親権者変更調停の手続きや流れや方法は?~離婚問題に詳しい弁護士の解説~


この記事を書いた弁護士
代表弁護士 呉 裕麻(おー ゆうま)

出身:東京  出身大学:早稲田大学
2008年に弁護士登録後、消費者案件(出会い系サイト、占いサイト、ロマンス詐欺その他)、負債処理(過払い、債務整理、破産、民事再生)、男女問題(離婚、不倫その他)、遺言・遺産争い、交通事故(被害者、加害者)、刑事事件、インターネットトラブル(誹謗中傷、トレント、その他)、子どもの権利(いじめ問題、学校トラブル)、企業案件(顧問契約など)に注力してきた。
他にも、障害者の権利を巡る弁護団事件、住民訴訟など弁護団事件も多数担当している。

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*この記事の内容を分かりやすく動画で解説しています。複雑な記事の理解にお役立てください。


この記事では、離婚の際に親権を譲ったものの、やはり取り返したいとお悩みの方に向けて、そのために必要な手続きを専門の弁護士がこれまでの経験に基づき、詳しく解説しています。親権者変更の手続きの際に重要となるポイントをご理解の上で親権獲得を実現してください。

1 離婚の際の親権者を変更する方法

共同親権の規定のない現行の法制度(離婚後は単独親権しかない)の下では、夫婦が婚姻関係を終了し、離婚をする時には、協議離婚、離婚調停、離婚裁判のいずれであろうとも、その子どもの親権者を配偶者のどちらか一方に定める必要があります。

しかし、離婚の成立後になって、離婚の際に定めた親権者を変更したいと考えるケースがよくあります。

これは、例えば離婚後に子どもとの面会交流を通じて、親権者側での生活状況や監護状況に問題がある、適切でないと感じたりして、親権の変更を考えるようになったりするのです。そうした場合、法律では一定の条件の下、親権者の変更を認められることとなっています。

具体的には、法律上「子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。」(民法819条6項)とされており、この規定に基づき親権者の変更の可否が決められることとなるのです。

かつ、この規定の解釈として、親権者の変更は家庭裁判所の関与がないことには行えないものと理解することができます。すなわち、家庭裁判所の関与なく当事者間の合意によって親権者変更を行うことは認められていないのです。

そして、この親権者の変更の可否は法律により、調停にて決めることとなっているのです。すなわち、家庭裁判所における調停事項については、家事事件手続法244条に規定があり、親権者の変更は調停事項とされています。そこで、以下では親権者変更の調停について詳しく解説をしたいと思います。

なお、上記の条項の「子の利益のため必要があると認めるとき」という文言の意味は、より平易に表現すると、「子どもの福祉」「子どもの幸せ」のために必要があるときと言い換えることも可能です。

ただし、以上の親権者の変更は、離婚した元夫婦のうち親権者となった側が再婚をし、再婚相手と子どもが養子縁組をした場合にはとることができません。再婚をし、養子縁組をすることで、子どもは再婚相手の親権にも服することとなり、もともとの親権者との共同親権となるからです。

2 親権者変更調停とは?

親権者変更調停は、親権者の変更を求める調停のことを意味します。

この調停は、大きく分けて(1)子供の父母のうち親権者ではない側が申立人となって、親権者である側を相手方として申し立てる場合と、(2)現在、親権者である側が申立人となって、親権者でない側を相手方として申し立てる場合とがあります。

前者の(1)は自分が親権者にふさわしいとの意思に基づき、親権変更を求めるケースで、後者の(2)は相手方が親権者にふさわしいとの意思に基づき、親権変更を求めるケースです。

いまだに離婚の際には母親が親権者となることが多いため、親権者変更の申立ては父親が母親を相手にして行うことが大半です。

なお、親権者の変更自体は、父母から以外(たとえば祖父母など)でも申立が可能となっていますが、このコラムではこの点は省略しています。

また、親権者になった者が死亡した場合には、自動的に他方の親が親権者になるものではなく、未成年後見人の選任の問題となる点の解説も含めていません。

この点、このコラムでは一般的に最も多い、父母からの申し立てに限って解説をしている旨、ご注意ください。

3 親権者変更調停の申し立て方法は?

