問題となります。当然、悪い評価は避けたいところですし、事実無根の悪質な誹謗中傷であれば削除を求めたいところだと思います。
そうしたGoogleの口コミについて、以下、どのような方法で削除が可能なのか、どのような内容であれば削除が可能なのかをポイントに絞って個別に説明したいと思います。
具体的には、Googleの口コミを削除する方法として、(1)Googleを通じて削除する方法と、(2)裁判所を通じて削除する方法の2パターンがあります。
以下ではそれぞれの手順を詳しく紹介をします。
いずれも、削除のための方法と、削除が可能な場合が異なるので内容を十分にご確認頂き、ご自身の会社のケースであればいずれの方法が使えるのかをご判断ください。
その上でGoogleの口コミ投稿に対してどのように対策するかを十分にご検討ください。
【Googleの口コミを削除する方法】
(1)Googleを通じて削除する方法
(2)裁判所を通じて削除する方法
2 (1)Googleを通じて削除する方法
(1)Googleの削除フォームについて(一般の検索経由の場合)
Googleを通じて削除するためには、問題となる口コミ投稿について「違反コンテンツを報告」をクリックすると「口コミを報告」という別ウインドウが開きます。これはGoogleに投稿されたユーザーからの口コミをGoogleに通知して削除を求める方法です。
そして、クリックしたその別ウインドウの中に「関連性のないコンテンツ」「スパム」「利害に関する問題」「冒涜的な表現」「いじめ、嫌がらせ」「人種差別、ヘイトスピーチ」「個人情報」「役に立たなかった」という項目が表示されます。これらはGoogleにおいて、不適切な投稿と考える項目をリストアップしたものです。
ところが、これらを選択した場合には次の画面で「送信」のボタンが表示されますので、当該投稿についてこれらに該当することをGoogleに送信するだけとなり、どうしてこれらの投稿が問題なのかという情報をより具体的かつ丁寧にGoogleに伝えることができません。
他方で、これらの選択項目の他に「法的な問題を報告する」という項目が別途あるので問題となる投稿について詳細な根拠や理由を示したい場合には必ずこちらを選択するようにしてください。
そして、「法的問題を報告する」を選択した場合には、次に表示されるフォームに従って入力を進めてください。
その際、一番下に表示されるフォームの注意書きに「上記の URL のコンテンツが違法であるとお考えの理由について、可能な限り具体的な法律の条文を引用し、詳しくご説明ください。」との説明があります。ここは自由に記載が可能なフォームなので、法律の根拠や説明をしっかりと丁寧に記載し、どうしてその投稿が不適切なのかを分かるように説明する必要があります。
当然、法的な問題があることの指摘になるので、記載方法が難しい場合には弁護士へのご相談をお勧めします。また、記載の文章だけを弁護士に作成してもらうことも可能なのでご希望の場合にはご相談の際にそのようにお申し付け頂けると良いと思います。
【Googleの削除フォームからの削除依頼の流れ(一般の検索経由の場合)】
問題となる口コミ
↓
↓
違反コンテンツを報告
↓
↓
法的な問題を報告する
↓
↓
フォームに従って入力する
(2)Googleの削除フォームについて(Googleマイビジネス経由の場合)
(1)の削除依頼は、一般のGoogle検索やGoogleマップを通じての削除依頼、削除フォームの場合ですが、これとは別にGoogleマイビジネスのアカウントを作成し、その管理をしている場合には、そのアカウントから口コミの削除申請ができます。
その方法も(1)の場合とほぼ同様ですが、まずはマイビジネスのアカウントにログインをする必要があります。ログインの後に問題となる口コミを表示し、「レビューを報告」のボタンをクリックします。
そうすると、複数の選択項目として「トピックと関係ない」「スパム」「利害に関する問題」「冒とく」「いじめ、嫌がらせ」「人種差別、ヘイトスピーチ」「個人情報」が表示されます((1)の場合と表示される項目が若干異なります)が、これらを選択すると(1)の場合と同様にあとはGoogleに送信をすることしかできず、詳細な理由を記載できません。
そこで、やはり(1)と同様に、Googleマイビジネスの場合でも、「法的事項に関するヘルプ」を選択することでより詳細な理由や、当該投稿が不適切であり削除に相当することの具体的根拠を示すことが可能となります。
【Googleの削除フォームからの削除依頼の流れ(Googleマイビジネス経由の場合)】
問題となる口コミ
↓
↓
レビューを報告
↓
↓
法的事項に関するヘルプ
↓
↓
フォームに従って入力する
(3)Googleへの申請の結果、削除される基準について
上記の二通りの方法でGoogleに対して当該口コミの削除を申請した後、これらが削除されるかどうかはGoogleによる自主的判断になります。
そのため、上記のフォームに従って削除を申請した後に、Googleがこれら申請がGoogleの基準に照らして削除対象とすべきかどうかを判断し、その結果、ケースによっては削除になったりならなかったりするのです。
削除にならなかった場合には、それ以上いくらGoogleに問い合わせをしたところで結論は左右されないので次で説明する裁判所を通じた削除申請を検討する必要があります。
3 (2)裁判所を通じて削除する方法
Googleに対する申請の結果、削除にならなかった場合には裁判所を通じて削除申請をすることができます。具体的には、削除仮処分を申し立てることとなります。
仮処分の相手方(債務者)はGoogleの運営会社である米国法人であるGoogle LLCとなります。
また、仮処分の申立て先の裁判所は申立人である債権者の住所を管轄する地方裁判所となります。
したがって、たとえば岡山県倉敷市在住で、個人で美容院を営んでいる人が削除の仮処分を申し立てる場合には岡山地方裁判所倉敷支部宛てに、香川県高松市に所在する飲食店を経営する法人が申し立てる場合には高松地方裁判所宛てに申し立てをすることとなります。
削除の仮処分が認められるためには、人格権侵害が認められるか、著作権法や商標法の規定に違反することが認められる必要があります。
