他人を馬鹿にしたり、アホと言ったりという侮辱行為の法的責任について


この記事を書いた弁護士
代表弁護士 呉 裕麻(おー ゆうま)

出身:東京  出身大学:早稲田大学
2008年に弁護士登録後、消費者案件(出会い系サイト、占いサイト、ロマンス詐欺その他)、負債処理(過払い、債務整理、破産、民事再生)、男女問題(離婚、不倫その他)、遺言・遺産争い、交通事故(被害者、加害者)、刑事事件、インターネットトラブル(誹謗中傷、トレント、その他)、子どもの権利(いじめ問題、学校トラブル)、企業案件(顧問契約など)に注力してきた。
他にも、障害者の権利を巡る弁護団事件、住民訴訟など弁護団事件も多数担当している。

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インターネット上の侮辱に関し、その定義や処罰対象などについて解説をしています。侮辱投稿を受けた際、してしまった際の参考にしていただければ幸いです。

1 侮辱行為とは何か

インターネット上の表現行為に限らず、他人のことを侮辱する行為に関し、その法的責任が問題となり得ます。
そこでこの「侮辱」とは何かをまず具体的に明らかにすることが必要となります。
この点、侮辱とは事実の適示を含まずに他人の名誉感情を侵害する表現(インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル第3版・中澤佑一p71)、人格に対する否定的価値判断(名誉棄損の法律実務第2版・佃克彦p80)、他人の人格を蔑視する価値判断を表示すること(刑法各論第5版・大谷寛p125)などとされています。

2 侮辱行為とその民事責任について

(1)侮辱行為により民事上の責任が生じる場合について

そして、侮辱行為は、これをされた人の名誉感情を侵害するものとして一定の場合には法的な責任が生じることとなるのです。
とはいえ、侮辱行為は、個人の主観的な名誉感情に関わるものであり、名誉感情侵害の有無や程度は個人差がとても大きいものです。そのため、どんな些細なものであっても、侮辱行為があれば常に法的責任が生じるとしてしまうと社会生活上の表現行為は過度に委縮し、自由な表現は成り立ちえません。
たとえば、「お前が描いたこの絵はずいぶんと下手だな。」と友人から言われた場合、言われた本人からすれば酷く傷つくこともあり得ますが、ではこの程度の表現であっても常に侮辱行為として損害賠償などを認めるべきかというとそうとは言い難いといえます。
また、人によっては、友人に自分の描いた絵が下手だと言われた程度では何とも思わない人もいれば、酷く落ち込む人もいることも事実でしょう。
そのため、侮辱行為があれば一律に民事上の責任が生じるとは考えず、侮辱行為をもって民事上の法的責任が生じるのは、侮辱行為の違法性が強度で、社会通念上許容される限度を超える場合に限られると考えられています。
すなわち、単に一度や二度、他人を馬鹿にしたというだけではなく、執拗に馬鹿にする行為を繰り返すなどという場合に初めて侮辱による名誉感情侵害として民事上の責任が生じるのです。

(2)侮辱行為による民事上の責任の内容について

侮辱により民事上の責任が生じた場合、加害者に対しては損害賠償を求めることができます(民法709条)。
他方で名誉棄損の場合と異なり、謝罪広告(民法723条)を求めることはできません。名誉棄損は社会的評価としての外部的名誉が保護法益であり、いったん傷つけられた名誉を回復するためには謝罪広告が有効ですが、侮辱はそうではないからです。
また、求めることができる損害賠償(慰謝料)の額としては、名誉棄損よりも低額(侮辱行為の内容にもよりますが、数万円から数十万円程度)に抑えられているのが実情です。

(3)法人に対する侮辱行為の成否について

ところで、法人に対しては侮辱が成立するかという問題がありますが、この点に関しては侮辱が名誉感情侵害の問題であり、法人には感情はないことから否定されています。

3 侮辱行為とその刑事責任について

以上の民事上の責任とは別に、侮辱については侮辱罪の規定があります(刑法231条)。刑法上は、「公然と」侮辱をすることが構成要件となっている点で、公然性が要件とならない民事上の責任とは異なっています。
そして、侮辱罪の法定刑は「一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」とされています。この点、法改正により懲役もしくは禁固、罰金が加えられ、昨今の被害者保護の流れを汲んだものと言えます。
なお、民事上の侮辱行為の場合には、侮辱行為の違法性が強度で、社会通念上許容される限度を超える場合に限って損害賠償責任が生じるとされていましたが、刑法上はこのような絞り込み自体は構成要件に定められていません。
しかし、侮辱行為を理由として刑事告訴がされるなどした場合、捜査機関において問題となっている侮辱行為の内容や、これをした側の事後の事情、被害者の心情などを踏まえ一定の行為に限って起訴するなどするのでその意味では侮辱行為すべてについて刑事責任を問われている訳ではありません。

4 まとめ

以上のように、侮辱行為は主観的な名誉感情侵害であること、民事上も刑事上もその責任が問われるのは一定の場合に限られていること、とはいえ世間では侮辱行為に対しても厳しい責任を求める声が上がっていることに注意が必要です。
 
執筆者:弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)
 
1979年 東京都生まれ
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山県倉敷市に岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更
2022年 香川県高松市に香川オフィスを開所
 
 

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