
▶この記事を書いた弁護士
弁護士 河田 布香(かわだ のぶか)
出身:岡山 出身大学:岡山大学
2019年に弁護士登録後、離婚・男女関係のトラブル、子供の権利に関する問題(いじめ、学校事故の問題等)、インターネットトラブル(詐欺サイト被害、匿名誹謗中傷問題など)に注力し、積極的に取り組んでいる。さらに、岡山弁護士会の子どもの権利委員会副委員長を務めるほか、子どもシェルターモモの理事、岡山大学非常勤講師を担当している。
*近場、遠方を問わずZOOM相談希望の方はご遠慮なくお申し出ください。

弁護士 武田 諒(たけだ りょう)
出身:徳島 出身大学:香川大学
離婚および男女間の問題に関しても、依頼者がより豊かな人生を歩むための一助となるべく、精力的に取り組んでいる。 離婚や男女問題は、個人の人生に大きな影響を及ぼす事柄であり、深刻な事態に至るケースも少なくない。こうした状況において、依頼者に寄り添いながら、解決に至るまで伴走することを心掛けている。 また、離婚の場面において大きな影響を受ける立場にある子どもの視点にも配慮し、子どもの観点からも適切な解決を目指している。
財産分与、親権、養育費、慰謝料など、複数の問題が絡む案件を取り扱っており、当事務所に入所以降、多くの経験と実績を有している。
このコラムについて
この記事を読まれているあなたは、夫からの心ない言動に悩み、「もしかして、これはモラハラなのではないか?」と一人で苦しんでいるのではないでしょうか。
夫からのモラハラは、目に見える傷がないため周囲に理解されにくく、被害者自身も「自分に非があるのではないか」と思い込んでしまいがちです。
その一方で、夫に対してモラハラを訴えても、自身のモラハラを認めず、離婚してもらえないのみならず、モラハラが過激化するのではないかと不安に思う方も多いでしょう。
そして、最終的な問題として、「モラハラで離婚ができるのか」
そう悩まれている方は多いのではないでしょうか。
そこで、この記事は、そのような悩みを抱え、モラハラ夫との離婚を考えている方に向けて、離婚問題に精通した弁護士の視点から、モラハラの基本的な知識、モラハラによる離婚の可否、具体的な対処法、そして離婚に至るまでの法的な流れを分かりやすく解説します。
知識は、理不尽なモラハラから自分の未来を守るための力になります。
あなたが一人で悩まず、正しい知識を武器に、確かな一歩を踏み出すための助けとなれば幸いです。
1. モラハラとは?その定義と種類
(1)モラハラの基本的な定義
モラハラは「モラルハラスメント」の略称であり、倫理や道徳、常識、あるいは一方的なあるべき姿を根拠として、他者に対して嫌がらせ行為を行うことを意味します。
端的に言えば、「精神的な虐待」 の一つです。
配偶者による言葉や態度、身振り、文書などによって、あなたの人格や尊厳を傷つける行為全般が該当します。
この意味では、モラハラの範囲はかなり広範囲であり、個別の行為態様によって程度差もあります。
被害者の中には、ひどく怒られる、出来ていないのは自分に責任がある、と無意識に思い込んでしまい、常に相手に気を遣いながら生活している方もいらっしゃるでしょう。
ただ、どのようなモラハラであれ、あなたが傷ついていることをあなた自身が受けとめ自覚することが第一歩です。
モラハラによる被害を自覚することで、あなた自身を守ろうとする考えに至ることができるのです。
(2)モラハラの種類と特徴
モラハラ加害者の行為は多岐にわたりますが、その根本的な目的は、相手を「支配(コントロール)」することにあります。
具体的には、以下のようなカテゴリーに分類できます。
- 個人の行動を支配する
- 会社や友人との付き合いを制限する
- 許可なくスマートフォンや手帳をチェックする
- 外出先や同行者を細かく問い詰めてくる
- 外出中に何度も連絡をして行動を監視する
- 経済的に支配する
- 生活に十分な費用を渡さない
- 夫婦の生活費や預貯金を独占的に管理する
