誹謗中傷投稿をしてしまった後の開示請求の流れを教えてください。

1 誹謗中傷と発信者情報開示請求について

ネット上の掲示板やTwitter、Facebook、インスタグラム、Googleの口コミなどで思わず誹謗中傷をしてしまった場合に、自らこれを後悔したり、相手方から開示請求をほのめかされたり、宣言をされたりして、以後、自分に対して発信者情報開示請求が届くのではないかと心配、ご相談をされる方が増えています。
最近では、誹謗中傷に対する発信者情報開示請求が以前よりも容易になり、手掛ける弁護士も増えたことから誹謗中傷を受けた側としても開示請求を行うことが増えています。
そこで以下では、誹謗中傷を受けた場合の発信者情報開示請求の手続の流れを解説したいと思います。
なお、この解説では主に誹謗中傷を行った投稿者の側でどのように発信者情報開示請求の流れが進むかを解説しています。
他方で、誹謗中傷を受けた被害者の側でどのように発信者情報開示請求の流れが進むのかについては別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。

2 発信者情報開示請求の流れ

掲示板などに誹謗中傷投稿をした場合、被害者の側から発信者情報開示請求の手続きが取られると、投稿者側には概ね次のとおりの流れで開示に関する手続きが進みます。
(1)自分もしくは家族が契約しているプロバイダーから開示請求に対する同意不同意やその理由についての意見照会文書が届く。
(2)照会文書に対して開示に「同意をする」と回答すると、プロバイダーを通じて発信者情報開示をした被害者の側に情報開示がなされる。
(3)照会文書に「同意をしない」で回答をした場合でも、プロバイダーが、対象となった投稿について「権利侵害の明白性」を認めた場合、プロバイダーから被害者側に情報開示がされる。
(4)照会文書に「同意をしない」で回答をし、プロバイダーからも任意での開示がされない場合には、被害者側が発信者情報開示請求訴訟もしくは発信者情報開示命令を提起もしくは申立てをする。これはプロバイダーを被告もしくは相手方とする訴訟もしくは非訟手続きのため、投稿者自身はこれら手続きの当事者にならない。
(5)訴訟もしくは決定で開示の結論が出ると、プロバイダーは被害者側に情報開示をする。
(6)上記、(2)、(3)、(5)の結果、情報が開示された後、被害者側から投稿者に対して損害賠償請求がなされる。示談交渉により行われる場合もあれば、訴訟により行われる場合もある。

3 まとめ

以上のとおり、実際に発信者情報が開示されるまでには複数の手続きを経ますが、投稿者に対して直接何らかの連絡があるのは、(6)の段階のみです。
プロバイダーに対して同意をせず、プロバイダーから任意での開示もないと、実際に開示になるまで(1)から(6)まで)の期間としては半年から1年程度経過することもあります。
その意味で、投稿やプロバイダーの照会から相当期間を経てから(6)の損害賠償請求訴訟が起こされることになるので「どうして今さら?」と感じることもあるかもしれませんが、それは上記の理由のとおりです。
執筆者:弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)

1979年 東京都生まれ
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更
2022年 香川県高松市に香川オフィスを開所

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