「本名を名乗れ」と要求することの乱暴さ
在日コリアンの男性に、社長が通称名ではなく、本名を名乗るよう要求したことが「自己決定権を違法に侵害する」として損害賠償を認めた判決が静岡地裁で言い渡されました。
これまでは、在日コリアンのアイデンティティの問題として、本名を名乗っている在日コリアンに対し、会社の便宜等の観点からあえて通称名を名乗らせたことの違法性が問題になることが多かったと思います。
しかし、今回のケースはこれとは逆で、長らく通称名で生活してきたこと、そのことを社長も知っていたこと、通称名を選択するか本名を選択するかは自己決定権の問題であることなどとして、本名の強制は違法、と判断したものと思われます(判決文は入手できておらず、推測です。)。
このニュースに触れて、在日コリアンとして本名で生活してきた自分として、いろいろと考えました。
まず、私は、通称名を持たずに本名でずっと生活してきたので、この男性の気持ちそのものにはなれない部分があります。
しかし、この男性が、本名、通称という間の中で苦悩して生活してきたであろうことは容易に想像がつきます。とりわけ、会社の社長を相手に訴訟したということはよほどのことがあったのでしょう。
また、本名を名乗るかどうか以外でも、在日コリアンについては、本国で生活するのか否か、帰化するのか否かなど、いろいろな場面で2者択一を迫られてきた歴史があります。
その中で、一番大事なことは、ひとりひとりの自己決定権であり、どの選択をしようともその決定自体は最大限に尊重されるべきだ、ということだと思います。
通称名の利用を選択したことを他人に非難される理由はないのです。本名を強制される理由はないのです。
自分らしく生きることをお互いが認め合う大切さをこの判決は示唆しているように感じました。誰しも自分が大切にしているものを踏みにじられたくないはずです。
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