- お金の使い道を執拗に批判する
- 「誰のお陰で生活できていると思っているのか?」「誰のお金だと思っている」「俺より稼ぎが少ないくせに」と恩着せがましく責める
- 性的に支配する
- 性交渉を拒否すると、不機嫌になったり、嫌がらせしたりする
- 暴言や侮辱で性交渉を強要する
- 子どもが近くにいる状況でも無理やり強要する
- 精神的に支配する
- 些細なことで激しく不機嫌になったり、突然大声を出したりして威圧する
- 独自ルールの強要が激しい
- 人格を否定する暴言を吐く(例:「どうしたらそういう風に育つの?」)
- 罵倒する発言をする
- 家事や育児の細かい点について執拗に指摘し、自信を失わせる
- 意図的に無視を続け、精神的に孤立させる
- 店員などに激しく怒る
- すぐに大声を出す
- 親族や友人に妻の悪口を言いふらし、妻を孤立させようとする
- 子供の前で妻の悪口や叱責を繰り返す
- 叱責が長時間に及ぶ
これらの支配行為は、複数行われていることが多く、妻の行動を制限し、妻が周囲から孤立し助けを求められなくなる状況に陥れます。
また、モラハラによる叱責等を繰り返されることで自身に非があると思い込み、妻は被害を受けているという認識すら感じなくなるのです。
こうして精神的に追い込まれた妻は、周囲に相談に行く機会や気力を失うのです。
妻への支配関係を維持したい夫はさらにモラハラをエスカレートさせ、妻はモラハラ被害から抜け出すことが困難になっていくのです。
他の記事でも、モラハラ夫のチェックリストをアップしているので、参照ください。

2. モラハラを理由とする離婚は可能なのか
「モラハラで辛いけれど、暴力(DV)を受けているわけではないから離婚は無理なのでは?」と不安に思う方も多いでしょう。
結論から言えば、モラハラを理由とした離婚は可能です。
モラハラによる離婚の進め方について、説明していきます。
(1)離婚の法的手続きについて
日本における離婚手続きは、大きく分けて以下の3つのステップがあります。
①協議離婚:夫婦間の話し合いで離婚する方法
当事者同士での話し合いのもと、離婚の合意ができるかが決め手となりますが、モラハラ夫の場合、モラハラを認めず、支配関係を失いたくないため離婚に応じない可能性が高いです。
注意点としては、当事者間だけでの話し合いでは、モラハラ夫は自身のモラハラを正当化する言い訳を行い、かえってモラハラが過激化するリスクもあるため、2人きりで話し合うことが不安な方は、第三者の介入や弁護士へのご相談をお勧めします。
協議離婚の手続きに関しては、以下のサイトの記事をご参照ください。
②調停離婚:家庭裁判所において調停委員を介した話合いによって離婚する方法
相手と直接顔を合わせずに済むため、モラハラ事案では有効な方法である一方で、自身のモラハラの正当性の主張に固辞し、離婚に応じないケースもあります。
注意点としては、モラハラの自覚がない夫は、調停の場や提出書面の中でさらなるモラハラを繰り返してくる可能性があること、また、調停外においても婚姻費用を渋ったり、面会交流を頻繁に求めてきたりモラハラを行ってくる可能性もあります。
裁判所の調停手続きであっても、完全にモラハラ被害を避けられるわけではありません。
モラハラ被害を受けながら手続きを進めなければならない可能性もあるため、弁護士に依頼し、直接の対応を任せ、進め方の助言を求めることもお勧めします。
離婚調停の手続きに関しては、以下のサイトの記事をご参照ください。
③裁判離婚:調停でも合意できない場合、裁判所に離婚を認めてもらう方法
裁判所に離婚を認めてもらうためには、離婚事由(民法770条1項)が必要となります。
詳しくは、後述の⑵で説明します。
離婚裁判の手続きに関しては、以下のサイトの記事をご参照ください。
(2)合意による離婚も可能
ところで、モラハラがあった場合、これについての主張や証拠がなければ離婚できないのでしょうか?
