【財産分与事例】

財産分与に際し、妻のがん保険の保険金の大半を妻のものと認めた裁判例

相談者:40代  女性
婚姻中に妻を被保険者とするがん保険をかけていたところ、妻ががんに罹患したため、当該保険から保険金が下りていた。その後、夫婦の間で離婚問題になったところ、夫がこの保険金は夫婦共有財産であるとして財産分与の対象とすべきと主張をしてきた事案です。

婚姻期間中のがん保険の保険料自体は、確かに夫婦の収入から支払われていたものの、がんに罹ったのは妻であるし、がん保険の保険金自体はがんに罹ったことに伴う生活保障等の趣旨であることから、あくまでその保険金は妻の特有財産であると主張をしました。

一審判決では、保険金のうち7割を妻の特有財産とし、残る3割を共有財産と認定をしました。夫側はこれに納得せず、全額を共有財産であると主張し、控訴に至りました。

二審判決では、保険金が特有財産か否かという論じ方ではなく、保険金の取得に際しての妻の寄与割合は8割であるとし、保険金の8割を妻のもの、2割を夫のものとすべきと認定をしました。

争いの対象 婚姻中に支払われたがん保険金の扱い
一審判決 7割が妻の特有財産、残る3割を共有財産
二審判決 8割が妻の寄与、2割が夫の寄与
通常、解約金の認められる保険金については、婚姻期間中の保険料が夫婦の収入から支払われている限り、別居日などの基準日時点での解約金が夫婦共有財産とされます。

そしてその際、通常は5:5で財産分与されることとなります。

これと異なり本件では、婚姻中に支給されたがん保険の保険金の扱いが争いとなりました。

妻側は、自分ががんになったことに伴う保険金である以上は、自分がこれを取得して当然だと主張をしましたが、夫側は、保険料は夫婦で支出してきたものであるところ、保険金もその対価であるから全額を夫婦共有財産とし、5:5で分与すべきと主張しました。

この問題に対して、一審と二審とで結論に至る理由付けは若干異なるものの、大半を妻のものとしたこと自体には変わりはなく、ほぼ妻側の主張が認められました。
弁護士法人 岡山香川架け橋法律事務所