モラハラ夫(妻)と離婚するために必要な準備について知りたい。

モラハラ夫(妻)と離婚をするためには、事前の準備が重要です。その際、どんな準備が必要か、モラハラ離婚に詳しい弁護士のこのコラム、解説をぜひ参考に、その後の離婚を検討なさってください。正しい知識に基づき、できるだけ負担は少なく、できるだけ簡単に、できるだけ有利に離婚を実現する一助となればと思います。なお、最近では夫婦間の力関係は多様であり、モラハラ離婚を求めるのは女性に限らず、男性からの相談も増えています。

1 はじめに

モラハラ(モラルハラスメント)をする相手である夫(妻)と離婚をするためには、事前の周到な準備と覚悟が必要です。「相手からのモラハラがあるから」と言って気軽に離婚を決めては思うような結論に至りません。

その理由は、そもそもモラハラという概念が非常に抽象的かつ程度問題であり、かつモラハラの証拠を残すことや集めることがとても大変であることと、モラハラ夫(妻)との離婚を決意したにもかかわらず、万が一にでも離婚が成立しなければまたおぞましいモラハラ被害が継続すること、続けることを意味するからです。

この点、そもそもモラハラ夫との離婚は本当にできるのか?について別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。

そして、このコラムではモラハラの相手と離婚するための準備ないし手順として必要な以下の事柄について順次、解説をしていきます。これらの事柄のうち、自分が抱えている現状の悩みはどれとどれなのかを確認し、その対処法を検討するようにしてください。

(1)別居をする

(2)相談できる、協力してくれる味方を複数作っておく

(3)経済的に自立する

(4)モラハラ夫(妻)との連絡を絶つ

(5)モラハラの証拠を詳細に残す(集める)

(6)モラハラ以外の離婚原因を用意しておく

(7)何が何でも離婚をすると強く決意する

以下、順に説明をします。

2 (1)別居をする

モラハラ加害者との離婚に向けて事を進めるためには、とにかくそれ以上のモラハラ加害を防ぎ、加害者との距離を作ることが大切です。自分はモラハラによる被害者であると認識し、別居を決意して下さい。

モラハラに限らずあらゆる離婚の事案で多いのが、同居をしたまま離婚の協議や調停、裁判を継続することの心身に対する負担です。

当然、家庭内における暴言や無視など態度を典型としたモラハラの事案であれば同居の負担は一層強くなる傾向にあります。

そのためモラハラ被害を理由として離婚をするのであれば、離婚の意思を告げる以前にとにかく安全な生活を送れる場を確保して引っ越しの上で、いち早く別居に至ることが重要です。

その上で、離婚のための話し合いや協議、交渉をしたり(協議離婚)、調停などの手続きをとること(離婚調停)が離婚の可能性を高める結果につながります。

言い換えると、モラハラを理由とした離婚に向けた第一歩は、モラハラ行為の被害の場から逃れて自分や子どもの身の安全を確保することにあります。

さらに言うと、モラハラで離婚を悩んでいる方に多いのは様々な事情から離婚に向けての別居が困難であり、実現できない点にあります。すなわち、住んでいる家がいつまでも同じだといつまでもモラハラから逃れ、離婚を勝ち取れないのです。

当然、子供の学校のことなどもあると思います。引っ越す先の家をどう確保するかも問題です。そのため、別居の可否や当否は当事者や子どもに対する影響を考えると、非常に悩ましい問題であることは確かです。

とはいえ、モラハラから逃れ離婚をするには別居が必要なこともまた明らかです。

なので、モラハラでの離婚をスムーズに、できるだけ早く実現するためにはこの別居がとても重要だといえます。

当事務所でもモラハラに限らず離婚のご相談をお受けした際には何かの方法で別居をすることを強くおすすめしています。

なお、その際の注意点として、転居届けを市役所に提出し、住民票をあえて引っ越し先に移したり、相手方に伝えたりする必要性はありません。これを知られてしまうと相手が訪問をされるなどのリスクが生じてしまいますからすぐに住民票を移してもらう必要はありません。住民票を異動しなかったことが離婚自体に関し、法的に問題となることはありません。

とにかく大切なことは、それぞれが別の世帯で生活を送るようにするということなのです。

3 (2)相談できる、協力してくれる味方を複数作っておく

別居をすることの次に大切なことは、相談できる人、協力してくれる人を複数作っておくことです。

そして、これは別居以前から行っておくべきことです。

モラハラの相手は、自分にだけ攻撃的で周りの者にはいい顔をするタイプの人が少なくありません。また、例えば夫が妻に対してモラハラをするケースであれば、夫は妻が専業主婦でいることを強要したり、その行動を過度に制限し、友人や知人との連絡や接触を制限することも少なくありません。

