【遺産問題遺留分侵害額請求(請求する側、される側)事例】

依頼者に一方的に不利な公正証書遺言を踏まえて遺留分を請求した事案

相談者:50代  女性
母が亡くなった後に、兄から公正証書遺言の存在を知らされた。その内容としては、遺産の大半を兄が取得し、依頼者には数十万円の遺産が遺されただけでした。

遺言の効力を含めて相談、依頼となりました。

遺言の効力に関しては、母の遺言能力をカルテや診断書、介護認定記録などに基づいて検討をしたところ、たしかにアルツハイマー型認知症の診断を受けており、ある程度の症状が出ていました。

しかし、その程度としては軽度と言わざるを得ないものであったことから遺言無効の主張はしないこととしました。

他方で遺言が有効だとしても遺留分を侵害していることは明らかだったのでその請求をしました。

遺留分の計算については(1)遺言執行者の報酬をどうするか、(2)葬儀費用をどうするかという問題があり、兄からはこれらを控除した上で計算することを求めるとの主張がありました。

これに対しては、遺言執行者の報酬は遺留分の控除対象とならないことは法律上明らかであること、葬儀費用は喪主負担であるから兄が負担すべきであると反論をしました。

その結果、兄は断念し、依頼者の求める計算通りの遺留分額を支払ってきました。

遺言無効の主張 しない
遺留分侵害額 約200万円
遺言執行者の報酬 控除しない
葬儀費用 控除しない
解決までの期間 約6か月
遺言の存在が明らかになった場合、生前の生活状況などに基づくと本当にその遺言が有効なのか不審に思うことがあるかと思います。

その場合にはまずは調査を経て遺言能力がある状態で作成されたものかどうかを明らかにすることが大切です。

本件では調査の結果、遺言能力が欠けるとまでは言い難いと判断をし、結果、遺留分の侵害についての請求にとどめました。

遺留分の計算に際しては、遺産全体の額から遺言執行者の報酬や葬儀費用を控除した額から計算をするのかどうかが問題となることがあります。

この点、遺言執行者の報酬については民法上、明確に控除対象としないことが規定されています(民法1021条但書)。

また葬儀費用は被相続人の死後に生じる債務であり、喪主と葬儀会社などとの契約に基づく費用であることから喪主負担と考えるのが自然です。

したがってこれらの点を主張し、兄による主張には理由がないことを反論をしたところ、こちらの言い分通りの支払いに至りました。
弁護士法人 岡山香川架け橋法律事務所