以上の親権者変更調停の申立ては、必要書類等を揃えて家庭裁判所に提出することで行うことが可能です。

申立先の裁判所は、相手方になる者の住所地を管轄する家庭裁判所となることが一般で、申立人と相手方とが合意をしていれば他の家庭裁判所に申し立てることもできます。

申し立ての際には、収入印紙(子ども一人あたり1200円)郵便切手(申立先の裁判所によって金額が異なるので事前に要確認)が必要です。

また、必要書類としては申立書原本と写し申立人の戸籍相手方の戸籍子どもの戸籍が必要です。ただし、子どもの戸籍が申立人か相手方の戸籍に含まれている場合にはそれだけで構いません。

以上の必要書類等は、裁判所のウェブサイトに詳しく説明や紹介があるのでそちらもご参照ください。

親権者変更調停 | 裁判所
裁判所のホームページです。裁判例情報、司法統計、裁判手続などに関する情報を掲載しています。

特に、申立書は申立に必要な事情や内容が一通り記入されてあれば、書式は問いませんが、慣れない方の場合には裁判所のウェブサイトにある書式をダウンロードの上で印刷して使うか、最寄りの家庭裁判所において書式をもらうのが良いと思います。

【申立に必要なもの】

 (1)収入印紙

 (2)切手

 (3)申立書

 (4)戸籍謄本

このように、親権者変更の調停は、必要書類も複雑ではなく、申立てのための書式も裁判所にて公開されています。その記載方法や記載内容も難しいことはないので、当事者ご自身にて書類の作成や申し立てをして、裁判所に受理してもらうことも決して難しくはありません。

しかし、親権者の変更は、申し立てをすれば当然にもしくは簡単に認められるというものではなく、調停を有利かつスムーズに進めるためには、相応の知識や経験に基づきしっかりとした対応が重要です。

より具体的には、以下の5で詳しく説明するとおり、調停では親権者の変更が必要かつ相当だと認められるに足りる事情を、調停委員に説得的に説明し、理解してもらうことが大切です。

調停委員は、ひょっとすると「子どもは母親がみるべき」との古い価値観を持つ方もいないとは言い切れませんし、はたまた現状の生活状況、親権者を変更することに消極的な方、現状を尊重しようという方も少なくないと言えます。

その意味で親権者の変更は、その必要性や相当性をかなりしっかりと主張しないことには実現しないものとご理解ください。

そうなると、やはり単に調停の申立てだけ済ませればよいのではなく、これに引き続く調停や審判手続きでの対応が非常に重要になると思ってください。その意味で、この分野に詳しい弁護士に依頼することのメリットがあるものとお考えください。

4 親権者変更調停の実際の流れや進行について

以上の必要書類等を過不足なく用意をして提出をすると、今度は家庭裁判所から初回の調停の期日の連絡があります。初回の調停期日は申立人と裁判所の都合を調整の上で確定します。

そして、調停期日の確定と同時に、家庭裁判所から相手方に対して親権者変更の調停が申立てられたことと、その期日の呼び出しなどの連絡がなされます。これは郵便でなされますが、その際、申立書の写しなどが同封され、相手方は申立人の申し立ての理由を知ることになります。

こうして調停手続きが開始することとなり、その後、初回の調停期日にて、双方から親権者変更についての意向が確認されます。

お互いで親権者の変更に合意ができれば調停が成立となりますが、そうでない場合には、いずれが親権者にふさわしいかを調停委員を通じて話し合うこととなります。

この話し合いの機会は、調停期日ということで複数回続くことが多く、結果、調停期日が重ねられることとなります。

調停期日は概ね1~2カ月に1回の頻度で設定され、一度の調停期日では2~3時間程度を使うことが多いです。

そして、調停ではお互いが順番に調停室に入り、調停委員に対して今回の申し立てについての考えなどを説明することとなります。調停手続きはお互いが顔を合わせないように進めるので、調停室でバッティングすることもありませんし、待合室も別々に指定されているのでご安心ください。

5 調停期日ではどのようなことを話し合うのか?

