離婚、DV、モラハラについての具体的解決のための検討事項〜どのような場合に慰謝料や離婚が認められるのか〜
2020/12/6 11:19
執筆:oh
離婚の悩みを抱えたケースで、「自分の置かれた状況は、DVに該当するのではないか。」「モラハラに該当するので離婚の慰謝料が認められるのではないか。」「これだけの被害を受けているのであるから当然に離婚が認められるのではないか」とお悩みのご相談が多々あります。
離婚問題は、多くが家庭内の出来事ですし、離婚を考えるに至った事情もあまり他人に話せずにいるという事も多いため、ご自身の置かれた状況が、法的に見ていわゆるDVやモラハラ、離婚慰謝料、離婚ができるのかなどの判断が難しくなっています。
そこで、いわゆるDVやモラハラ、離婚慰謝料や離婚の可否について少しご説明します。
まず、DV被害に対しては、DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)に基づく保護命令の制度があります。ただし、現行のDV防止法は、配偶者からの身体的暴力や脅迫に限り保護命令の対象としており、精神的暴力、性的暴力、経済的暴力に対する適用がありません。
そのため、DV防止法による救済を受けるためにはとにかく身体的暴力についての証拠が必要です。(現在、日弁連では、このようなDV防止法の問題を法改正するよう意見書を出しています。https://www.nichibenren.or.jp/document/opinion/year/2020/201020.html)
次に、モラハラとよばれるケースについての慰謝料の取り扱いです。そもそも、DVの概念については身体的暴力に限らず、精神的な苦痛を与える行為や性的な苦痛、経済的苦痛も同様に扱うべきですが、様々な理由から精神的苦痛に対する慰謝料は容易には認められません。
婚姻生活中に、お互いが言い合うなどの口論であれば、当然、一方だけが慰謝料を支払うことにはならないのは当然ですし、仮に一方のみが他方に対して精神的苦痛を与え、これが離婚の原因であったとしても、精神的苦痛の立証が困難なことが多いためとも言えます。
とはいえ、これが立証できたのであれば、当然、離婚慰謝料として肯定されて然るべきものです。
ただし、離婚は複合的な理由で成り立っていることが多いため、そもそも裁判所が離婚慰謝料を認めるのは、「離婚に至る理由が、もっぱら一方当事者に原因があると明らかに認められる場合。」に限定しているように見受けられます(言い換えるとほとんどのケースでは裁判所は離婚慰謝料を認めてくれない。)。
最後に、DVやモラハラが離婚原因として離婚を認めてくれるかどうか、ですが、これはこのような事情をきちんと主張立証することで、「婚姻関係を継続し難い重大な事由」に該当する認め、離婚の判決を受けることが十分に可能です。
以上を踏まえると、DV防止法は、接近禁止や刑事罰などを含む重大な効果をもたらすのでその適用範囲をかなり限定していること、離婚慰謝料については、離婚を認めるだけではなく、一方当事者に金銭的賠償を肯定するものであることから、やはりその範囲を限定しているものと言えます。その上で、離婚自体については、離婚に相当する事情があればこれを認めるのが裁判所の考え方と言えそうです。