この点、必ずしもそうではなく、話し合いによって「離婚する」ということについて合意に至れさえすば、協議・調停で離婚成立となることもあり得ます。
この場合は、ただ「お互い離婚で同意したから」ということが離婚の理由になりますので、積極的な離婚原因、つまりモラハラの立証をする必要はありません。
もっとも、協議離婚や調停離婚でも書いたように、モラハラ夫はその特徴として頑として離婚に応じない可能性が高いです。
また「モラハラ」を認めようとしないという特徴もあるため、「モラハラ」があったと認めるに等しい慰謝料請求にも強く抵抗することが多いです。
そのため、モラハラ夫に対してモラハラのけじめをきっちりと求める場合には、やむを得ず離婚までが長引くことが予想されます。
作戦として、早期離婚のためにモラハラ慰謝料はあえて請求せず、離婚の合意を狙うということもあり得るでしょう。
なお、協議・調停にて離婚合意に至らなかった場合には、離婚裁判を通じて離婚を認めてもらうことになります。この場合は、「離婚事由」、すなわちモラハラがあったと認定してもらうため、立証の必要があります。
(3)モラハラを原因とする裁判離婚の可否
モラハラを原因とする裁判離婚が成立するかは、民法で定められた「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に該当するか否かで判断することになります。
「その他婚姻を継続し難い重大な事由」とは、端的にいうと、婚姻関係が破綻して、夫婦関係の修復が困難である状態です。
例えば、何ら必要性もないのに舌打ちをしたり、大声で非難したりする行為が「日ごろ頻繁かつ長時間に渡り繰り返されていた」という事情があり、それによって夫婦関係が修復不可能なほど破綻していると裁判所が判断すれば、離婚が認められます(なお、後述の⑶のとおり、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかの判断は、モラハラによる被害の事情だけでなく、その他の事情を総合考慮して判断します。)。
ただし、身体的暴力(DV)と異なり、モラハラは「程度問題」になりやすいという特徴があります。
DVや不倫(不貞行為がある場合)は一度の事実でも明確な離婚原因になりますが、言葉の暴力や無視といったモラハラは、「その行為がどの程度、どのくらいの期間、頻繁に行われていたか」など被害の重大性が問題となります。
つまり、モラハラ被害の重大性などその他の事情を総合して、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかで判断することになるのです。
また、モラハラが暴言や無視などの証拠として保存が難しいケースもあり、証拠の存在も問題となり得ます。
このような問題を乗り越え、離婚が認められるケースもあります。
(4)もし裁判所がモラハラを認定しない場合でも離婚は可能
万が一、モラハラの証拠が不十分で、裁判所で「モラハラ」としての認定が難しかったとしても、離婚を諦める必要はありません。
実務上では、長期間別居をしているケースでは、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するとして、離婚を認めるケースもあります。
個別ケースごとに判断されることにはなりますが、3年から5年程度の別居期間があれば、離婚が認められる可能性が高まります。
離婚裁判に至るまでは、離婚調停での時間も含めると相当の期間が経過しているため、別居期間もそれなりに長くなる傾向にあります。
したがって、仮にモラハラとして認定されなくても、裁判所は別居の期間を含め総合的に判断を行い、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するとして、離婚を認める可能性があります。
そのため、モラハラの証拠がないとしても希望を捨てずに、まずは別居をして物理的な距離を取ることで、あなたの生活の安全確保だけでなく、離婚に近づくことができます。
3. モラハラ夫に共通する特徴とは?
モラハラを行う夫の多くは、家庭外では人当たりが良く、社会的な評価も高い場合があります。この「外面の良さ」が、被害者が周囲に相談しても信じてもらえない原因となり、問題をより深刻化させます。
(1)自己中心的な行動パターン
モラハラ夫は、自分の意見が常に正しいと信じて疑いません。
家庭内に独自のルール(マイルール)を設定し、それを家族に強要します。
問題が発生した際には、「自分は悪くない」「俺を怒らせるお前のせいだ」と責任を転嫁し、決して自身の非を認めようとしません。
