発信者情報開示請求のための弁護士費用はいくら?~弁護士解説~

このコラムでは、誹謗中傷や口コミの開示請求のために必要な弁護士費用はいくらくらいかかるのかなどについて解説をしています。発信者の特定のためにかかる費用についての参考にしていただければ幸いです。

1 発信者情報開示請求の手続の概要について

インターネット上の掲示板や、SNSへの誹謗中傷投稿(著作権侵害投稿を含む)に対して、その投稿者の情報を開示するための発信者情報開示請求(氏名や住所の開示請求・プロバイダ責任制限法)については、開示に至るまで以下のような手続きが必要です。
ここでは、かかる手続きの内容や流れを踏まえて、これら手続きにどの程度の弁護士費用が必要になるのか、その金額を当事務所の費用相場に基づき解説します。
その際、発信者情報開示を求める側(誹謗中傷投稿や著作権侵害をされた側)が開示までに必要になる弁護士費用と、発信者情報開示を求められる側(誹謗中傷投稿や著作権侵害をした側)とで対応すべき手続きや費用が異なるので分けて解説をします。
なお、実際の開示請求手続の流れを別のページに紹介していますのでそちらもご参照ください。
 
 (1)当該投稿内容の保存
 (2)投稿先の掲示板やSNSに対してIPアドレスの開示を求める(任意請求、仮処分、発信者情報開示命令)
 (3)開示されたIPアドレスが割り当てられたプロバイダーの調査、特定
 (4)特定されたプロバイダに対して発信者情報の開示を求める(任意請求、発信者情報開示請求訴訟、発信者情報開示命令)
 (5)判決の認容などにより発信者情報の開示
 (6)投稿者に対する損害賠償請求

2 発信者情報開示を求める側(誹謗中傷投稿や著作権侵害をされた側)が負担する弁護士費用はいくら?

(1)発信者情報開示を求める側に必要な手続き

発信者情報開示を求める側は、上記の(1)から(5)のすべての手続を経て初めて発信者情報の開示を受けることができます。そのため、これら手続きに対してそれぞれ費用が生じます。
より具体的には、以下のとおりに説明が可能です。
なお、ここでの手続きは発信者情報開示に関するものですから、問題となる投稿の削除やその手続きとは別問題であることをご理解ください。

(2)IPアドレスの開示からプロバイダーの特定まで

弁護士のとるべき手続きとしては、上記手続の(1)から(3)までで一つのまとまりにくくることができます。発信者情報の開示の依頼を受けた場合には、まず(1)当該投稿内容の保存をし、後に(2)の中から適切な手続き(任意請求、仮処分、発信者情報開示命令)を選択します。
そして、これらの手続のために弁護士費用が必要になりますが、当事務所の場合には、以下のような費用基準となっています。ただし、新制度である発信者情報開示命令については別の項目でまとめて説明をします。
IPアドレスの任意もしくは仮処分による手続
 着手金165,000円
 報酬165,000円

(3)プロバイダーの特定後、発信者情報の開示まで

上記によりプロバイダーの特定が済んだ後、(4)特定されたプロバイダーに対して発信者情報の開示を求める(任意請求、発信者情報開示請求訴訟、発信者情報開示命令)こととなります。
そして、やはりこれらの手続のために弁護士費用が必要になりますが、当事務所の場合には、以下のような費用基準となっています。ただし、新制度である発信者情報開示命令については別の項目でまとめて説明をします。
アクセスログ開示請求訴訟
 着手金220,000円
 報酬220,000円

(4)発信者情報開示命令申立て手続について

以上の(3)と(4)は、新制度である発信者情報開示命令申立て手続が整備される前に主に用いられていた手続きです。この方法は従前から、IPアドレスの開示と、発信者情報の開示とでそれぞれに別々の法的手続きを経る必要があること、そのため手間が多く時間もかかること、これに伴い費用負担も多額になることなどが問題となっていました。
そこで、これらの問題点を解消するために新制度として非訟事件としての発信者情報開示命令申立て手続が整備されたのです。
 
そして、この制度を用いれば、わざわざ別々に手続きを申し立てることなく、一連の手続の中でIPアドレスの開示と発信者情報の開示を受けることが可能となったのです。
結果、手間が省略でき、時間も短縮され、費用負担を軽減することが可能となりました。当事務所でも同制度に基づく手続きに対応をしており、以下のような費用基準にて対応が可能です。この制度を利用した場合には、上記(2)と(3)で必要になる合計の費用額よりも負担が少なくなるのです。
発信者情報開示命令(IPアドレスの開示からアクセスログの開示まで)
 着手金330,000円
 報酬330,000円

