この記事を書いた弁護士
代表弁護士 呉 裕麻(おー ゆうま)
出身:東京 出身大学:早稲田大学
2008年に弁護士登録後、消費者案件(出会い系サイト、占いサイト、ロマンス詐欺その他)、負債処理(過払い、債務整理、破産、民事再生)、男女問題(離婚、不倫その他)、遺言・遺産争い、交通事故(被害者、加害者)、刑事事件、インターネットトラブル(誹謗中傷、トレント、その他)、子どもの権利(いじめ問題、学校トラブル)、企業案件(顧問契約など)に注力してきた。
他にも、障害者の権利を巡る弁護団事件、住民訴訟など弁護団事件も多数担当している。
*近場、遠方を問わずZOOM相談希望の方はご遠慮なくお申し出ください。
*この記事の内容を分かりやすく動画で解説しています。複雑な記事の理解にお役立てください。
このコラム記事では、最近、全国で増えている占いサイトによる詐欺被害に遭った人に向けて、具体的にどのようにしたら返金を受けられるかを、実例を含めて解説をしています。悪質な占いサイトの被害に遭った際に、返金の可能性を知りたい方、可能な限り高額での返金を実現したい方はぜひご参照ください。
1 占いサイトとは何か?
占いサイトとは、スマホやパソコンなどを通じてネット上で占いサービス、鑑定サービスを提供するウェブサイト上のサービスのことです。
誰でもスマホで簡単に利用できることや、「無料鑑定」などと謡われており、一定の範囲で、無料でサービスを受けられることから広く普及するようになりました。
このような占いサイトについては、サービスの提供者側であるサイトの運営者、運営会社が実際に鑑定士、占い師を雇い、個別の顧客の属性や状況に応じた鑑定(金運、健康運、その他の悩みなど)を実施しており、かつそのための課金や対価が相当であれば何ら問題のないサービスということができます。
しかし、中には「占い」「鑑定」と称し、実際には占いも鑑定もしていない業者や、必要もないのに意味のない言葉や数字の羅列などを頻繁に送信させたりする業者が存在します。
前者は当然、そもそも占いや鑑定をしていない(場合によっては、まったく同一の「鑑定内容」や「占った結果」を複数の利用者にメール送信しているケースがあります。)以上、詐欺に該当し、利用代金の返金を求めることができます。
後者も同様に、占いや鑑定と称してただ単にメールでのやりとりを増やすためにやたらと意味のない文字や内容を入力させ、それらをメール送信や返信をさせようとしているものですから詐欺に該当し、返金を求めることができます。
したがって、占いサイトの利用においては、利用を考えているサイトがこれらの悪質な詐欺サイトではないか本当の占いサイトかどうかを消費者が自らしっかりと見極めること、見分けることが大切です。
ところが、これら悪質な詐欺サイトである占いサイトの巧みな詐欺手法に騙され、多額のお金をつぎ込む詐欺の被害のトラブルに遭う人が非常に増えてしまっているのです。当事務所でも本コラム作成の2023年以前から、継続して多数の被害相談が寄せられている状況です。
このような事態を踏まえ、独立行政法人国民生活センターでもトラブル回避のための注意喚起がなされています。
2 占いサイトによる詐欺の手口は?
