相続が発生したが、被相続人に借金があることが分かったため、相続をしたくないがどうしたらよいか、という問題です。
方法としては
(1)相続放棄をする
(2)限定承認をするという二つが考えられます。
(1)の相続放棄は、これをすることで最初から自分が相続人ではないとする制度です(民法938条)。相続人ではなくなるので、借金もそうですし、プラスの財産も相続することはできません。
また、相続放棄は、相続開始があったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所に手続きをとらないと認められません(民法915条1項、938条)。
(2)の限定承認は、相続によって得た財産の限度で借金を弁済すれば足りるという限定を付した相続です(民法922条)。相続人であることに変わりはないものの、仮に被相続人の借金の方が、プラスの財産よりも大きかったとしても、プラスの財産の限度で弁済すれば足りることとなるので相続人自身の財産での弁済は逃れることができます。
例えば、被相続人の借金が500万円で、プラスの財産が200万円だった場合、200万円の限度で弁済すればあとの300万円は弁済の必要がなくなります。
限定承認は、「借金があるかどうかわからない」とか「借金があるとは聞いているが金額がわからない」というような場合に便利な制度です。
この限定承認も上記同様に3か月以内に家庭裁判所での手続きをする必要があります。
なお、時折、ご相談で、「自分は相続放棄をした」とか「他の相続人には相続放棄をしてもらっている」とご説明をする方がいるので、「その相続放棄はきちんと3か月以内に家庭裁判所で手続きをしていますか?」と確認をすると、「いいや、ただ単に紙に一筆もらっただけ」という返答を受けることがあります。
しかし、これでは法的な意味での相続放棄の要件を満たしませんので相続放棄の効力は生じません。