秋から冬にかけて新型コロナウイルスの感染が拡大しています。
毎日、各報道で多くの情報が流れています。
そんな中、次のようなコメンテーターの発言がふと気になりました。
「多くの方は自分たちで出来得る対応策をしっかりと実行しているが、そのような努力にかかわらず、新型コロナウイルス対策に何ら意を払わない『一部の方々』たちの行動があるために感染拡大が止まないのだ」(要旨)
この発言で気になるのは、多くの国民は一生懸命にやっているのに、一部の国民がこれを実行しないことが感染拡大の原因という点です。
そもそも、多くの国民が感染防止策をしているかどうかも図りようのない事柄ですし、一部の国民がこれを実行していないということもまた図りようのない事柄です。
それにもかかわらず、何ら配慮をしない不良な一部の国民という層が実態として存在しているかのように作り上げることで、事の原因をその一部の国民に押し付ける発想が非常に危ういと思うのです。
一時期話題になった「自粛警察」はこのような論調や雰囲気の中で生まれたことは明らかで、政府の方針や国民の「大多数」の行動に反する人々を「勝手な人間」とレッテル貼りし、その行動に対して一般人が警察による取り締まりに似た過剰な対応に至りました。
時に、何かの問題が起きた時に、目に見えない「敵」を作り上げると、その問題の解決のためにはその「敵」を攻撃することで解消するかのように錯覚しがちです。
しかし、実際にはそのように単純な問題ではありません。本件ではそもそもそのような「一部の人間」というものを特定しようもありません。苦しい時だからこそ、きちんと事実を見つめて難局を乗り越えるべきです。ありもしない「敵」を作っても仕方がないどころか、人権侵害のおそれを感じます。