(1)無料鑑定から有料鑑定への誘導とその手口
以上のような、当初から詐欺を目的とした占いサイトは巧妙な手口で利用者を騙し、多額の金銭をせしめています。その特徴や手口の流れは以下のとおりです。
すなわち、まずはスマホのLINEやアプリなどに表示される広告を通じて「(初回)無料鑑定」を謡い、これが届いた利用者に利用登録をさせます。
そして、当初は謳い文句通り無料で運気や運勢の鑑定を実施しますが、その鑑定結果を踏まえてさらに次の鑑定結果を聞きたいとかいう場合には有料会員登録を求めるのです。その際、占いサイトは利用者との頻繁なやり取りを通じ、サイトへの依存度を高めていくのです。また、一つのサイトの利用を契機にして次々と新しい占いサイトへも複数の登録をするケースが多く、そうなると被害は雪だるま式に膨れ上がります。
そうして、有料会員登録をさせた後、占いサイトの鑑定士を名乗る者からは「あなたは特別に運気(運勢)が絶好調」「これを維持するためには次の言葉を送信して欲しい」「多額の宝くじ当選の気運が見える」「当選番号は〇〇〇で、最後の数字を見るために△の方角を向いて次の呪文を送信して欲しい」「運気が悪いのでこれを改善するためには××という言葉を10回送信する必要がある」などという根拠不明なメッセージが届くようになります。
この点、上記で引用した国民生活センターのHPでも、以下のような事例が上がっていたので併せてご参照ください。似たような内容、同じ内容のメールが自分や身内にも届いていると思ったら、すぐに被害相談をしてください。
【国民生活センターでの事例・引用】
スマートフォンで「無料鑑定」との広告を見て、占いサイトに生年月日を登録した。その後鑑定士から「無料で鑑定する」とメッセージがあった。私を守ってくれる三つの「徳」を授けてもらえるとのことだったが、三つ目の「徳」をなかなか授かることができない。占いサイトの無料鑑定期間が過ぎて、メッセージを送信するためには有料のポイントが必要になり、毎日のようにプリペイド型電子マネーでポイントを購入してやりとりを続けた。途中で鑑定をやめようとすると引き止められ、高額なお金を支払ってしまった。返金してほしいが、どうしたらいいか。
このような鑑定結果を受けて利用者は、たとえばまさか自分に高額当選が当たるのかなどと有頂天になり、言われるがまま、メッセージを送信し、やり取りを繰り返すのです。また、時には自分の最悪の運勢に不安を覚え、これに悩み、これを改善するために言われるがままにメール送信を繰り返すのです。
ところが、利用者は、いくらメッセージの送受信を繰り返しても鑑定士がいうような宝くじ当選番号を教えてもらったりすることはできず、結局、自分の財産を使い果たすまでやりとりを繰り返すだけです。占いサイトからは、利用者から少しでも利用料を多く騙し取ろうと、執拗にやりとりを求め続けてきます。
(2)占いサイトの利用料について
こうした占いサイトの利用料は基本的には、最初の有料会員登録料と、引き続くメッセージの送受信料金です。
会員登録料は1,000円程度のことが多く、この程度ならと考えて登録をする方が多いようです。
メッセージの送信料は1通あたり1,500円前後のことが多いですが、占いサイトによりまちまちです。そして、メッセージの送信を行うためには予めサイトで使える必要なポイントを電子マネー、クレジットカード、現金振込などの方法で購入しておくことが必要です。
また、サイトによっては時々、キャンペーンを実施しており、そのキャンペーン期間中であれば割引でポイント購入が可能になったりすることがあります。
3 詐欺被害に気が付いた場合の対応はどうすればよいか?
(1)占いサイト詐欺被害の発覚のきっかけ
占いサイトの詐欺被害は、利用者本人ではなく、家族からの指摘によって発覚することが少なくありません。というのも、本人はある意味で「占い」「鑑定」に夢中になっており、「あと少しで鑑定の結果が得られる」「もうちょっとで当選番号が分かる」などと錯覚してしまっており、まさか自分が詐欺に遭っているとのまともな判断ができずにいるからです。
このような状態に陥っている本人を、冷静な家族が咎め、弁護士への相談に繋がるケースが非常に多いのです。
(2)詐欺被害発覚後にどう対処すべきか?
