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法律の庭

モラハラ夫と離婚する方法は?~離婚弁護士の解説~

このコラムでは、モラハラ夫と離婚はどうやったら離婚できるのか?という点でお悩みの方(特に妻側)の観点から、どうやったらモラハラで離婚ができるのかを離婚問題に詳しい離婚弁護士の立場からアドバイスをしています。

このコラムで正しい知識を身につけて、モラハラで離婚を考えた際の解決のための参考にしていただければと思います。

 

【目次】

1 モラハラ夫との離婚の方法は?~まずはモラハラを理解する~
 ⑴モラハラ夫との離婚の決意と妻の悩み
 ⑵モラハラとは何か?
 ⑶モラハラの具体例
 
2 モラハラ該当性の判断基準について
 
3 モラハラ加害の主体について
 ⑴モラハラ加害者は夫か妻か?
 ⑵夫によるモラハラが多い理由について
 ⑶妻からのモラハラについて
 
4 何がモラハラの証拠になるかについて
 ⑴モラハラの証拠の重要性
 ⑵何がモラハラの証拠となるのか?
 
5 モラハラ離婚を主張をする際の注意点は?
 
6 モラハラ夫との離婚と弁護士への相談のメリットは?

 

【本文】

1 モラハラ夫との離婚の方法は?~まずはモラハラを理解する~

 ⑴モラハラ夫との離婚の決意と妻の悩み

 たとえば夫からのモラハラ行為に心身ともに打ちひしがれて、妻が夫との結婚生活に終止符を打とうと離婚(場合によっては長年のモラハラに耐えかねた熟年離婚のことも)を決意した際に、

 

「果たして本当にモラハラを理由に離婚ができるのか?」

「慰謝料はもらえるのか?」

「親権は確保できるのか?」

「今後の養育費の支払いはきちんと確保できるのか?」

「離婚の話を失敗しないで進めるにはどうしたらよいか?」

 

など多くの悩みを抱えることでしょう。

 

 

 当然、その対応に苦慮することとなり、場合によっては、すでに離婚を切り出したが夫が離婚に応じてくれないとか、過剰な条件を突き付けられたため協議離婚が合意に至らず、離婚調停手続きに至っている方も多いことでしょう。

 

 

 そもそも日ごろの夫婦生活の中で、繰り返しモラハラ行為を受けてきた当事者たる妻は、モラハラ夫の言動の影響のために「夫婦生活がうまくいかないのは自分(妻)のせいである」と思いこまされています。

 

 そうした状態におかれた妻が離婚を決意した時点で、上記のような内容の悩みにぶつかるのです。

 

 では、こうした悩みを抱えた妻は、そもそもモラハラ夫と離婚ができるのか(夫が離婚に応じれくれるのか)、もしくはどのような行動をとれば離婚を実現できるのでしょうか?

 

 言い換えると、どのような方法をとればモラハラ夫と離婚をすることができるのでしょうか?

 

 以下、この記事では、そもそもモラハラとは何かを説明した上で、その対策やモラハラ夫の特徴を紹介し、モラハラに至る原因や理由なども踏まえてモラハラ夫と離婚できないのか?についてその対応方法も含めた解説をしたいと思います。

 

 

 この記事をお読みいただき、モラハラ夫との離婚のために必要な準備をよくご理解頂き、適切に問題解決に臨んで頂ければ幸いです。

 

 なお、このコラムでは、モラハラによる離婚の方法そのものにポイントに絞って解説をしています。モラハラによる慰謝料の獲得の可否や相場などは別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。

 

 「モラハラ離婚で慰謝料を獲得するためには?~実例を踏まえた弁護士解説~」

https://kakehashi-law.com/modules/terrace/index.php?content_id=187

 

 

 

 ⑵モラハラとは何か?

