会社から通勤手当が支給されている場合には、実際にその支給される交通費を、申告したとおりの通勤手段で用いることが前提となっています。
たとえば電車通勤で申告し、その電車賃を交通費としてもらっている場合には、電車賃を浮かそうとして電車通勤をしないで通勤したり、運賃の安い手前の駅で降りてその後徒歩で通勤するなどすれば、本来は浮いた運賃について会社から受領する訳にはいきません。
なので、この不正が発覚した場合には会社から何らかの処分が出されることも十分にありえます。
そして、通勤手当の不正受給が原因で懲戒解雇となった場合には、不正受給した金額の大小や、不正受給の手口の悪質性などを考慮し、懲戒解雇の相当性を判断することとなります。
不正受給の期間が長く、金額も高額で、申告した通勤方法をまったくとらずに通勤していたような場合には懲戒解雇となることもやむを得ないとして敗訴する可能性が高いといえます。
「ほかの人もやっているから。」というだけでは懲戒解雇を免れるのは簡単ではありません。通勤経路を偽る、引越したのに従前とおりの通勤手当を受け取り続けているという場合、これは会社に対する詐欺にあたります。くれぐれもご注意ください。
執筆者;弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)
1979年 東京都生まれ
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更