(2)外面の良さ
結婚をするまではこんな性格の男性だとは思わなかったケースは多いのではないでしょうか。
友人や同僚など世間体を気にしているため、家庭外の人間に対しては非常に人当たりが良く、「良い夫」「優しい人」という評価を得ているケースが少なくありません。
一方で、妻の意見や感情を軽視し、真剣に耳を傾けることがありません。
このため、被害者が勇気を出して第三者に相談しても「あの人がそんなことをするはずがない」と信じてもらえず、孤立を深めてしまうのです。
(3)感情のコントロールができない
感情の起伏が非常に激しく、些細なことで突然不機嫌になったり、大声で怒鳴り散らしたりします。
彼の機嫌一つで家庭内の空気が一変するため、家族は常に緊張状態を強いられ、精神的に疲弊していきます。
あなたや子どもは、いつ怒りの矛先が自分に向くか分からないという恐怖の中で生活することになります。
4. モラハラ夫の心理
①支配欲と自尊心の低さ
モラハラ夫の根本的な動機は、加害行為を通じて相手を自分の思うように支配(コントロール)したいという点にあります。
一見、自信満々に見える彼らですが、自尊心(自己肯定感)が低い傾向もあります。
妻を「自分より下の存在」と位置づけ、見下し支配することで自分の優位性を保ち、心のバランスをとろうとしているのです。
②強い依存心と「見捨てられ不安」
モラハラ夫は、精神的に妻に強く依存しています。
心の奥底には「妻に見捨てられるのではないか」という強い不安(見捨てられ不安)を抱えていることがあります。
自分の不安や弱さを認めることができないため、過度な束縛や「お前はダメな人間だ」と洗脳するような言動をとり、妻が自分から離れられないようにコントロールしようとします。
③社会的プレッシャーとストレスのはけ口
「男はこうあるべき」「男性が家族を養うべき」といった古い価値観や、仕事や職場でのストレスも要因となります。
外では「良い人」でいるために抑圧しているストレスや、傷つけられたプライドを、家庭内という密室で、自分より弱い立場だと認識している妻にぶつけることで解消し、自分の存在価値を確認しようとするのです。
④「自分は正しい」という歪んだ正義感
最も厄介なのは、彼らが「自分は正しい」「悪いのはお前(妻)だ」と本気で信じていることです。
彼らは「自分が妻を傷つけている」という加害者意識が希薄であるため、モラハラとの認識もないことが多いのです。
自分の思い通りにならないことがあれば、それは「妻が自分を怒らせるようなことをしたからだ」と責任転嫁します。
そのため、話し合いで反省を促しても、改善が難しい理由の一つでしょう。
5. モラハラ夫への対処法
ここからは、受け身の状況から脱却し、ご自身の未来を取り戻すための具体的な対処法です。
(1)モラハラの証拠を集める
モラハラを理由に離婚や慰謝料請求を行う場合、客観的な証拠の有無が結果を大きく左右します。
精神的な暴力は形に残りづらいため、意識的に記録を残すことはモラハラの証明に重要となります。
日記やメモ: 「いつ、どこで、誰が、何を、どのようにしたか」を具体的に記録します。まずは、ありのままを書き留めてくれていれば大丈夫です。
暴言の録音: 夫の暴言や威圧的な会話を、スマートフォンの録音機能などを活用して記録します。見守りカメラなどを利用する方法もあるでしょう。
メールやLINEの保存: 人格を否定するようなメッセージや、過度な束縛を示すやり取りは、スクリーンショットやテキストデータで確実に保存しておくことも、とても重要です。
長期間や頻繁にモラハラ被害を受けていた事情を説明することに役立つため、できる限り保存しておきましょう。
医師の診断書: モラハラが原因で心身に不調(不眠、動悸、うつ症状など)が生じた場合は、速やかに心療内科や精神科を受診し、診断書をもらっておきましょう。これもどれだけの精神的苦痛を受けたかを証明する強力な証拠となります。
メモやLINE等での記録であっても、複数の記録から一つ一つのモラハラの事実を積み上げ、あなたが受けていた被害の重大性を立証することで、離婚事由である「その他婚姻を継続し難い重大な事由」が認められる可能性もあります。また、モラハラによる慰謝料を増額する事情にもなり得ます。
しかし、証拠を収集する際に注意しなければならないのは、モラハラの証拠集めに注力しすぎるあまり、さらに深刻な被害に遭うことです。そうなってしまう可能性がある場合には、証拠集めを優先せずに、すぐにあなたの安全確保をしましょう。
