津山に「つゝや」というお饅頭屋さんがあります。そこでは「五大北天まんじゅう」というおまんじゅうを売っています。他には商品はありません。
そのおまんじゅうは、なーんにも派手さもなく、目立った特徴もなく、どちらかというと素朴そのもの、シンプルそのもののおまんじゅうです。値段もひとつ55円ととてもお安い。
色はこげちゃで表面はツヤツヤで、形は薄ぺったく、大きさはあかちゃんの手のひらくらい?です。触った感じはプニプニ、ムニムニしていて口当たりは優しく、味は餡子の優しい味と、皮の黒糖の味でとても美味しい飽きの来ないおまんじゅうです。
一度食べたらハマる人も多く、私も津山に行く折にお土産で買って帰ったりしています。
ところが案外、県内の人でもこの北天まんじゅうのことは知らない方も多く、教えてあげるととても喜ばれます。
そんな北天まんじゅうですが、昨日、津山に行く折があったため買って帰ろうとしたところ、なんとこの日は休業日でした。事前に確認をしておけば良かった、とお店の前でがっかりしていたところ、他にも店休日と知らずに買いに来た方が。
その方は、ルンルンとした様子でスキップするように入口に近づくと、店休日の張り紙を見て、肩をがっくり落とし、今度はお店の前で車に乗っていた私に視線を投げかけ、無言のまま大きく両手で×を作ると(店休日なんですね?)というアイコンタクトをとってきました。
そこで私は運転席から首を大きく縦に振ったところ、その方も同じく首を縦に。
二人で北天まんじゅうを買えないことの悲しみを共有したところで、私は立ち去ろうとしたのですが、その方はまだ私に視線を送ってきます。
(きっとこの方は、北天まんじゅうを買えないことの悲しみをより深く、共有したいのだろう。。。)
そう察した私は、助手席の窓を開けると、「今日はお休みみたいですね、、、」と優しく声を掛けました。
「残念です、、、」
その方はそうつぶやくと、やっと決心?諦め?が付いたのか、トボトボと帰っていきました。
様子からするに、ご近所の方ではなさそうです。私のようにたまの用事で津山に来たので北天まんじゅうを買って帰ろう、みんなに配ろう、と思ったのでしょう。
その悲しみを誰かに理解してもらいたく、私にアイコンタクトを送り、両手で×を作り、さらにはまだまだ視線を送り続け、最後の最後に言葉を交わしてやっと気持ちの整理に至ったのでしょう。
それくらいしないと諦めきれないくらい北天まんじゅうは美味しいおまんじゅうなのです。なのでいつかみなさんもご賞味いただけたらと心の底から思っています。
ただ、北天まんじゅうは「ここでしか売っていない」のでネットで買うとかはできません。長く日持ちするものでもないのでその点も含めて、事前に定休日を確認の上でどうぞ津山にてお買い上げいただきたく思います。後悔させません。