裁判所にはどういう服装で行けばよいですか?スーツなど着ないとだめですか?
1 はじめに
当事者や尋問を受けることになる証人の方から、裁判所に出向く際に「ふさわしい服装」ないし「スーツ着用の要否」について聞かれることが多々あります。
この点、結論的には「常識的に考えて過度に派手でない服装、だらしなくない服装」であれば構わないとお答え、ご説明をしています。また、スーツ着用も特には必要ありません。
実際、裁判所の公式HPでも傍聴の際のマナーに関してではありますが、以下のように記載されており、服装は原則自由とされています。
「服装は自由ですが,厳粛な裁判の妨げにならないように,落ち着いた服装が望ましいとされています。なお,法廷では帽子を脱いでいただくようにお願いいたします。」
このようにご説明をしていますが、裁判所に出向くという一生に一度あるかないかの機会に失敗はしたくないとのご不安に答えるため、以下、ケースに応じ、より詳細にご説明をします。
2 民事裁判の期日
民事裁判の期日の際に、当事者本人として出頭するケースとしては、口頭弁論期日、弁論準備期日、和解期日、尋問期日などが考えられます。
まず、結論としてはいずれの期日においても、スーツ着用は必須ではありません。それでも裁判官に良い印象を与えたいとのお考えがあるならスーツを着用しても構いません。とはいえ、当事者本人の方が、これら期日に敢えてスーツを着用して来ていると、緊張しているのかと思われ、雰囲気がかえって固くなることもあり得ます。
なので、そこまで意識的にスーツを着用する必要はやはりありませんし、かえって緊張を生むことにもなると思います。
ただし、自らに落ち度があることが明白な事案で、被告として訴えられるなどしており、これら期日に臨む場合、とりわけ尋問期日の場合には、自己の反省の態度や事案に真剣に望んでいることを示すために、スーツを着用することが望ましいこともあります。
したがって、基本的にはスーツを着用するまではないものの、事案によっては着用をすることが望ましいといえる場合もあると言えます。
3 刑事裁判の期日
刑事裁判の場合には、勾留が継続していれば法廷で着用することのできるスーツの用意を弁護人と事前に協議しておくことが望ましいです。
他方で、在宅事件や保釈されているケースでは、事案の性質にもよりますが、スーツを着用しても良いかもしれません。とはいえ、もともとスーツは持っていないとか、経済的な理由で用意できない場合にまで無理をすることはありません。刑事事件であったとしても、スーツを着用していないからといって量刑上不利になるということは考えられません。
4 家事、民事の調停期日
家事、民事の調停手続きは非公開の手続きのため、直接接するのは調停員や裁判官、書記官であり、いわゆる傍聴人に相当する人はいませんし、相手方や相手方弁護士にも直接は接しないのが通常です(調停成立時や双方同席でのやりとりをお互いが了解した場合を除く)。
また、調停はお互いの話合いにより事案解決を試みるものですから、尋問期日のように一方的にあれこれと詳細を聞かれるとか、責められるというものでもありません。
そのため、刑事、民事以上にスーツ着用の必要性は低いと言えます。
5 まとめ
いずれのケースについても、基本的にスーツを着用することの必然性まではなく、過度に派手とか過度にラフということがないかぎり、どのような服装であっても問題はないと思って頂いて構いません。
それでも気になる、心配だということであればスーツを着用するか、事前にどなたかにご相談されることをお勧めいたします。