どのように証拠を集めればいいのか、証拠の価値や程度、証拠集めの際の注意点など、弁護士などの専門家に状況や証拠の内容を踏まえて助言を求めることで、的確に進めることもできます。
(2)信頼できる人に相談する
一人で抱え込まず、信頼できる第三者(親、友人、知人など)に相談することで、あなたの味方になってもらい精神的な支えになります。また、あなたが誰かに相談したという事実そのものが、後の調停や裁判で「それほど深刻な状況であった」ことを示す間接的な証拠になることもあります。
また、相手に離婚を伝える際にさらなるモラハラ被害を受ける危険がある場合には、第三者に同席してもらうなど極力モラハラを防止する対応を取りましょう。
まずは、ひとりで悩まずに、誰かに話を聞いてもらい、支援をしてもらうことも有効です。
(3)専門家の助けを求める
法律に基づくアドバイスと具体的な解決策を得るために、専門家への相談は不可欠です。
カウンセリング・心療内科: あなたの受けた精神的なダメージを回復するために、カウンセリングや治療を受けることも大事です。また、精神的に支配されていた状況から冷静な判断力を取り戻すこともできます。
弁護士: どのような証拠が有効か、今後、離婚するための進め方、離婚裁判になった場合には離婚事由が認められるかなど、具体的な見通しについて助言を求めることができます。
モラハラ夫の対応には、6で述べるとおり、離婚に関連して複数の注意点が存在します。
相手のモラハラ気質な対応に対して、実際、あなたが対等な立場で話し合いができるかどうかも検討しなければなりません
対応に不安がある場合には、やはり早い段階から男女、モラハラ問題に詳しい弁護士などの専門家にご相談することもおすすめです。
早期での相談は、トラブルを未然に防ぐことに繋がります。
(4)別居をする
夫との関係改善が望めない場合には、共同生活を続けてもさらに心身が疲弊し問題も深刻化するため、離婚を決意する方もいるでしょう。
別居は、離婚に向けた第一歩となり、夫のモラハラ行為から自身を守る意味でも、有効な手段となります。
もちろん、離婚までは考えていないとしても、別居はモラハラ被害から身を守るために有効な方法です。
夫のモラハラ行為によって、これ以上あなたが傷つく必要はなく、関係改善が困難であれば離婚に向けて別居をする優先度は高いといえます。
また、別居をする場合であっても夫婦間で生活保持義務を負っているため、収入状況や子供の人数・年齢に照らした婚姻費用(配偶者がもう一方の配偶者に対して支払う生活費等)の支払いを求められるケースもあります。
婚姻費用は、双方の収入や子どもの人数・年齢に応じて算定することが多いため、基本的には、収入が高い側が収入の低い側に支払義務を負います。
婚姻費用の請求が可能なケースでは、別居と同時に婚姻費用の請求もしくは調停申立てを行うことで、早期に支払いを受けられます。
対処を進める中で、最終的に離婚という選択肢が現実的になった場合、どのような点に注意すべきでしょうか。次に、離婚を考える際の注意点を解説します。
6. モラハラ夫との離婚を考える際の注意点
モラハラ夫と離婚に進める際には、離婚問題に関連して複数の注意点があります。
(1)子ども視点での注意点
親がモラハラを受けている環境は、子どもの心に深刻な悪影響を及ぼします。
特に、離婚協議を進めようとするとそうしたモラハラが激化し、それを直接見ている子どもが負担に感じることも。
別居して、子どもをそのような過酷な環境から距離を置かせるということも検討しましょう。
もっとも、転校や転園などの負担もありますから、
①期間を決めて一時的に別居をし、その間は転校・転園をせず、長期間になった場合には子どもにも説明をして転校、転園を検討する、
あるいは
②同一学区内でできるだけ離れた場所に転居する、といった中間的な方法をとることもあり得るでしょう。
「モラハラをしても子どもにとってはいい父だから」、あるいは「少なくとも一緒に住んでいたら子どもがお金に困らないから」と別居にとまどうこともあるかもしれません。
しかし、子間の面会交流を実施してお子さんの心情に配慮することや、婚姻費用を請求して当面の生活費を払ってもらうということも可能です。
(2)慰謝料の証拠問題
モラハラを理由とする慰謝料請求については、立証の問題もあります。
目に見えない言葉などの暴力であるモラハラの立証は、身体的な暴力に比べて容易ではありません。また、認められる慰謝料額は数十万円から数百万円と、事案の悪質性によって大きな幅があります。証拠の準備状況や相手の出方、早期離婚をどこまで重視するか、その他の離婚条件をどこまでこちらに有利にできるか、などを総合的に考慮しつつ慰謝料請求の進め方を検討することをお勧めします。
