【対談者プロフィール】

呉 裕麻(おー ゆうま)弁護士
弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所 代表弁護士。早稲田大学法学部卒。累計2,500件を超えるトレント案件の相談・受任対応に携わり、安易な即示談を排し、「ログ保存期間待ち戦略」や「示談拒否」など、依頼者の利益を最大化する民事防衛を貫く。

片山 裕之(かたやま ひろゆき)弁護士
かたやま総合法律事務所 代表弁護士。京都大学法学部・同法科大学院卒。刑事弁護に深く精通しており、通算8件の無罪判決を獲得している実績を持つ。緻密な現場検証と強硬な刑事手続きへの対抗策に定評がある。

武田 諒(たけだ りょう)弁護士
弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所 所属弁護士。香川大学卒。呉弁護士とともにトレント案件の実務最前線を担当。取り調べ現場での不当な捜査に対する「苦情申し立て」など、機動的な実務対応に注力。
プロローグ:なぜ、今「刑事提携」が必要なのか?

片山先生、今日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。

よろしくお願いします。呉先生のところは連日、トレント(BitTorrent)の開示請求や示談金に関する相談が全国から殺到しているそうですね。

ええ。2026年5月現在で、ご相談やご依頼いただいた件数は累計2,500件を突破しました。プロバイダーから「意見照会書」が届いてパニックになり、夜も眠れずに「私は逮捕されてしまうんでしょうか……」と、泣きそうな声でお電話をいただくケースが本当に増えています。

それはそうですよね。普通に暮らしている一般の方が、ある日突然、プロバイダーから「著作権侵害だ」と書かれた物々しい封書を受け取るわけですから。動揺しない方がおかしい。

そうなんです。そこでネットで検索すると、「今すぐ示談しなければ、すぐに刑事告訴されて逮捕される!」「前科がついて人生が終わる!」といった、利用者の恐怖心を過剰に煽るような文句がずらりと並んでいる。

ああ、確かにそういう極端な記事、ネット上でよく見かけますね。

相手方(制作会社側の代理人)が交渉を有利に進めるために刑事罰の存在を示唆するのはわかります。ご相談にいらした方の不安を煽って、急いでご依頼いただいたり、相手の言い値ですぐに示談をまとめようとしたりするような進め方は、私はしたくないんです。弁護士としては、焦らずしっかりと状況を見極めて、ご本人が本当に納得できる解決を目指さなければいけないと強く思っています。
だからこそ、民事でのログ保存期間待ちや示談交渉、あるいは強気の示談拒否まで一貫して引き受けてきた当事務所と、刑事弁護に深く精通している片山先生が正式に業務提携を結ぶことで、依頼者の方に「民事からも刑事からも、万全のサポートする」という本物の安心を提供したい。これが今回の提携の最大の目的です。
第1部:ネットの恐怖を排す!刑事事件化の「客観的なボーダーライン」

まず、一番知りたい本音の部分からいきましょう。ネット上では「トレントを使ったらすぐ逮捕」みたいな噂が流れていますが、実務家としてのリアルな感覚からして、どう思われますか?

結論から言うと、「一般的な私的ダウンロード目的の利用者が、いきなり逮捕される可能性は低い。ただ、ケースによっては可能性がないとまでは言い切れない」。これが私の現在の認識です。

実際、当事務所が2,500件以上のトレント相談をお受けしてきた中で、2026年5月までは刑事告訴や家宅捜索(ガサ入れ)に至ったケースは「1件もありません」でした。ただ、残念ながら直近の2026年6月に、当事務所の保留中(待機戦略中)のご依頼者様で、初めて1件、刑事告訴が受理されて自宅に家宅捜索が入るという事案が発生したんです。

その1件は、相手方代理人のスタンスも関係していましたか?

制作会社側が、当初から民事だけでなく刑事告訴も見据える方針をとっていたことも影響していると思います。まったくの偶然というよりは、そうした制作会社側の意向が今回のような状況に至った背景だと考えています。

なるほど。刑事事件を扱ってきた私の経験から言うと、著作権侵害の場合、民事責任と刑事責任とでは要件が大きく異なります。民事の損害賠償(不法行為責任)は、「過失」、つまり「トレントの仕組みを知らずにダウンロードしていたら、自動的にアップロードされていた」という不注意であっても責任を問われます。しかし、著作権侵害での刑事罰を問うためには、「故意(「トレントの仕組みについての認識)」が必要なんです。

そこですよね! 警察としても、仕組みをよく理解していない一般のユーザーに対して、「送信可能化(アップロード)しているという明確な認識、すなわち故意」があったと裁判所で立証するのは、実務上もハードルが高い。


その通りです。警察の捜査リソースも無限ではありませんから、彼らにも明確な「捜査の優先順位」があります。実際に警察が重い腰を上げて家宅捜索や逮捕に乗り出すのは、より悪質性や被害の程度が高いケースです。