 モラハラ離婚を考えるに際して、まず基本的な知識である「モラハラ」について知識を整理し、理解をしておく必要があります。

 

 そもそも、「モラハラ」とは「モラルハラスメント」の略称であり、倫理や道徳、常識やあるべき姿を根拠として他人に対して嫌がらせ行為をすることを意味します。

 

 

 この点、厚労省では職場内でのモラハラに関し「言葉や態度、身振りや文書などによって、働く人間の人格や尊厳を傷つけたり、肉体的、精神的に傷を負わせて、その人間が職場を辞めざるを得ない状況に追い込んだり、職場の雰囲気を悪くさせること」と定義をしています

https://kokoro.mhlw.go.jp/glossarycat/mentalhealth/#mentalhealth-ma)。

 

 この厚労省の定義は、決して職場内の人間関係に留まるものではなく、夫婦関係においても妥当するものですから、配偶者の言葉や態度により自分の心、人格や尊厳を傷つけられるなどした場合にはモラハラ行為があったものと認めて差し支えありません。

 

 

 ⑶モラハラの具体例

 上記のように、夫婦間におけるモラハラを定義すると、配偶者の言葉や態度により自分の人格や尊厳を傷つけられた場合にはモラハラに該当することとなります。

 

 とはいえ、このような抽象的な定義だけでは、実際に自分が受けていることがモラハラに該当するのかどうかの判断がつきません。

 

 また、そもそも夫婦として生活を送る中で口論などケンカになることは通常あり得ることですし、そうした中で多少、ひどいことを言ったり言われたりすることもあることです。さらに、物に当たるなどの行動も同様です。

 

 

 では、そうした前提を踏まえて具体的にどのような行為であればモラハラに該当するといえるのでしょうか?

 

 以下、いくつかの具体例やモラハラの内容を一覧にして挙げてみたいと思います。これらに該当する行為があれば、モラハラの可能性を疑って、これ以上の我慢はやめて、離婚を進めることを考えても良いと思います。

 

①同居中から生活費を(十分に)渡さない。

②お金の使い道を必要以上に細々とチェックしたり、やたらと財産の管理をする。

③行動を制限する(友人や会社の集まりを認めない、時間を厳しく制限する)。

④過剰にLINE、メール、電話で連絡を求める。

⑤アホ、馬鹿などとの言葉を頻繁に使い、その他暴言を言う。場合によっては無視をする。

⑥別居後も子供のことについて過剰に口出しをする

⑦面会交流について過剰な要求をしてくる

 

 以上のような例のうち、①、②は経済的な支配(コントロール)であり、③、④は行動に対する支配(コントロール)です。⑤は精神的な抑圧行為であり、⑥、⑦も子どもを通じた支配(コントロール)そのものです。

 

 ようするに、これらから見て分かるのは、モラハラ加害者は、加害行為を通じて相手を自分の思うように支配(コントロール)したいのです。

 

 

2 モラハラ該当性の判断基準について

 では、以上のような「モラハラ」の定義や具体例を理解した上で、具体的にどのような程度に至ればモラハラと認められるのかを検討したいと思います。

 

 そもそもモラハラに該当するかどうかは、非常に微妙な問題であり、具体的にどこまでの行為があればモラハラとして違法なものと認定されるかに関しては、客観的な一律の基準がある訳ではありません。また、何をもってモラハラと言えるのかの簡単な基準もある訳ではありません。

 

 そのため、個別の行為を総合的に判断し、必要性、相当性の有無や程度により判断するのが妥当だと考えます。

 

 すなわち、当該状況において何ら必要性もないのに舌打ちをする、必要以上に大きな声で非難する、馬鹿にする、大きな音でドアを閉めるなどという行為があり、これが日ごろ頻繁に繰り返されていたというような事情があればモラハラ行為と認定が可能だと言えます。

 

 また、何らかの理由で配偶者を非難する必要がある場合でも(たとえば配偶者が何か間違えをしてしまった場合)、その非難の仕方としてあまりにも長時間に及ぶ近所中に聞こえるように非難し続ける、反省文を大量に書かせる、些細な点についていつまでも追及を続けるという行為は相当性を欠くものといえるのでモラハラ行為との認定が可能です。

 

 

 このように、モラハラ行為との認定については程度問題になることが多くかつ配偶者によりされた行為が証拠に残りにくいので後日、証明しにくいという特徴があります。

 

 したがって、その点を踏まえてモラハラ行為の該当性を判断する必要があります。

 

 

3 モラハラ加害の主体について

 ⑴モラハラ加害者は夫か妻か?

