他人の誹謗中傷をSNSで投稿してしまった。鍵付き投稿なので限られた人しか見られないがどうなるか。

限られた人を対象とする誹謗中傷投稿の責任についての問題です。この問題は、(1)投稿内容が名誉棄損に該当するものか否か、(2)侮辱に相当するものか否かによって結論が異なってきます。

【名誉棄損の場合】

まず、(1)の場合、名誉棄損罪が成立するための要件として、「公然性」が必要とされている点の検討が必要です。

すなわち、名誉棄損罪は、「公然と」事実を適示して人の社会的評価を低下させる行為であることから、投稿内容が第三者に知られる可能性がないと成立しません。そのため、不特定多数に向けてなされた投稿であれば当然に「公然性」を満たす反面、特定少数の場合には満たしません。

ただし、判例上、特定少数であっても、「伝播可能性」があるとされる場合には「公然性」を満たすと考えられています。この伝播可能性の判断は、ケースバイケースで行われることとなりますが、要は当該表現行為の際に、当該表現内容が特定少数に向けられたものであっても、これを聞いた者が他に広げる可能性があるかどうかで判断されるのです。

そして、かかる判例法理は民事上も同様に考えられていることから、伝播可能性が肯定される場合には鍵付きの投稿であっても名誉棄損が成立してしまいます。

【侮辱の場合】

次に(2)の場合ですが、侮辱罪ないし侮辱による不法行為は、表現の対象となった者の主観的な意識や感情を傷つけたか否かという問題です。

そのため、侮辱的な投稿であったとしても、対象となる者が直にそれを見聞きしないことには侮辱とはなりません。

よって、鍵付きでの投稿の場合には侮辱とはならないのが原則です。

ただし、鍵付きの投稿の内容が対象者に実際に見られた場合にはこれらの成立の余地があります。

執筆者:弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)
1979年 東京都生まれ
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山県倉敷市に岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更
2022年 香川県高松市に香川オフィスを開所
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