過去に簡易裁判所で罰金30万円の略式命令が出たような刑事事例(qBittorrent等を利用した事案)も、警告を無視して大量のファイルを長期間にわたり公開し続けたという、かなり悪質なケースでしたよね。

そうです。それに、制作会社側は、代理人弁護士を通じて損害賠償金を回収する「民事上の金銭的解決」の方を優先して求めているケースも多い。

だからこそ、単に「私的にちょっとダウンロードしてしまった」というレベルの一般ユーザーが、過度に刑事事件を恐れて、パニックのまま相手方の言い値である高額な示談金で「即示談」に応じる必要は全くない、というのが我々の共通したスタンスです。
第2部:警察の捜査、PC解析、そして「証拠隠滅」の法的現実

実際に警察が動き出した場合、具体的にどのようなことが行われるのでしょうか?

警察が動き出した場合、まず裁判所から令状を得て、自宅に突然「捜索・差押え(いわゆるガサ入れ)」に入ります。これは証拠隠滅を防ぐため、事前の連絡や兆候は一切なく、ある日突然、朝早くに不意打ちでやってきます。

そこで、パソコンやハードディスクなどの機器が押収されるわけですね。

はい。トレントクライアントソフト(qBittorrentやμTorrentなど)の利用履歴、ダウンロード・アップロードされた動画データそのものが、公衆送信権侵害の「直接的な物的証拠」になりますから、ご使用中のPC本体、外付けHDD、SSD、さらには通信ルーターなどの記録媒体、携帯電話などは最優先で差し押さえられます。

相談者の方からよく、「仕事で使っている会社支給のノートPCも持っていかれてしまうのか?」という質問をいただくのですが、実務上はどうですか?

警察官の判断で会社用のパソコンは対象外となるケースもありますが、自宅にあるすべてのPCや記録媒体が対象になるのが通常ですので、自宅にあれば会社支給のPCであっても証拠保全のために一緒に持っていかれてしまう(押収される)可能性は十分ありますね。

会社支給のPCが押収されると、会社にバレるリスクや仕事への影響が甚大ですから、やはり何としても避けたい事態です。ちなみに、押収されたパソコンや携帯電話から、警察はどこまで情報を調べる(解析する)ことができるんでしょうか?

パソコンや携帯電話を解析すれば、SNS(LINE、Instagram、Facebook、ショートメール)のやり取り履歴、写真や動画データ、メモ、そして何より「Google Chromeなどのブラウザの検索履歴」がすべて抽出されます。最近の警察は、この「検索履歴」も重視している傾向にあります。

検索履歴から、本人の頭の中(認識)をあぶり出すわけですね。

その通りです。「トレント 違法」「ビットトレント 逮捕」「開示請求 回避」といったキーワードでの検索が、意見照会書が届く前に大量に行われていれば、警察は「この人は違法だと十分に認識して(故意を持って)使っていた」と推認する強力な証拠にしてきます。

なるほど。逆に、意見照会書が届いた「後」に慌ててそれらのキーワードを調べた履歴であれば、「届くまでは違法性の認識がなかった(故意がない)」という強力な反論(反対仮説)にもなり得ますよね。
あと、もう一つデリケートな質問をさせてください。よく「プロバイダーから書類が届いたので、怖くなってパソコンの中の動画ファイルを全部ゴミ箱から消去した。クライアントソフトも削除した」という方がおられます。これは、いわゆる「証拠隠滅罪」などで、本人が罪に問われることはあるんでしょうか?

法律上、刑法第104条の証拠隠滅罪が成立するのは「他人の刑事事件に関する証拠」を隠滅した場合に限られます。つまり、「自分自身の犯罪の証拠」を本人が消去・破棄する行為は、不可罰(罪に問われない)というのが法的な結論です。
ただし、法律上の「証拠隠滅罪」には問われないとしても、証拠を隠滅することは、逮捕や身柄拘束の可能性が高まる原因になりますので、避けるべきです。
第3部:万が一、警察が来たら?その場で実践すべき「自己防衛の方法」

では、もしも、本当に警察が自宅に「ガサ入れ(家宅捜索)」に来てしまった、あるいは警察から「事情を聞きたいので署まで出頭してほしい」と電話があった場合、その場で一般の方が取るべき、自己防衛策は何でしょうか?

