インターネット名誉棄損関係での発信者の特定が大変な理由
当事務所でも積極的に取り組んでいる発信者情報開示請求ですが、様々な事情から、開示に至るまでのハードルが高い分野です。その理由を、手続きの流れに沿ってご紹介します。
第1に、投稿をされた掲示板やSNSサイト対して、「IPアドレス及びタイムスタンプ」の開示を求めます。これは、任意での請求に応じるサイトもあれば、仮処分という法的手段によらないと応じないサイトもあります。
第2に、開示されたIPアドレスなどを踏まえて、当該投稿の際に用いられたプロバイダーを調査します。これは、WHOIS検索というネットで公開されている仕組みを使うだけなので、簡単にできます。
第3に、判明したプロバイダーに対して、当該投稿をした投稿者の情報を削除しないように求めます。これは、任意で応じるプロバイダーもあれば、やはり仮処分によらないと応じないプロバイダーもあります。
第4に、さらに引き続いて今度は、プロバイダーに対して発信者情報開示請求訴訟を起こします。
第5に、同訴訟の結果、当該投稿が名誉棄損であるとか、プライバシー侵害であるとの裁判所の結果(=判決)が出れば、無事に開示に至ります。
非常に煩雑で長くかかる手続です。弁護士でも早急な対応、専門的な対応を求められ、決して簡単ではない手続です。
ただ、昨今はネット上での誹謗中傷被害への救済の観点から、より早期かつ簡易に開示手続ができるようにしようとの制度改正の検討が進んでいます。その中では、サイト運営会社が保有する投稿者の「携帯電話番号」も開示の対象に含める改正が検討されています。まず間違いなく近いうちに改正になると思います。
仮にこれが実現すれば、掲示板やSNSの運営会社に対して直接、携帯電話番号を含めた発信者情報開示請求訴訟を提起し、無事に勝訴判決になれば、携帯電話番号が開示されます。
被害者としては、当該携帯電話の持ち主に対して当該投稿の責任を問うことが可能になるので、上記の第1から第5までの手続きがいっきに省略できます。