トレント案件に関する重要なお知らせ(2025.11.4付け)

総務省がファイル共有ソフトの不適切利用による著作権侵害に関する注意喚起をした件について

最終更新日:2025年11月8日

1 総務省による注意喚起

2025年11月7日に総務省から「ファイル共有ソフトの不適切な利用による著作権侵害に関する注意喚起」が公開されました。

その背景として、

「ファイル共有ソフトの不適切な利用に関する発信者情報開示請求の件数は急激に増加しており、総務省が実施したアンケート調査によれば、令和6年にプロバイダに対して申し立てられた発信者情報開示請求 (訴訟、仮処分、非訟、任意請求)の総数154,484件のうち、約95.6%に相当する147,746件が、特定のファイル共有ソフトを用いたアダルト動画の著作権侵害を内容とする事案であることが分かっています。」

とされています。

ここでは「特定のファイル共有ソフト」とされていますが、内容に照らすと「ビットトレントシステム」であることは間違いありません。

また、この報道資料に引用された総務省による注意喚起のサイトによると、下記のように注意書きがあり、上記の発信者情報開示請求の件数の大半は「任意開示請求」の件数であることがわかります。

「※1 アンケート調査は、プロバイダに対し、任意で回答を求めたものであり、実態としては更に大量の請求がなされている可能性があります。なお、上記件数のうち大部分は任意請求によるものです。

このように総務省は、プロバイダーに大量に申し立てられている開示請求の実情に照らし、アンケートを実施の上で実情を把握したということです。

2 裁判所を通じた発信者情報開示請求の件数について(参考)

ちなみに、当事務所で確認しているデータだと令和6年12月時点で東京地裁の発信者情報開示請求事件は事件番号(通し番号)が12000番台でした。

このうち仮に95%がトレントの関係だとすると11400件程度は裁判手続きで開示請求がされていることとなります(なお、1つの事件で同時に複数、多数のIPアドレスに対する開示請求がされているのが通常ですが、その場合でも事件番号は1つであることには注意が必要です。)。

これに対して令和7年は10月末の時点で事件番号がすでに11000番台でした。

そうすると、昨年よりも今年の方がトレントを利用した発信者情報開示請求の件数は増加している可能性が高いといえます。

ただし、このことと、「任意開示請求」の件数の増減とは直接は結びつかず、任意開示請求がうまくいかない(不同意での回答が多い)などの理由から相当数が裁判所の発信者情報開示請求に移行している可能性は否定できません。

3 ファイル共有ソフト利用上の注意点

そもそもファイル共有ソフトは、単にダウンロードするだけでなく、自動でアップロードする設定になっていることから自分がアップロードに関与したことに気が付いていないまま、開示請求や損害賠償請求を受けることに気を付ける必要があります。

(そもそもダウンロード自体も著作権侵害ですが、トレント検出システムはアップロード行為を検出するシステムであることからアップロード行為が補足されるのです。ダウンロードも違法であることには変わりありません。)。

4 総務省の発表を踏まえて

総務省のアンケートは、急増している発信者情報開示請求手続きに苦労しているプロバイダーからの悲痛な叫びを踏まえて実施されたのではないかと予想しています。

プロバイダーとやりとりをしていると、開示請求は相当前に届いていたはずなのに、契約者への意見照会は何カ月も場合によっては1年とかという長期を経てやっと送られてくるというケースが少なくないのです。

担当者に聞いても、意見照会の発送作業が追い付いていないとの声を聞きます。

そのため、そもそもファイル共有ソフトの違法な方法での利用を阻止するべくアンケートの実施と総務省による公表、注意喚起につながったのだろうと思います。

そして、この公表等を通じて違法な利用が減る、止む方向に進むことは間違いないと思います。

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