そうするといつの間にかモラハラにより自分と周囲との接点は奪われてしまい、気が付いたら自分だけが孤立していることも少なくないのです。そのような状況から自分一人の力で離婚を実現することは容易ではありません。

そこで、まずは身近な人に相談を出来るようにし、受けた被害についても詳細に聞いておいてもらえるようにしておくと良いでしょう。

モラハラ加害者は第三者には良い顔をするタイプの人も多く、そのため、モラハラの詳細や特徴を予め知っておいてもらうことでいざという時のための一緒に対策してくれる味方を増やしておいてください。

そのことが自分の精神の安定を図るためにも大切ですし、離婚しやすくするためにも必要です。

たとえば自分の実家の父母であっても、モラハラの詳細を知らなければ自分の子どもがその配偶者からモラハラの被害に遭っているなどと思いもしないこともあるのです。そうなるといざ離婚を決意して実家に身を寄せて支援を受けようと思っても、うまく受け入れてくれないとの結果にもなりかねません。

また、親族や友人以外でも、たとえば暴力・DVを伴うモラハラであれば警察に相談をしておくことも良いと思います。

他にも当然、法律の専門家である弁護士への相談も非常に有効です。弁護士への相談は、モラハラ夫(妻)との離婚を考え始めた時点で一度はしておいて損はないでしょう。

というのも、モラハラの実態を理解するのは弁護士と言っても容易ではないからです。モラハラは通常、長期間・長年の夫婦生活におけるひとつひとつの言動の積み重ねにより形成されますが、その詳細を一度や二度の相談ですべて把握することまでは弁護士であっても容易でないということです。

その他、幼稚園や保育園、学校などには事前に相談をし、事実を告げ、情報も提供した上で別居の予定であることを説明しておいてください。そうしないと別居後にモラハラ夫(妻)が保育園や学校に訪れて先生に良い顔をし、子を連れて帰ってしまうということが生じかねません。子を連れ去られた後にその取り戻しをすることは経済的にも精神的にも大変な負担を伴いますので十分に注意が必要です。

いずれにしてもモラハラの事案においては、自分が夫婦生活の中で受けた被害の詳細をいかに周りに理解してもらうかが重要です。その上で自分の味方や協力者を増やすようにしてください。

4 (3)経済的に自立する

これは経済的なモラハラ夫(妻)から逃れるためには特に重要なポイントです。日ごろから十分な生活費を渡さないとかお金の管理が異常に細かいモラハラ夫(妻)の場合、別居後にもこれを続け、婚姻費用を十分に渡してこないという可能性があります。

そうした場合、たとえ別居後に婚姻費用の調停や離婚調停を申し立てたとしても、結論が出るまであれこれと条件を付けてきてダラダラと調停を長期に渡り引き延ばしされたり、結論が出てからも支払ったり滞ったり(わざと)することで経済的にこちらをじわじわと追い詰めようとするのです。

したがって、別居前から自分の収入をきちんと作る、貯金を管理する、親やきょうだいに当面の資金を用立ててもらうなどの方策をしっかりと考えて、経済力を確保しておいてください。

その際、夫婦の共有財産を持ち出して一時的に自分や子どものための生活費、弁護士費用に充てることも可能ですのでそのような方法も検討してください。夫婦共有財産から生活費等を支出したとしても、最終的には離婚調停や離婚裁判の際に財産分与として解決が可能なので過度に心配をすることはありません。

なお、相手方からは、面会交流をさせないと婚姻費用は支払わないとの主張が良くなされますが、面会交流と婚姻費用は別問題なのでこのような主張に応じる必要はなく、面会交流は面会交流として別途、家庭裁判所の調停などできちんと協議をすればよい問題です。

したがって、面会に応じないと婚姻費用を支払ってもらえないのではないかと過度に心配する必要はありません。少し時間がかかることはあるかもしれませんが、確実に婚姻費用を支払ってもらうことが可能です。

他にも、妻側から別居をしたような場合に夫から、「別居をしたのは自分の意思によるものだから婚姻費用を支払う必要はない」との主張が出されることがあります。

しかしこれも理由にはなりません。民法の規定では、法律上の婚姻関係にある夫婦であれば当然に婚姻費用の支払い義務があるとされているからです。

5 (5)モラハラの証拠を詳細に残す(集める)