詐欺被害に気が付いた後には、まずは最寄りの消費生活センターに行くか、占いサイト被害救済に詳しい弁護士に相談に行くことをお勧めします。
その上で必要に応じ、弁護士への依頼をし、必要な手続きを経て事案の解決をすることをお勧めします。当然、時間はかかりますが、詐欺被害の回復のために必要な手続きなのでご理解いただけたらと思います。
そもそも、占いサイトの被害救済は、当事者では解決しないことが多く(サイト運営会社が当事者本人との交渉には応じないとか、そもそも占いサイトの運営会社がどこかを個人では特定するのが難しいことがあります。)、そのためこの分野に詳しい弁護士の力が重要になるのです。
経験のある詳しい弁護士であれば、詐欺を行っている占いサイトかそうでないサイトかの判断も可能ですし、その運営会社の所在地などの調査も可能です。
中には詐欺ということで警察に出向く方もいますが、いきなり警察に相談をしたとしても、詐欺事件としての立件をしてくれることはほぼありません。
また、相談に先んじて、当然のことですが使っていた占いサイトはそれ以上使わないようにしてください。いくらやりとりを続けても被害が膨らむだけですのでご注意いただきたく思います。
ただし、サイトの利用を止めるだけであり、その時点で慌てて退会処理をすることはしないようにしてください。
その理由は、退会してしまうとそれまでのやりとりの内容(=詐欺の内容)を証拠として残すことが困難になってしまうためです。そうすると、詐欺被害金の取り返しが困難となりかねないので注意が必要です。
退会をしない結果、その後もメールが届きますが、いたずらに反応はせずに静観していただくことが最善です。
(3)証拠の収集をどうすれば良いか?
占いサイトによる被害は詐欺被害なので、詐欺の概要を証拠として残すことが大切です。
具体的には、鑑定士やサイトとのやりとりのメール、支払いをした際の明細(クレジットカードの利用明細、電子マネーの購入明細、銀行振り込みの明細)を残すようにしてください。特に、サイトでのメールのやりとりは日数の経過によって自動的に古いものが消去されることがあるので注意が必要です。
4 返金を受けるにはどうすればよいか?
(1)そもそも占いサイトからの返金を受けることはできるのか?
占いサイトによる詐欺が発覚したとしても、実際に、そのようなサイトや運営会社から返金を受けることができるのかが気になる方も多いと思います。
この点、占いサイトの運営会社も結局は事業として当該占いサービスを提供しており、(その実態は詐欺であるものの)そのサービス提供を継続しようとしていることは事実です。そのため、利用者から返金を求められると、一定程度、返金に応じることが多いのが実情です。
すなわち、すべての返金要求に常に満額で返金をするとは限らないものの、資金の許す範囲で返金に応じることが多いのです。
そうすることでこのような占いサイトは、事業の継続を図りつつ、次々と詐欺の被害者を食い物にしていくのです。
(2)返金を受けるための具体的な方法は?
返金を受けるための具体的方法としては、誰を相手方として求めるのか、またどういう方法をとるかによっていくつかのパターンがあります。
【サイトの運営会社を相手にする場合】
この場合には、サイト運営会社に対して直接、示談交渉もしくは訴訟の方法で返金を求めることとなります。
その際、サイトの運営会社情報は、占いサイトの「特定商取引法上の表記」というページを見ることで確認できることが通常です。もしくは、当該サイトの名前をネット検索することで得られることがあります。
こうして分かった運営会社に対して内容証明郵便を送る、メールでやりとりをするなどの方法で示談交渉を開始するようになります。
また、支払い方法が銀行振り込みの場合には、振り込め詐欺救済法に基づく口座凍結の方法により、送金先となった口座を凍結することで被害金を回収することも可能です。その際、口座凍結の後にサイト運営会社から連絡がきて、早期に全額返金の解決に至ることも多々あります。
以上のようにして示談交渉を試みたものの、やはり示談での解決が無理となった場合には、訴訟を起こすことをご検討ください。
【カード会社を相手にする場合】
占いサイトの決済方法でクレジットカード決済がある場合には、カード会社ないし決済代行会社を通じて返金ないし利用したカード代金のキャンセル処理をしてもらうことで解決する余地があります。
この場合、カード会社に、占いサイトの利用により詐欺被害にあったことの詳細を証拠に基づき説明をし、利用したカード代金のキャンセルを求めるようになります。
占いサイトは通常、クレジットカード会社と直接の契約をしておらず、決済代行会社を通じてクレジットカード決済をしているため、決済代行会社からキャンセルの申し出が出ていることの連絡を受けると、これに応じることが通常です。
そのため、クレジットカード決済の場合には、その他の決済方法の場合よりも返金を受けられる確率が高いのが通常です。
【電子マネー発行会社を相手にする場合】
支払い方法として電子マネーを利用していた場合には、電子マネー発行会社を相手に返金交渉をすることとなります。
この場合にも、電子マネー発行会社に対して、占いサイトにより詐欺被害にあったことの主張と証拠を提出し、電子マネー発行会社から占いサイト運営会社に対して返金対応に応じるように求めてもらいます。
占いサイト運営会社は、決済手段としての電子マネーを利用し続けるために、電子マネー発行会社からの要望には応じることが多く、その結果、返金に繋がることが多々あります。
(3)示談交渉や訴訟の違いは何か?
