被相続人の死亡により相続が生じると、概ね次のような流れで遺産分割が行われます。
(1)遺言の有無の確認
遺言は被相続人によるその財産に対する最終意思の表明です。そのため、遺言があればこれに基づき遺産の処理が行われることとなります。よって、遺言の有無やその方式(自筆か否か、公正証書か否かなど)の確認が重要です。場合によっては遺言の効力が有効か否かも問題となるのでその確認も重要となります。
(2)相続人の確定
遺言があり、その効力に問題がなければその内容に従って遺産を処理することとなります。他方でこれがないとか、無効である場合には法定相続人間で遺産分割を行うこととなるので、誰が相続人かを確認することとなります。これは戸籍に基づき確認をすることになるので、すべての戸籍の取り付けが必要です。
時折、戸籍を調べたところ、自分の預かり知らない他の相続人(婚外子など)が戸籍から明らかになることもあり、戸籍による確認は必須です。
(3)遺産の確定
被相続人の遺した遺産をすべて洗い出し、確定することが必要です。遺産としては預貯金、株、投資信託、土地建物、車、貴金属類、その他家財などが主なものとなります。これらについて、たとえば預貯金であれば残高証明書や通帳などを土地建物であれば登記簿謄本を取り付けるなどの必要があります。
(4)遺産分割協議の実施
以上の確定を経て、相続人間で「誰がどの遺産をどの程度取得するか」を話し合うこととなります。その際、特別受益や寄与分があればこれらについても協議の対象となります。そして、協議の結果がまとまれば遺産分割協議書を作成することとなります。
(5)遺産分割調停と審判
上記の協議によっても遺産分割の内容が決まらない場合には、遺産分割調停を申し立てることとなります。遺産分割調停は相続人全員で行うこととなり、裁判所の調停委員を通じて遺産分割の内容について話し合いを行うこととなります。
そして、調停で話し合いがまとまれば調停成立となり、まとまらなければ審判ということで裁判所がありうべき遺産分割の方法をまとめてくれます。
(6)遺産分割と弁護士への依頼
遺産分割の手続は上記のとおり、必要書類の取り付け、内容の整理、法律に基づく権利内容の確定、相手方との交渉、裁判所への申立てや調停委員を通じた説得や交渉という側面があり、その解決のために相当の期間がかかることもあります。すなわち、遺産分割の問題が生じてから解決までに数年、10数年、数十年を要することも多々あるところです。
特に相続人が多数の場合、連絡が付かない相続人がいる場合、自己の権利に執拗にこだわる相続人がいる場合、遺産の内容が多岐にわたる場合、換価し難い遺産がある場合(耕作放棄地や活用性の乏しい山林など)には解決まで長期化することが多いです。
そのような問題を含む遺産分割に際しては弁護士を入れることで少しでも早い解決に繋がります。
執筆者:弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)
1979年 東京都生まれ
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山県倉敷市に岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更
2022年 香川県高松市に香川オフィスを開所