「突然のことで動揺しているため、まずは弁護士と相談した上で改めて対応させていただきたい」と伝え、捜査を応じる姿勢を示したうえで、その場での対応を保留すること。 これが、その場で実践できる「最大の防衛方法」です。
警察が任意の事情聴取を求めている段階で、捜査協力の意思を示している本人がそれを一時的に拒否したからといって、それだけを理由に必ずしもその場で即座に「逮捕」されるわけではありません。なぜなら、基本的に、身柄を拘束するためには「逃亡や罪証隠滅の恐れ」といった要件を裁判所が認めて令状を出す必要があるからです。

一般の方は「拒否したら警察の機嫌を損ねて、その場で逮捕されてしまうんじゃないか」と怯えて、記憶も整理できず、混乱した精神状態で、警察の言うがままに話を合わせてしまいがちです。

それが最も危険なんです。警察官によっては、彼らの立てたストーリー(仮説)に沿って、例えば「故意があった」という前提の調書(供述調書)を作成しようとすることもあります。突然の警察の来訪に動揺した状態で、よく内容も確認せずに作成された事実と異なる内容の調書に一度でも署名・捺印をしてしまうと、後から調書の内容を覆すことは極めて困難になります。

被疑者自身の調書は、刑事処分や裁判でも重視されますからね。

そうなんです。だからこそ、「弁護士に連絡をさせてください」と言って、弁護士のアドバイスを受けるまでは取り調べに応じない。我々弁護士の名刺を常にもっておいたり、我々の事務所の連絡先を携帯に登録しておき、その場で直ちに連絡を入れてほしい。連絡がつながれば、弁護士からその場で対応のアドバイスを行うことも可能です。

実際、警察の取り調べ現場では、不当な誘導や、弁護権を侵害するような言動が今でも平然と行われることがあります。以前、私が担当した否認事件(警察が捜査対象としていた犯罪事実を争っていた事件)では、警察官が被疑者に対して「弁護士になんて言われたのか」と聞いてきたり、侮辱するような発言をしていたことがありました。

それはひどいですね。捜査機関として完全にルール違反、弁護権侵害の重大な違法捜査です。

ええ。そこで私は直ちに、警察や検察庁に対して正式な「苦情申し立て(抗議)」を行いました。結果、捜査機関内部で対応を行ってもらいました。こうした違法捜査に一般の方が一人で戦うのは無理ですが、私たち弁護士が盾となって違法な捜査を監視し、抗議活動を行うことが捜査の適性化につながります。
第4部:民事の「ログ保存期間待ち戦略」と「刑事防衛」の完全融合

刑事告訴の防衛策についてよくわかりました。それでは、当事務所が民事防衛の柱としている「プロバイダーのログ保存期間を待つ戦略」と、この「刑事防衛」をどのように組み合わせていくべきか、整理しておきましょう。

呉先生の「ログ保存期間待ち(保留・待機)戦略」は、トレントという技術の特性(複数ダウンロード・複数開示請求の発生)を踏まえた、民事上、論理的で強力な防衛策だと思います。


ありがとうございます。トレント利用者は通常、複数の作品をダウンロードしているため、1社目からの通知に怯えてその都度相手方の言い値(個別44万円、包括88万円など)で即示談をしてしまうと、プロバイダーのログ(回線履歴)が消える前に2社目、3社目の開示請求が届き、負担する示談金が数百万円という青天井の底なし沼に陥る「複数開示のリスク」が常態化しています。

だからこそ、プロバイダーごとのログ保存期間(半年〜2年以上、ソフトバンクやドコモ等のロングコースは2年以上)が完全に経過し、追加の開示請求ログが発生しない状態になるまで、あえて「示談を保留する」わけですね。

そうです。

そして、万が一、この待機期間中に相手方によって「刑事告訴」がなされた場合であっても、今回の提携により、私が即座に刑事弁護人として入り、今後想定される手続き(捜索、差し押さえなど)に対して全面的にサポートする。その上で、制作会社側と「告訴の取下げ」を含めた迅速な示談交渉へ移行する。この盤石のアフターフォロー体制があるからこそ、依頼者様は追加請求のリスクに怯えることなく、安全かつ最小限の費用での「ログ保存期間待ち戦略」を取り得るわけですね。

まさにその通りです。当事務所には、何社から請求が来ても追加の弁護士費用が発生しない一律定額の「おまとめプラン」や、万が一の裁判に備える「訴訟プラスプラン」もあります。ここに片山先生との「刑事弁護提携」が加わったことで、民事、刑事、および複数開示の不安まで、あらゆるリスクに対する盾が完成したと自負しています。
エピローグ:夜も眠れない不安を抱える皆様へ

トレントでの著作権侵害は、法律上違法な行為であることは間違いありません。しかし、だからといって、法外な高額請求や、ネット上の過激な噂、一部の不安を煽る広告に怯え、人生や平穏な毎日を諦める必要は全くありません。刑事弁護のプロとして、私は呉先生、武田先生とともに、あなたの日常と権利を徹底的に守り抜きます。

突然届いた意見照会書や、刑事事件化のニュースに、目の前が真っ暗になっている方も多いと思います。ですが、どうか一人で抱え込んで悩まないでください。まずは落ち着いて、お気軽に当事務所にご相談(オンラインZoom相談対応)ください。私たちがあなたの味方となり、平穏な日常を取り戻すための、確実な「架け橋」となります。
(※この対談原稿の内容は、個別の事案に対する具体的な法律上の助言に代わるものではありません。個別具体的なトラブルの解決については、お気軽に当事務所まで直接ご相談ください。)
