A(不倫夫)とB(不倫女)が不倫をし、Aの妻であるCがBに慰謝料を請求したところ、BからCに、「求償権を放棄するので慰謝料を半額にして欲しい」と求められた。この「求償権」についてご説明します。
まず、不倫はAとBとが共同してCの夫婦婚姻生活の平穏を侵害する不法行為になるところ、AとBは共同不法行為をしたことになり、Cに対して「連帯責任」を負います。
そのため、Cは、(1)Aに対して、(2)Bに対して、(3)A及びBに対して慰謝料を請求することができます。
そして、たとえばBがCに慰謝料を払うと、Bは、連帯責任の関係にあるAに対して「支払った慰謝料額の半額(程度)」をAの負担部分として求めることができるのです。これをBのAに対する「求償権」といいます。
そうすると、CとしてはせっかくBに慰謝料を払ってもらっても、後にAを通じて半額を返すような計算となってしまいます。そのため、当初から求償権は放棄してもらった上で、ただし、相場の慰謝料の半額で示談なり和解なりをすることがあり得るのです。
Bはこのことを念頭に、Cに対して上記のような提案をしてきているものです。
Cとすれば、不倫はあったものの、以後もAと離婚せずに生活をするのであるなら、Bとの示談後にBからAに求償権の行使をされるのもいい気がしないでしょうから、予め求償権の放棄を念頭に示談ないし和解をすることも考える余地があるのです。
他方で不倫を契機に離婚をした(もしくはする)場合には、BがAに求償権を行使しても何ら問題ないでしょうから、求償権を放棄しての示談ないし和解は断ればよいと思います。
なお、求償権の行使でBがAに請求できるのは上記のとおり「半額(程度)」と書きましたが、これは常に半額というわけではなく、不倫の責任の程度をAとBとで勘案し、Aの方が重いようであれば6:4というように求償権行使できる額を調整することがあるためです。
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更