(5)投稿者に対する損害賠償請求について

以上のようにして、投稿者の特定が済んだら今度は投稿者を相手方にして損害賠償請求を求めることとなります。その方法としては示談交渉による場合訴訟による場合があり、いずれの方法が適切かはケースによって判断が必要です。
示談交渉
 着手金220,000円
 報酬16.5%(謝罪文の投稿が実現した場合には別途165,000円)
訴訟
 着手金275,000円
 報酬16.5%(謝罪文の投稿が実現した場合には別途165,000円)

(6)発信者情報の開示を求める側に必要になる費用のまとめ

以上を踏まえると、発信者情報の開示を受けるためには概ね着手金として330,000円~必要になり、報酬としても同額程度になるといえます。
なお、この費用基準は、開示を求める投稿の数や、アクセスプロバイダーの数が増えれば増額となる点はご注意ください。
また、当事務所で実際に過去に取り扱った発信者情報開示の事案で要した費用を以下のページで紹介していますので参考になさってください。
 

(7)発信者情報開示の結果相手方から受けられる費用について

以上の手続のために必要になる費用とは別に、これら費用などを相手方から実際にいくらくらい回収できる可能性があるのかについては、別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
少しだけ解説をしておくと、は発信者情報開示のために要した費用は最近ではその多くを投稿者である相手方に命じる裁判例が増えています。
他方で、請求できる慰謝料額は、裁判例の相場で、名誉毀損の場合が数十万円程度、侮辱の場合が数万円から十数万円にとどまるケースが多い点が課題となっています。
 

3 発信者情報開示を求められる側(誹謗中傷投稿や著作権侵害をした側)が負担する弁護士費用はいくら?

(1)発信者情報の開示を求められる側が必要になる手続きについて

発信者情報の開示を求められる側は、発信者情報の開示を求める側と異なり、対応すべき手続きは限られてきます。具体的には、プロバイダーから発信者情報開示に対する意見照会が届いた時点で対応が必要になるのが通常です。
その上で、実際に開示になった場合には、開示結果を踏まえた示談交渉や損害賠償請求訴訟の対応のために弁護士費用が生じることとなります。
そこで、これらを前提に以下、解説をします。

(2)プロバイダーから発信者情報開示に対する意見照会が届いた時点

ある日突然、プロバイダーから発信者情報開示に対する意見照会が届いたら、その照会に対する回答を検討するようになります。その際に、プロバイダーに対する回答をどうするか、場合によっては弁護士に対応を依頼するようになれば弁護士費用が必要になってきます。
また、発信者情報開示に対する意見照会が届いた時点で、開示請求を求めている者が誰か、弁護士が就いているかどうかが明らかになります。そのため、プロバイダーに対して意見照会の回答をするだけでなく、開示請求者に対しても示談交渉等のために連絡をするかどうかを検討する必要があります。
以上を踏まえ、当事務所の場合には単にプロバイダーに対して回答をするだけであれば以下の費用での対応をしています。
プロバイダーからの開示請求に対する意見照会への回答
 着手金33,000円

(3)開示請求者との示談交渉の費用について

他方で、開示請求者との示談交渉については、以下の費用で対応をしています。また、開示請求者との示談交渉も含めてご依頼の場合にはプロバイダーに対する回答についても以下の費用で含めて対応をしています。
開示請求者との示談交渉のための費用
 着手金165,000円
 報酬(1)示談により解決した際に110,000円
   (2)示談によらず相手方の請求を断念させた際に165,000円

(4)開示請求者との訴訟の費用について

示談交渉により解決がしなかった場合には、開示請求者から損害賠償請求訴訟を提起されることがあります。その場合には以下の費用にて対応をしています。
 開示請求者との訴訟のための費用
 着手金330,000円
 報酬16.5%

4 発信者情報開示請求のために法律事務所依頼した際に必要となる弁護士費用はいくらか?のまとめ

以上のように、発信者情報開示はこれを求める側、求められる側それぞれの立場において、どの程度の投稿についてどのような手続きを対応するかにより要する費用が異なります。
そのため、実際に必要になる費用を明確にするためには、一度は弁護士への問い合わせや相談が必要になります。
とはいえ、大まかには発信者情報開示を求め損害賠償請求する場合で概ね100万円前後の費用が、発信者情報開示を求められる側の場合で概ね30万円から80万円前後の費用が必要になると思ってください。
また、本コラムでは、主に民事事件として必要になる費用をご紹介しました。他方で、発信者情報開示請求を踏まえての刑事告訴の場合の費用や、警察からの捜査を受けた際の弁護士費用は別途、弁護士費用のページにてご確認ください。
 
執筆者:弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)
1979年 東京都生まれ
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山県倉敷市に岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更
2022年 香川県高松市に香川オフィスを開所
 
タイトルとURLをコピーしました