以上の各相手方への返金のための手段としては、示談交渉もしくは訴訟があります。基本的な解決までの流れとしては、まずは示談交渉で話を進め、うまく行かない場合には訴訟を選択することが大半です。
示談で解決するか訴訟になるかの見極めとしては、相手方会社が具体的にどの程度の返金に応じてくるかによります。これは相手方会社の資金力や弁済資金の有無によって大きく異なる点なので、無数にある占いサイトのうち、どのサイト運営会社であればどの程度の対応になるか、ケースバイケースと言わざるを得ません。
その上で、訴訟にするかどうかを見極めることとなりますが、その見極めは容易ではありません。
すなわち、訴訟になると裁判所からは、過失相殺により大幅な減額をされることがある点、注意が必要であり、訴訟になったとして必ずしも回収額が増額するとは言い切れないからです。
この点、詐欺被害に遭ったにもかかわらずこちらにも過失があるとする過失相殺の主張には到底納得できませんが、現状、占いサイトを始め、サイト被害の裁判では一定割合で過失相殺が認められてしまっているのが実情です。
5 返金を受けた実例について
当事務所ではこれまで多数の占いサイト被害の救済にあたってきました。また、岡山出会い系等被害対策弁護団の立ち上げをし、その事務局も担っております。
403 Forbidden
そうした中、担当した案件のうちいくつかについては解決事例を公表しています(サイト運営会社との示談の際に口外禁止条項を付けることがあるため、そうした形で解決した事例については公表できていませんので、公表した事例以外にも多数の取り扱いがあるとご理解ください。)。
参考に以下、その一例を挙げておきます。なお、上記弁護団のウェブサイトにも多数の案件の解決事例が掲載されています。
【当事務所で対応した事案の解決事例】
占いサイトの「鑑定士」から、多数回にわたるメール送信を指示され、ポイント料を多額に支払った事案
【相談者】 70代 女性 女性
携帯電話のメールアドレスにとあるサイトからメールを受信し、アクセスしたところ、鑑定士なる人物から、多数のメールが届くようになった。
運気を上げるために必要などと言われ、特定の言葉や数字を何度も送信するように指示をされた。
その都度、ポイント料が必要になり、支払ってしまった。
占いサイトの鑑定士と称して頻繁にメールを送信するよう求めるものです。 メールを送信する都度、サイトのポイント料が必要で、かつメールを送信することと運気が上がることの繋がりも希薄でした。 弁護士介入後、送金先口座を凍結し、サイト会社と交渉をしました。 その結果、被害金額全額の返金にて合意ができました。
【被害額】 約110万円
【回収額】 全額
【手段】 口座凍結+交渉
6 占いサイトから被害金を回収するための弁護士費用は?
当事務所は、岡山出会い系等被害対策弁護団の事務局を担っており、弁護士費用についても同弁護団の統一基準にて対応をしております。
そのため、まず占いサイトの被害相談は相談料自体が無料です。また、受任に際しても、1サイトあたり22,000円(税込み・示談交渉)の着手金でのご依頼が可能となっています。
通常の民事事件などでは、着手金を数十万円程度頂くことが多いところ、詐欺被害に遭い、すでに手持ちのお金をサイトにすべて課金してしまっている人が多いことから、被害救済のために着手金を低額に設定しているものです。
そのため、悪質な占いサイトからの返金が実現するのかどうか、不安が強い方でも比較的気軽にご依頼が可能といえます。
執筆者:弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)
1979年 東京都生まれ
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山県倉敷市に岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更
2022年 香川県高松市に香川オフィスを開所
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山県倉敷市に岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更
2022年 香川県高松市に香川オフィスを開所