(3)財産分与について
モラハラ夫の特徴として、自身が稼いだお金を妻に渡したくない(財産分与しない)と考える人も少なくありません。
そのため、財産分与での預貯金口座および残高の開示を求めても、開示に応じないケースもあります。
しかし、財産分与では、原則として夫婦で半分ずつ分与するというルールがあるため、上記のような理屈は通りません。
モラハラ夫が預貯金等の開示に応じない場合には、弁護士に依頼し、弁護士会照会や(調停や裁判時には)調査嘱託によって、金融機関に照会を行う方法もあります。
また、同居時に可能な限り相手方の財産状況を調べておくというのも有効な手段です。
(4)婚姻費用や養育費について
モラハラ夫は、経済的な締め付け(経済的DV)を行うこともあります。別居後もその傾向が続くことは少なくありません。
たとえば、離婚を拒否する手段として、「自分で子どもを養えないのに離婚するのはおかしい」などと、子どもを盾にしたり、あるいは別居後は「自分が好きで出て行った者に金を払う必要性はない」などと支払いを拒否することもあります。
また、調停等で婚姻費用や養育費を協議中も、自身の収入を過少に申告するなど、算定表に基づく適正な金額の支払いに抵抗することがあります。
調停などで決まった後も、支払いを遅らせたり、振り込まなかったりして、妻に精神的なストレスを与え続けることも。
対策として、口約束ではなく、万が一のときのために強制執行が可能な公正証書の作成や調停による取決めをしておくことが有効でしょう。
(5)面会交流について
基本的に、別居親は子と面会交流する権利をもっています。
これ自体は尊重しなければなりませんが、モラハラ夫は、こちらの都合を無視して頻繁な面会を強要したり、早朝や深夜に連絡をしてきたり、対応に困惑するメッセージを送ったりと、面会交流の調整自体がスムーズに進まないこともあります。加えて、決められた時間を守らない、勝手に場所を変えるなどのルール違反も見受けられます。
また、「子どもに会わせないなら養育費は払わない」と、養育費と面会交流をバーター(交換条件)にする主張を行うことがあります。
この点、養育費と面会交流は別問題であるため、そのような引換条件の理屈は通用しません。
対策として、モラハラ夫との直接のやり取りは精神的負担が大きいため、第三者機関(面会交流支援センターなど)を利用して受け渡しを行うこと、弁護士を窓口にして条件を詳細に取り決めることが有効です。
離婚を考える上で多くの疑問が浮かぶことでしょう。次に、モラハラに関してよく寄せられる質問にお答えします。
7. モラハラに関するよくある質問
(1)モラハラ夫が改善する可能性はあるのか?
残念ながら、モラハラ加害者が自らの意思で改善する可能性は低いと言わざるを得ません。
多くの加害者は自身の言動がモラハラであるという自覚がなく、「自分は正しく、相手に問題がある」と本気で考えているためです。
そのため、離婚の意思を伝えても、その後もモラハラが続くケースが多くあります。
(2)別居の時期はいつが良いか
「別居」と聞くと、とても大きな決断に感じる方もいるでしょう。
では、そのような別居時期はいつがいいのでしょうか。また、どんな準備をすべきでしょうか。
まず一番大事なことは、モラハラのケースにおいては、被害の拡大を避けることを優先的に考えるべきということです。
自身の精神的苦痛が大きい、自身や子らの心身にも影響が出ているのであれば、「可能な限り速やかに、今すぐにでも」準備を始めるべきです。
経済的な事情が問題となる場合は市役所や女性相談室などで相談し、シェルターの利用を検討しましょう。
若干タイミングを見計らうことができるのであれば、事前に弁護士相談をお勧めします。
離婚条件はどういったものでまとまりそうか、婚姻費用はいつから、どの程度の額入りそうかという見通しを立てましょう。
また、必要な証拠等も事前に取り揃えておきましょう。
そのうえで、当面(半年程度)夫からの収入が途絶えるケースも念頭におきつつ、①別居先と、②生活基盤の確保をしたうえで別居を実行しましょう。
依頼できるのであれば弁護士に依頼し、別居と同時に連絡の窓口を弁護士とすることもお勧めです。
次に、別居前に事前に協議すべきか、という点についてもお話しします。
この点、モラハラ夫は離婚を告げられたこと自体に激高し、その後も嫌がらせをしてきたり、あるいは一時的に機嫌をとって離婚を遅らせようとしたりしてきます。また、離婚を考え直させようと、「今後はこうする」などの約束をすることもありますが、結局あの手この手で理由をつけて約束を守らないこともしばしばあります。