 以上のようなモラハラは、夫であろうが妻であろうがその加害の主体となることがあります。 

 とはいえ、実際には、夫婦間でのモラハラ被害の相談は、多くは(そのほとんどは)女性すなわち妻からです。このことから言えるのは、夫の方がモラハラ加害者となりやすく、妻がその被害に遭いやすいということです。

 

 ⑵夫によるモラハラが多い理由について

 なぜ夫によるモラハラが多いのかですが、その理由は以下のものが考えられます。

 まず、男性と女性とで物事に対する捉え方の違いがあるところ(男性の方が得てして論理的、合理的な思考傾向にある反面、女性の方が情緒的、感覚的に思考することがあるため、どうしても夫婦間でのルールや取り決め、会話内容などは夫の方が細かい点に拘ったり、確認を求める傾向が出やすい)、その違いから夫が妻にモラハラをすることが多くなるのだと言えます。

 

 また、男性は女性に比べてプライドの高いタイプの方も多く、そのようなプライドのために妻に対するモラハラに出る方も少なくありません。

 

 他にも、とりわけ古い家族観や男女間に対する拘りが強い男性の場合には、「女性はこうあるべきだ(専業主婦で家庭を守るべきだ、家事は女性がするべきだ、子育ては女性の責任だ、家計管理は女性がしっかり行うべきだ、女性は夜遅く出歩くべきではない、妻は姑との関係を大切にするべきだなど)」という価値観に捕らわれ、かつこれら価値観を女性に押し付けがちです。

 

 結果、経済的なモラハラ、妻の行動に対するモラハラ、子育てや子どものことに関するモラハラなどが横行してしまうのです。

 

 当然、これら各種のモラハラはどれか一つに絞られることはなく、複数のモラハラが複雑に絡み合って構成されます。

 

 ⑶妻からのモラハラについて

 とはいえ、妻からのモラハラがまったくないかというとそういうことはありません。上記のような男性と女性との性格ないし思考方法の違いはあくまで傾向に留まりますし、当然、個人差が生じます。

 

 そのため、女性でも論理的、合理的に緻密に物事を捉えたりするタイプの方であれば、大雑把なタイプの夫に対していつの間にか細かい要求や質問、ルールの強要を繰り返すなどしてモラハラ加害に至ることがあります。

 

 また、前よりも女性の社会進出は進みましたし、家庭観家族観に対する個人や社会の認識も相当変化してきました。そのため、女性は家庭に、子育ては女性に、家事は女性にというような考え方の男性も減ったことから、反面、女性からのモラハラも増えているのです。

 

 このように、夫婦間でモラハラが常に夫からということも限らないので、夫であっても妻からモラハラを受けたと感じるようであれば離婚の際にその主張をすることがあってまったくおかしくありません。

 

 

4 何がモラハラの証拠になるかについて

 ⑴モラハラの証拠の重要性

 モラハラの実態やどのような場合にモラハラ該当性が認められるかを理解した上で、次に、何がモラハラの証拠となるかについて解説をします。

 

 当事者がモラハラだといくら感じ、それを調停を申し立て、また訴訟ないし裁判で訴えても仮に証拠になるものはまったくなければモラハラ夫(妻)との離婚は実現しません。調停委員も裁判官も、証拠に基づかない主張には十分に耳を傾けてくれることはないのです。

 

 そのため、モラハラの証拠を残すことはこの問題を解決するためにとても大切です。

 

 ⑵何がモラハラの証拠となるのか?

 ところが、モラハラ行為の多くは言葉や行動によるものです。当然、言葉や行動によるものを形に残し、証拠とすることは容易ではありません。また、家庭内でのことが大半であるため、その意味でも証拠として残りにくい側面があります。

 

 そのため、モラハラ行為が一度や数回あったという程度の証拠では弱く、継続的に長期間に渡りモラハラ行為があったことの証拠を揃えることが望ましいです。

 

 具体的には、以下のとおりです。あくまで具体例なので、その他のものでも証拠になることはあります。

 

①録音や録画(スマホでOK)

②メールやLINEの文面の保存(スクリーンショットやテキストデータでの保存)

③自身で付けた日々の日記(日付の特定を含めて具体的に)

④目撃者の証言記録(子どもや家族、友人知人)

⑤モラハラ被害の相談をした相手の陳述や証言

⑥心療内科や精神科の医師の診断書やカルテ

 

 

 その上で、これらのうち複数を用意するよう心掛けてください。そして、これら証拠を調停や裁判で提出し、自分の受けた被害を明らかにしてください。これらが、離婚や親権、慰謝料などについて自分に有利な結論への第一歩となります。

 

 

5 モラハラ離婚を主張をする際の注意点は?