離婚に際してモラハラの主張をすると決めた以上はその立証、証明のための証拠が極めて重要です。

たとえば録音、録画、LINEの内容、写真、日記、診断書(心療内科などへの受診もご検討ください)、警察への通報記録、家族や知人の証言(陳述書)などが典型的な証拠方法です。

したがって、モラハラ離婚を勝ち取るために、これらの証拠をしっかりと確保し、その証明の資料とするようにしてください。これら証拠により、自分が被害者であること、離婚を求めるのが正しいことを十分に証明できることとなります。

その際、モラハラは日々の言動(言葉や行動)の積み重ねなので、モラハラ該当性の証明のために、これら証拠は複数の種類を多数集めた方が適切ですし、有利に事が進みます。。

とりわけモラハラ夫(妻)は、周到に知識を用意し、かつ家庭外の第三者には良い顔をしたり言葉たくみに説明をするタイプの人間が多いので、調停委員や裁判官、モラハラ夫(妻)の依頼した弁護士や被害者の依頼した弁護士にも上手に取り入ることが得意です。

そうした状況で自分が受けたモラハラ被害をしっかりと主張し、かつ確保した証拠(メールやLINE、日記や医師による診断書など)に基づき裏付けをもって説得できればきっと調停委員や裁判官、代理人弁護士を味方にすることができると思います。

なお、上記証拠はそもそも何をどう探し、集めたらよいかの判断も容易ではありませんし、事案によって内容や程度が千差万別になりますし、その判断も難しいので、「この程度の証拠で足りるのだろうか?」と不安に感じたり悩んだりしたら、その時点ですぐに離婚に詳しい弁護士に相談をしてください。

離婚弁護士の目線にて、客観的に手元の証拠による離婚の可否や慰謝料請求の可否ないし額を丁寧にアドバイス可能です。

6 (6)モラハラ以外の離婚原因を用意しておく

モラハラ被害がいかに悪質でも、そもそもモラハラが程度問題の側面を持つこと、まだまだモラハラに対して調停委員や裁判官の理解が十分でないこと、上記のように証拠を残すことが容易でないことからモラハラを理由に離婚を考えたとしても、モラハラだけを離婚原因として協議離婚、離婚調停、離婚裁判に挑むことは避けた方が良いです。

モラハラ加害者は、自分の加害を正面から認めることはまずないので、いざ実際の交渉の場面に移っても、離婚原因を否定したり、過剰な条件(急に親権争いをしてきたり、過剰な面会交流を求めてきたり、不当な財産分与の条件を提示してきたりなど)を突き付けてきたりして話し合い自体がまともに進まないことも多々あります。

そうした中、残念ながら離婚調停や離婚裁判に手続きを移したとしても、実際の裁判例でもモラハラを正面から認めて離婚や慰謝料に結び付ける事例はそう多くはないのが実情です。

そして、モラハラのみで離婚をしようとした場合、冒頭でも述べたとおり、仮にモラハラの主張が排斥された場合に、最悪の結果に繋がりかねません。

そのため、モラハラ以外でも離婚が認められるよう離婚原因を複数用意をしておくべきです。その際、単なる性格の不一致や性生活の不一致という程度ではそれはそれで離婚原因として不十分なので注意が必要です。やはり離婚原因として通り易いものとしては、配偶者からのDVないし暴力、配偶者の不倫や浮気、長期間の別居などが挙げられます。

7 (7)何が何でも離婚をすると強く決意する

モラハラ夫(妻)との婚姻生活は毎日が苦痛の日々だと言えます。人格を否定され、些細なことで責められ、あたかも自分が悪いかのように言われ、心身の不調を来し、子どもにも悪影響を及ぼすのが通常です。

なので、もう二度とこのような生活には戻らないとの強い覚悟を持って離婚を進めて頂きたいと思います。悩ましいとは思いますが、「ひょっとしたら相手の態度が変わるかも」とか「元の生活の方が子どもにとっては良いのかも」と考えることは良くありません。

いずれにしても、モラハラによる離婚を考えた際には、決して自分一人で解決をしようとせず、気軽に友人や家族、場合によっては離婚問題とりわけモラハラ離婚の取り扱い経験のある弁護士に相談をし、アドバイスを受けることがスムーズな解決に繋がります。モラハラで悩んだ際には離婚弁護士への相談が、非常に大きなメリットを生むことは間違いがいありません。

執筆者:弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)
1979年 東京都生まれ
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更
2022年 香川県高松市に香川オフィスを開所

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