さらに、その「約束」と引き換え、に妻側にも「約束」をさせ、妻が少しでもこの約束守らないと激しく批判し、「離婚しても不利になるだけだ」と脅すようなこともあったりします。
離婚や別居に応じたとしても、その後考えを翻して、別居をさせないように見張るような行為が増えることもあります。
したがって、事前協議はあまり意味を持たないことが多いと言わざるを得ません。
仮に事前協議をするとすれば、その内容はできるだけ録音をしておくこと、身の安全を確保すること、相手の出方をできるだけ予想して、対応はぶれないようにすることにご注意ください。
別居によって相手と距離を置き、安全が保障された環境において、対等な立場から離婚意思や主張を伝えることの方がかえって早く進むこともありますので、そちらも併せて検討ください。
相手に対して直接、離婚や別居を言うのは、想像以上に勇気がいり、恐怖を感じるものです。弁護士を通じて伝えるという方法もあります。
そして、別居の際には、以下の2つの事項は決めておきましょう。
(3)弁護士への相談タイミング
モラハラ事案では、上記の特徴のとおり、相手と対等な立場で話し合いを進めることはハードルが高いこと、二次被害に繋がるおそれがあることから、弁護士への相談の重要性は高いです。できるだけ早期の段階でのご相談をお勧めします。
「まだ離婚するかの決心がつかないのに相談していいの?」と思われるかもしれませんが、迷っている早期の段階での相談こそメリットが大きいです。
自分だけで抱え込まず、早い段階で専門家の見通しを聞くことで、不安を解消し、後悔のない選択ができます。
8. モラハラにお悩みの方へ弁護士ができること
モラハラ離婚は、一般的な離婚に比べて複雑で精神的な負担も大きいため、専門家である弁護士のサポートは不可欠です。
弁護士に依頼することで、以下のような強力なメリットが得られます。
あなたの「盾」となる
弁護士が交渉の窓口となることで、加害者からの直接の連絡や攻撃を完全に断ち切ることができます。これにより、精神的なプレッシャーから解放され、安心して新生活の準備に集中できます。
法的な戦略を立てる
どのような証拠が法的に有効か、どのタイミングで別居や調停を申し立てるべきかなど、離婚を有利に進めるためのポイントを押さえて専門的な戦略を立て、的確なアドバイスを提供します
代理人として交渉する
親権、養育費、財産分与、慰謝料といった複雑で感情的になりがちな離婚条件について、あなたに代わって冷静かつ法的に交渉し、あなたの正当な権利を最大限守ります。
二次被害を防ぐ
離婚協議や調停の過程で加害者が続けてくるモラハラ的な言動(二次被害)からあなたを守り、相手のペースに巻き込まれることなく、後悔のない納得のいく解決を目指します。
離婚の実現可能性を高める
モラハラの主張だけでは離婚成立が難しい場合に備え、別居期間などの他の離婚原因も組み合わせて主張を構成し、最終的に離婚が認められる確率を高めます。
9. モラハラ離婚に関する解決事例
モラハラ夫との解決事例を紹介します。なお、プライバシーの観点から、一部情報を若干改変しております。
相談者:40代女性
婚姻期間 10年以上
【状況】
夫に家計管理を奪われ、性交渉を強要されるなどのモラハラ被害。離婚調停では夫が逆に慰謝料を請求するなど、協議が難航。
【弁護士の介入と結論】
弁護士が代理人となり、夫の不当な請求を排斥。粘り強い交渉の結果、約1年数か月の調停を経て、依頼者の納得のいく条件で離婚が成立した。
相談者:40代女性
婚姻期間 10年以上
【状況】
夫が妻の容姿を侮辱したり、子の前で母親の悪口を言い同意を求めたりするモラハラがあった。共働きで夫も育児に関与していたため、親権争いが難航した。
【弁護士の介入と結論】
試行的な面会交流を重ね、面会ルールについて妻側の主張の大半を通した。親権についても、夫が子を巻き込んでいた点や子の意思を訴え、妻側が獲得した。その他の条件も相当な範囲で決着した。
相談者:40代女性
婚姻期間 10年程度
【状況】
専業主婦の妻を見下し、気に入らないことがあると生活費を減らすなどのモラハラがあった。財産分与や家計収支の協議が難航した。
【弁護士の介入と結論】
夫からの自宅修繕費の要求や細かい家計説明などの本筋から外れた要望に対し、無関係な質問は断りつつ、修繕費を財産分与で若干考慮する対案を示して早期離婚を成立させた。
相談者:30代女性
婚姻期間 10年内
【状況】
