リベンジポルノ防止法に該当するケースについて


この記事を書いた弁護士
代表弁護士 呉 裕麻(おー ゆうま)

出身:東京  出身大学:早稲田大学
2008年に弁護士登録後、消費者案件(出会い系サイト、占いサイト、ロマンス詐欺その他)、負債処理(過払い、債務整理、破産、民事再生)、男女問題(離婚、不倫その他)、遺言・遺産争い、交通事故(被害者、加害者)、刑事事件、インターネットトラブル(誹謗中傷、トレント、その他)、子どもの権利(いじめ問題、学校トラブル)、企業案件(顧問契約など)に注力してきた。
他にも、障害者の権利を巡る弁護団事件、住民訴訟など弁護団事件も多数担当している。

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1 リベンジポルノ防止法とは

リベンジポルノ防止法とは、その正式名称を「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」といいます。

この法律は、「私事性的画像記録の提供等により私生活の平穏を侵害する行為を処罰する」などし、「個人の名誉及び私生活の平穏の侵害による被害の発生又はその拡大を防止することを目的とする。」とされています(リベンジポルノ防止法1条)。

そして、私事性的画像記録の提供等に対して刑事罰の規制を課しているのです(リベンジポルノ防止法3条)。

これは、とりわけ交際関係にあった男女が交際終了後などに交際相手から交際中の自分の性的な写真や動画をネットに公開されることで被る被害の防止を意図して成立したものです。

以下、ここではかかるリベンジポルノ防止法の刑事罰の対象行為などをご説明いたします。

2 規制対象となる画像記録等について

(1)はじめに

リベンジポルノ防止法においては、「私事性的画像記録」もしくは「私事性的画像記録物」を不特定又は多数の者に提供するなどする行為を規制対象としています。

そのため、まずはこの「私事性的画像記録」及び「私事性的画像記録物」とは何かを明らかにする必要があります。

(2)「私事性的画像記録」とは

私事性的画像記録とは、以下の(1)~(3)の電子情報(いわゆる電子データ)のことをいいます。

要するに性的な内容の画像データのことと思ってください。

(1)性交又は性交類似行為に係る人の姿態(リベンジポルノ防止法2条1項1号)
 →たとえば性交渉そのものや、手淫や口淫行為などの状況を撮影した画像データ

(2)他人が人の性器等を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの(リベンジポルノ防止法2条1項2号)
 →性器、肛門又は乳首を触る行為などの状況を撮影した画像データ

(3)衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位が露出され又は強調されるものであり、かつ性欲を興奮させ又は刺激するもの(リベンジポルノ防止法2条1項3号)
全裸又は半裸の状態で扇情的なポーズをとらせている状況を撮影した画像データ

(3)「私事性的画像記録物」とは

「私事性的画像記録物」とは、写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって、前項各号のいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像を記録したものを言います(リベンジポルノ防止法2条2項)。

すなわち、上記(1)から(3)を撮影したデータを記録したUSBメモリや、上記(1)から(3)のデータを印刷した写真などのことです。したがって、「私事性的画像記録」と「私事性的画像記録物」とは、電子データか有体物かの違いと思ってください。

3 規制対象行為について

(1)私事性的画像記録公表罪

以上の規制対象となる画像記録等について、一定の規制対象行為を行うと、刑事罰の対象となります。

まず、「第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」とされています(リベンジポルノ防止法3条1項)。

これは、上記の私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供したことを刑事罰の対象とするものです。当該私事性的画像記録から、撮影対象者が誰かが特定できることが条件となっています。

(2)私事性的画像記録物公表罪

次に、「前項の方法で、私事性的画像記録物を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者も、同項と同様とする。」とされています(リベンジポルノ防止法3条2項)。

こちらは、有体物である「私事性的画像記録物」を提供するなどした場合の規制であり、「私事性的画像記録」の場合と異なり「公然と陳列」する行為も規制対象となっています。これは、写真などを陳列するなどする行為が想定されています。

(3)公表目的提供罪

最後に、前項までの行為をさせるために、私事性的画像記録や私事性的画像記録物を提供することもまた規制の対象となっています(リベンジポルノ防止法3条3項)。

4 リベンジポルノ防止法についてのまとめと境界事例や投稿内容の削除について

以上のように、リベンジポルノ防止法は、一定の写真や電子データを公表するなどする行為が規制対象となっています。

昨今、スマートフォンの普及により、他人の写真を容易に撮影し、容易にネット上に流出、拡散することが可能となっています。

その結果、一時恋愛関係にあるなどした間に撮影した写真や動画を、後に腹いせや復讐、嫌がらせのために流出させることで、これをされた側の名誉やプライバシー、羞恥心が酷く害されるケースが増えているのです。

そのため、上記のように一定の写真やデータについて、規制の対象としている反面、写真の送信などは個人の自由の問題でもあることから、あらゆる写真やデータの送信までもが規制の対象とはなりません。

したがって、単に自分が持っている裸でも何でもない写真をネット上に流すだけではリベンジポルノ防止法の規制は及ばないのです。そのため、何がリベンジポルノ防止法の規制対象になるかどうかは厳密な判断が重要となります。

また、これらの問題とは別に、投稿された写真や動画を削除したいという場合には、別途、プライバシー権を根拠としてその削除を投稿された媒体に求める必要があります。

その場合の必要な手続きの流れなどは以下のページをご参照ください。

執筆者:弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)
1979年 東京都生まれ
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更
2022年 香川県高松市に香川オフィスを開所

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