親権者変更の調停では、主に以下のようなさまざまな事情や内容を話し合うこととなります。また、調停が不成立になり、審判にて結論を求める際にも、これらの事情を裁判官が十分に考慮の上で決定が出されます。

(1)親権者を定めた経緯

親権をどのように定めたかであり、相手からのdvやモラハラのため止む無く親権を譲った、財産分与や慰謝料の支払いとの交換条件で親権を譲ったなどの主張がなされることがあります。

(2)親権者変更を求める理由や事情

相手による育児放棄や虐待、婚姻中の不倫・不貞などの主張がなされることが良くあります。また、自身の方が親権者にふさわしいと考える事情を強く主張することも大切です。

(3)現在の子どもの監護状況、生活環境

子どもが病気をしても病院に連れて行ってもらえていない、学校の行事に親権者が興味を持たないなどの主張があります。

(4)親権者変更についてのお互いの意思や意向

(5)申立人、相手方のそれぞれの生活状況や経済力等(収入や生活実態含む)

→単に収入が多い方に親権者変更を認めるとなる訳でない点には注意が必要です。

(6)今後の監護方針

→仮に親権者の変更が実現したら、相手に対する面会はどうするつもりかなど。

(7)子どもの親権者変更についての意思、意向や希望(とりわけ15歳以上の年齢の場合に重視)

→父と母のそれぞれの意向とは別に、子ども自身の意向を聴取することがあります。15歳以上の場合には必須であり、親権者変更の判断に相当大きな影響を与えます。他方で、15歳未満であっても、子どもの発達状況や性格などに照らし、十分な判断能力がある場合には、その意思が相当程度尊重されることも十分にあります。

(8)その他、関連する一切の事項

これらに関し、必要な裏付け資料(収入資料など)の提出を求められることもあるので、その場合には必要部数を印刷して提出することとなります。

6 家庭裁判所の調査官の関与やその調査とは何か?

ところで、家庭裁判所における調停(離婚や面会、養育費など含む)では、基本的には男性1名、女性1名の調停委員がお互いの話を聞いて調停を進めます。

その際に、これら2名の調停委員の他に、家庭裁判所調査官と呼ばれる担当者が同席することがあります。家庭裁判所調査官は、子どもの親権争いや面会などで対立が生じているようなケースで介入することが多く、そのため、親権者変更の調停の際にはやはり調停委員の他にこの家庭裁判所調査官が関与することが大半です。

家庭裁判所調査官は、福祉の専門家という観点から、子どもの監護状況等の調査を担当することとなります。そのため、親権者変更に際して、現在の子どもの状況や意向などは家庭裁判所調査官を通じて担当裁判官に具体的に報告がなされます。

そして、家庭裁判所調査官は、裁判官からの指示により、調停期日とは別の日に、申立人、相手方、子ども、学校その他関係先に対する面談を行うことがよくあります。その際、子どもを実際に監護している側については、子どもの監護状況を調査するために、自宅への家庭訪問を行うこともよくあります。

当然、親権者変更の調停が成立しないケースでは、後で説明するように審判にて結論が決まるため、その際には家庭裁判所調査官の調査結果が非常に大きな意味を持つ点、注意が必要です。

その意味で、親権者変更の調停を少しでも有利に進め、これを実現するためには、調査官を味方に付けることがとても大切です。

7 親権者変更調停が成立になった場合にはどうなるのか?

親権者変更の調停が成立すれば、裁判所の作成する調停調書が作成されます。そこで、この調停調書をもってお住まいの市区町村の役場にて親権者変更の届出を行うこととなります。これは調停成立から10日以内に行う必要があるので、調停が成立する見込みとなった際には市区町村の役場に出向くための時間を確保しておくことをお勧めします。

なお、実際にどのようなケースであれば親権者の変更が実現、成功するのかは別のページに詳細に解説をしているのでぜひご参照ください。

8 親権者変更調停が不成立になった場合にはどうなるのか?

以上と異なり、調停が不成立に終わった場合には、親権者変更の調停は審判に移行することとなります。審判では、これまでのお互いの主張を再度確認し、不足があれば追加の上で裁判所が結論を決めることとなります。

審判により結論が言い渡された場合には、不服があれば即時抗告をすることができます。即時抗告は、裁判手続きでいうところの控訴のようなものと理解していただいて構いません。

この即時抗告は、審判の言い渡しから2週間以内に行う必要があるので、審判の結論を確認したらすぐにこの即時抗告を検討する必要があります。

審判自体に不服がなく、親権者の変更を認めるものであった場合には、これが確定後に10日以内に市役所等への届け出が必要になります。

9 親権者変更の調停が終わるまでの期間はどれくらいか?