暴言、罰金制度、私物の廃棄などのモラハラ被害があった。妻の入院中に夫から離婚を切り出され、タイミングの調整が必要だった。
【弁護士の介入と結論】
夫はモラハラを認めず早期離婚を迫ったが、安易に応じず夫の問題行動を主張した。婚姻費用や養育費の協議を着実に進め、法的に適正な条件で離婚を成立させた。
相談者:20代女性
婚姻期間 10年内
【状況】
働けない妻への就労強要や厳しい家計チェック、また浮気を疑って外出時の不機嫌や頻繁な連絡をするなどのモラハラがあった。
【弁護士の介入と結論】
夫は当初、妻には判断能力がないとして離婚を拒否したが、弁護士が離婚の意思の固さと直接連絡禁止を繰り返し伝えた。最終的に面会や養育費など妻の希望に沿う形で、約1年で離婚が成立した。
相談者:40代女性
婚姻期間 10年以上
【状況】
妻に魅力がないと揶揄して侮辱する、また妻の面前で子に対し母親の悪口を述べ、同意を求めるといったモラハラ被害。
共働きであり、育児自体には夫も関与してきたことから離婚調停では親権を巡り協議が難航。
【弁護士の介入と結論】
面会ルールについても意見の相違があったが、試行的面会を重ねて妻側の主張の大半を実現させた。親権に関しても、夫が子を巻き込む言動をしていたことや、子自身が母との生活を希望していることを丁寧に訴え、妻側が獲得。その他離婚条件も相当な範囲で決着させた。
相談者:40代女性
婚姻期間 10年程度
【状況】
専業主婦の妻を見下し、気に食わないことがあった際は渡す生活費を極端に下げるなどするモラハラ被害。
離婚協議時、財産分与や同居時の家計収支について協議が難航した。
【弁護士の介入と結論】
夫からは、同居時についた自宅内の傷について修繕費の支払を求められたり、同居時の家計収支についての細かな説明を求められたりなど、離婚条件の本筋から外れる要望が続いた。離婚協議と無関係な質問については対応を断り、自宅内の修繕費は他の財産分与の中で若干考慮させる対案を提示し、早期に離婚を成立させた。
相談者:30代女性
婚姻期間 10年内
【状況】
妻に対してしばしば暴言を吐いたり、罰金と称して妻にお金を払わせたり、妻の私物を捨てるなどするモラハラ被害。妻が入院加療中で余裕のない時期に夫から離婚を切り出され、離婚のタイミングも含めて調整が必要だった。
【弁護士の介入と結論】
当初、夫はモラハラを認めず、妻の側にこそ問題があると主張して早期離婚を迫った。もっとも、これには安易に応じず、夫の問題ある言動を丁寧に主張した。また、まずは婚姻費用、次に子どもの養育費と、着実に子や妻に係る生活費に関して協議を進め、最終的には法的に相当な範囲の離婚条件を整えたうえで離婚を成立させた。
20代女性
婚姻期間 10年内
【状況】
事情により仕事ができない妻に対し仕事をせよと迫り、それができないなら無駄遣いをやめろと家計を厳しくチェックした。また、他に男性がいるはずと疑い、妻が外出すると不機嫌になったり、昼夜問わず頻回に連絡するなどのモラハラ被害。
【弁護士の介入と結論】
妻は自力で離婚を決める能力はないと強弁し、当初は強く離婚を拒否していた。弁護士が介入して離婚の意思が固いこと、妻に直接連絡しないようにということを繰り返し伝え、最終的には面会・養育費など妻の意向に沿った形で1年ほどで離婚を成立させた。
これらの事例のように、専門家のサポートは困難な状況を打開する力になります。もし今あなたが悩んでいるなら、どうか一人で抱え込まないでください。
10. 弁護士にご相談ください
夫婦だからといって、あなたが一方的に夫からのモラハラを我慢しなければならないわけではありません。
モラハラの被害は、あなたの心を蝕み、正常な判断力を奪っていきます。
一人でこの問題に立ち向かうのは、精神的にも物理的にも困難です。
あなたの、そして大切なお子様の未来を守るために、最も確実な一歩は、できるだけ早い段階で専門家である弁護士に相談することです。
弁護士法人 岡山香川架け橋法律事務所では、これまで数多くの男女問題、モラハラ問題に関するご相談をお受けし、解決に導いてまいりました。
また、あなただけでなく、子どもの視点に立った望ましい形での解決を提案することも当事務所の強みの一つです。
離婚は決して「人生の失敗」ではなく、あなたがその後の人生を取り戻すための、前向きな「リスタート」です。
あなたの苦しみに親身に寄り添い、最善の解決策をご提案します。
まずはお気軽にご相談下さい。
※法律相談は守秘義務のもと行われますので、ご安心下さい。
※弊所では、事務所での対面・ご自宅等からオンラインでの相談も可能です。