そして、ここでいう人格権侵害には、名誉権侵害、名誉感情侵害、プライバシー権侵害などが含まれるので、当該口コミが具体的にこれら権利のうちいずれを侵害しているのか、どうして侵害しているといえるのかを明らかにする必要があります。
そして、仮処分を申し立てた結果、裁判所が権利侵害の疎明を踏まえてこれがあると判断した場合には仮処分決定が出されます。
仮処分決定が確定すれば、Googleは決定にしたがって削除に応じます。
【削除仮処分の概要】
・管轄裁判所;投稿された方や会社の住所を管轄する地方裁判所
・相手方(債務者);Google LLC
4 Googleの口コミを削除してもらえるケースについて
(1)口コミを削除してもらえるケースについて
以上のように、Googleの口コミを削除してもらうためには大きく分けて二つの方法があります。多くのケースでは、まずはGoogleを通じての削除申請をしてみても削除にならない場合に裁判所を通じての削除を検討することになると思います。
そして、いずれの方法をとる場合でも、当該口コミが削除になるかどうかの目安を知っておくことは大切なので、Googleもしくは裁判所が削除を認めるケースについてご説明します。
その際、当該口コミを書かれたのが個人宛てなのか、法人宛てなのかで若干異なるので分けて整理をします。
(2)個人宛ての場合
まず、個人にて病院、飲食店、クリニックなどを経営しているような場合や、法人で経営をしているが口コミの内容が病院の院長やスタッフなどに対するものと認められるような場合です。
このような場合には、当該口コミ投稿の名宛人となる個人について、権利侵害があると認められるかどうかを判断することとなります。
具体的には、当該口コミが名宛人に対する名誉権侵害、名誉感情侵害、プライバシー権侵害などを構成するか否かを判断することとなります。
(3)法人宛ての場合
次に、病院などが法人で経営されている場合です。このような場合には、当該法人を名宛人として投稿をされている限り、名誉感情侵害の問題は生じません。法人には感情はないことから名誉感情侵害にはならないからです。
そのため、口コミ投稿の内容が名誉権侵害を構成しないかを検討し、名誉権侵害で構成できるようであれば名誉権侵害に基づく削除を申請、申立することとなります。
他方で、投稿内容に照らしてどうしても名誉権侵害と構成できず、名誉感情侵害としかなり得ないような場合には、法人としての申立とはせず、法人に所属する個人に対する投稿と見ることができないかを検討するのもひとつです。
要するに、投稿の表現内容に照らし、当該投稿が病院の関係者への投稿だと言えるようであれば、個人からの申立と構成をするのです。
(4)削除になるか否かの判断基準について
以上のように、削除が認められるためには事業者側の権利侵害を主張立証しないとなりません。
その際、権利侵害ついて一番取り上げられがちなのは、名誉権侵害です。この名誉権侵害が成立するかどうかは、事実適示の有無を問わず、人や法人の社会的評価を低下させる表現行為か否かにより判断され、かつ当該投稿について違法性阻却事由が存在しないことも必要です。
社会的評価の低下の有無は一般閲覧者基準と呼ばれる基準で判断され、当該投稿をされた人が主観的に「名誉棄損だ」と感じるか否かで決まるものではありません。すなわち、当該投稿を閲覧した一般人が当該投稿の名宛人に対してどのように考えるかにより決まるのです。
より具体的には、当該投稿を一般閲覧者が見た結果、「この会社はひどい会社だ」などと考えるかどうかにより決まるのです。
そのため、たとえば「先日、○○という飲食店を利用したが全然美味しくなかった」と書いてあるだけだと、一般閲覧者は「この投稿をした人の感想としては美味しくないと感じたのだな」と思うだけであり、それに加えて当該店舗自体の社会的評価を下げる効果までは持ちません。そのため、このような単なる「意見や感想」についての投稿は名誉権侵害を構成せず、削除の対象とはならないのです。
他方で、たとえば「先日、○○という飲食店を利用したが、スタッフはトイレを出ても手も洗わずに調理をし、髪の毛が料理に入っていたし、言葉遣いも悪く不衛生かつ気分が悪かった」との投稿であれば、これを見た一般閲覧者は「このお店は(単にこの投稿者が悪い印象を持っているだけでなく)、衛生上も問題があり、従業員の教育も行き届いていないお店なのだな」と考えるので、名誉権侵害の問題となるのです。
すなわち、このような投稿の場合には、単なる個人の意見や感想を超えて、事実を適示した上で当該飲食店の社会的評価を低下させるといえるのです。
この辺りの線引きは、表現の自由とのバランスから非常に判断が難しく、感情的になって削除を求めてもうまくいかないことが多いので注意が必要です。
5 Googleの口コミ削除を弁護士・法律事務所に依頼するケースについて
以上のように、Googleの書き込みを削除する方法にはいくつかのパターンがあります。Googleを通じての削除依頼はどなたでも申請自体は容易にできますが、肝となる権利侵害の説明を十分に行うためには弁護士への相談や依頼は非常に有益だと思います。
また、裁判所への仮処分の際には、Googleへの申請と異なり、一気に専門的な手続きが必要になるのでいよいよ弁護士への依頼はほぼ必須になると思います。
以上を念頭に、Googleの口コミへの対応をしてみて頂いたらと思います。
執筆者:弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)
1979年 東京都生まれ
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山県倉敷市に岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更
2022年 香川県高松市に香川オフィスを開所
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山県倉敷市に岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更
2022年 香川県高松市に香川オフィスを開所