 以上のとおり、モラハラはそれが離婚原因や離婚慰謝料と認めてもらうためには非常に高いハードルがあります。そもそも相手方配偶者による行為がモラハラに該当するのか、その証拠があるのかが問題となるためです。

 

 当然、モラハラによる加害者と言われた相手方配偶者は、モラハラ行為を否定します。

 

 モラハラ夫は口が達者で理屈っぽいことも多いので、生半可な臨み方では勝てません。

 

 仮に離婚を前提とした協議が進むことになっても、モラハラ夫からは事細かな条件が提示されたりし、その条件闘争の際にさらにモラハラ被害者の心の傷が深くなることもあります。

 

 このように、そもそもモラハラ夫とは離婚に向けての話し合い自体が容易ではありません。というのもモラハラの相手は、自分の落ち度や言動を認めることはなく、正当化するのが常だからです。

 

 そのため、協議離婚にしろ家庭裁判所による離婚調停にしろ、慎重な準備が重要です。離婚の条件として、親権、養育費、財産分与、年金分割などのことを取り決めることも必要ですが、それらそれぞれについてモラハラの相手からの執拗な嫌がらせや要求を受けることもあります。

 

 ましてや離婚調停も成立しない、不成立となると最後は離婚裁判を起こすしかありませんが、モラハラ夫との離婚裁判は長期化する傾向にあるので覚悟と第三者によるアドバイスやサポートが必要です。

 

 そうしたことを考えると、いずれの方法で解決をするにしても、モラハラで離婚を争う際には、単にモラハラの主張だけで争うのではなく、他にも離婚を勝ち取るための手段を考え、用意をしておいた方が得策です。

 

 たとえば、モラハラの他にDV・暴力があったとか、性格の不一致が著しいとか、夫による不倫・不貞・浮気があったとか、すでに別居しており、別居期間が相当長期に渡るとかといった事情をもって離婚を争うことがあり得ます。

 

 当然、モラハラ離婚の取り扱いのある弁護士への相談や依頼も非常に有効です。弁護士を間に立てることはモラハラ夫からの攻撃を直接受けずに済むことを意味します。上記のように、モラハラの加害者は、モラハラを通じて相手を支配(コントロール)することを重視しているので、弁護士という第三者が介在すると、一気にこの支配が及ばなくなり、離婚に向けて話が進むことが多い傾向にあります。

 

 逆に言うと、モラハラ夫との離婚のために協議離婚(交渉による離婚)や離婚調停の際に、弁護士を介在することなく本人でやりとりをすることは、直接攻撃を受けることとなり、さらなる被害の増大に繋がりかねません。

 

 なお、このようなモラハラの配偶者との離婚のために弁護士に相談するメリットについては別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。

 

 「モラハラで離婚をする際に弁護士に相談をするメリットについて」

https://kakehashi-law.com/modules/terrace/index.php?content_id=208

 

 

6 モラハラ夫との離婚と弁護士への相談のメリットは?

 以上のように、モラハラはそもそも非常に抽象的な概念であること、構造上、証拠が残りにくいこと、モラハラを主張することで紛争が激化し易いこと、モラハラを主張するケースでは親権や財産分与、養育費、慰謝料などについても争いが生じやすいことなどいわゆる一般的な離婚の問題よりも難しい問題を多く含んでいます。

 

 そもそもモラハラが民法上の離婚原因(婚姻を継続し難い重大な事由)に該当するのか、該当するとして具体的にどの程度であれば該当するのかという問題も含んでいます。

 

 そのため、モラハラを主張し、モラハラ夫との離婚や解決を真剣に考えているケースではやはり弁護士への相談と依頼をご検討いただくことが望ましいといえます。この分野に詳しい専門家たる弁護士への具体的な経験を踏まえたアドバイスを受けることがこの問題の解決に非常に有効です。

 

 また、ご本人ではモラハラをする相手との離婚協議などの対応ができない場合にも、専門家に窓口になってもらうことでスムーズかつストレスの少ない、後悔のない納得の結論になる可能性が高まります。

 

 なお、ご相談のおすすめのタイミングとしては、できればモラハラによる離婚を少しでも考えた時点と思ってもらえればと思います。初回の相談から、弁護士によるモラハラによる離婚の可否の見込みやできるだけ有利な進め方の注意点などについてアドバイスを受けることが可能です。

 

執筆者;弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)
 
1979年 東京都生まれ
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山県倉敷市に岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更
2022年 香川県高松市に香川オフィスを開所
 

 

 

 

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