以上の親権者変更の調停ですが、(1)もともと調停の申立て前から直接、お互いで親権者の変更に合意ができているケースであれば1~2ヶ月、(2)調停の申し立て後、ある程度の話し合いの結果、合意に至ったケースであれば半年から1年、(3)そうではなく親権者の変更に関し、双方の意見対立が激しいケースであれば1年~2年程度という相当長期の期間が必要になるのが一般的といえます。

この間、調停手続きにその都度、出頭ないし出席する負担は決して軽いものではありませんが、弁護士への依頼をしているケースであれば、本人は出頭ないし出席しなくとも弁護士のみで対応も可能な点、メリットが大きいと言えます。

10 親権者変更の調停手続きについてのまとめ

上記のように、親権者の変更が認められるためには、必ず調停ないし審判による必要があり、自己に有利な結論に至るためには専門的な知識や経験が重要になります。

そして、親権者の変更の際に重要になるのは、法律で定められている「子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。」という規定です(民法816条6項)。

親権者変更が認められた各裁判所の事例でも、この条項が引用されているものがあるとおり、親権者変更の際にはまずこの条項に対する配慮が重要です。この条項では、親権者変更の基準を「子の利益のため必要があると認めるとき」としており、如何にこの基準を満たせるかがポイントとなります。

すなわち、ただ単に子どもが幼いと認められにくいということはなく、その子どもに対する監護の実績(婚姻中と離婚後の双方について)と、監護の意思や能力、子どもの意思などを踏まえて最終的にいずれが親権者となることが子どもの福祉にとって望ましいかを判断しているものといえます。

このような親権者の変更の問題は、親権変更が通るか否かという非常に重要な意味を持ちますし、これが認められるかどうかは子どもの生活にも成長にも重大な影響を持ちます。

当然、親権変更を求めて失敗することは許されません。そのため、親権者の変更を認めた事例も踏まえ、ご自身の置かれた状況、相手方の出方、子どもの年齢や考え方などを踏まえて徹底して親権者変更に向けた専門的な準備が必要です。

また、親権者の変更の申し立てはその件数も離婚や男女問題全体からするとそう多くはありません。当然、取り扱いのない弁護士や法律事務所も少なくありません。そのため、この分野の経験があり、知識のある弁護士や法律事務所にご相談、ご依頼することとしてください。

 親権者の変更を求めたけど失敗したとならないために、間違いのない弁護士選びが重要です。

さらに、親権者変更は当事者間の話し合いによる解決では実現せず、必ず裁判所の調停もしくは審判によることが必要になります。調停の中では必要に応じ、調査官の調査なども経ることとなります。そのための対応も必要になる点、ご注意ください。

なお、当事務所ではこれまで複数の親権者変更手続きの経験があります。ご相談の際の費用としては、ご相談料5,500円(税込)をお願いしております。ご依頼の際の費用としては、着手金396,000円(税込)、報酬金396,000円(税込)にてお受けしております。

確実に親権者変更を実現したい時、親権者変更について最善の解決をしたい時、必ず親権を獲得したい時には、経験豊富な当事務所にご相談・ご依頼ください。親権者変更の可否や可能性その手続きの具体的流れなどを詳細にご説明し、最善の結論に向けて努力いたします。

当然、親権変更を主張されてお困りの方、子どもの親権を守るためにどうしたらよいかお困りの方からのご相談も受付けています。お子様にとって、誰が親権者にとって一番ふさわしいかをどのようにアポピールし、親権維持を実現するための方法をアドバイスいたします。また、相手からの親権変更の申立てがどの程度の確率で通る可能性があるのかの見通しもご案内が可能です。

その他、ご予約の際には、お電話かメールフォームから、このコラムを読んだ旨をお伝えくださるとスムーズに対応が可能です。

執筆者:弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)

1979年 東京都生まれ
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更
2022年 香川県高松市に香川オフィスを開所

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