不倫の慰謝料相場や相手方に請求できる弁護士費用などについて知りたい
このコラムでは、不倫、不貞行為の際の慰謝料の相場について、示談による場合、訴訟による場合とで分けて解説をしています。また、不貞の証拠のために調査会社に依頼した際の費用や弁護士費用についても双方がどのように負担すべきかを解説しています。
【目次】
1 不倫による慰謝料請求の相場について
2 不倫による慰謝料額の相場はいくらか?
【本文】
1 不倫による慰謝料請求の相場について
夫や妻すなわち婚姻関係にある自分の配偶者の浮気、不倫により被った精神的苦痛を浮気相手、不倫相手に請求するに際して具体的にいくら請求できるか、支払いを受けられるかはこれから慰謝料請求をしようと思う不倫被害者にとって重要な関心事です。
また、婚姻している相手と浮気、不倫をしてしまった当事者にとっても、具体的にいくらの支払い義務を負うことになるのかについてやはり重要な関心事です。
さらには、慰謝料のみではなく、解決のために必要となった調査費用(調査会社へ支出した費用であり、ホテルへの出入りの写真などを内容とする調査報告書が作成されます)や弁護士費用についても、法的には相手方に請求ができるのか、もしくはできないのか、自分が負担をしないとならないのか気になる点だと思います。
そこで、ここでは浮気、不倫の際に慰謝料や弁護士費用、調査費用として具体的にいくらの請求が可能なのか、その相場などをご説明いたします。その上で、不倫による慰謝料等としていくらが相場なのかをご理解いただき、方針を検討の上で事案の解決に臨んでいただけますと幸いです。
なお、不倫による慰謝料請求の具体的な根拠や裁判例の考え方、慰謝料額についての説明は別のページに詳細に説明をしているのでそちらもご参照ください。
「不倫による慰謝料請求の根拠や慰謝料額について」
https://kakehashi-law.com/modules/terrace/index.php?content_id=176
2 不倫による慰謝料額の相場はいくらか?
⑴はじめに
不倫により請求できる慰謝料額ないし浮気、不倫相手方から支払いを受けることのできる額については、積み重なる過去の不倫慰謝料請求訴訟による判例上の相場が相当程度確立しています。
他方で、訴訟ではなく示談による解決の際には、かかる裁判所の慰謝料相場とは別に当事者間の交渉の結果、慰謝料額が決められることから、示談交渉の場合には、裁判の場合の相場とはやや異なる形で慰謝料額が決まることが多いです。
そこで、ここでは不倫による慰謝料額について、まずは訴訟による解決の場合と、示談による解決の場合で分けてご説明いたします。いずれにしても、示談による解決や訴訟による解決があり得、相場としても非常に流動的な側面もあることから、ご自身での判断が難しいと考えた際には弁護士への相談をお勧めします。
⑵訴訟により解決する場合の慰謝料額の相場について
不倫による慰謝料を訴訟で解決しないといけないのは、示談交渉による解決が無理だった場合もしくは無理だろうと考えられるため、訴訟での対応をしないとならない場合です。
すなわち、当事者間もしくは代理人弁護士間で協議や話し合いをしてもお互いの慰謝料に対する考え方や条件についての隔たりから、協議ないし合意がまとまらない場合やその可能性が高い場合です。
その結果、訴訟に至ると最終的には裁判所の判決により慰謝料額が算定されます。その際の判断要素はやはり上記で引用したページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
そして、裁判所による慰謝料算定は、100万円から200万円の範囲内で決まることが多く、かつ多くの事案では裁判所は150万円の慰謝料額を認めるべき事情があるかないかを基本にし、その上で減額すべき事情もしくは増額すべき事情(不貞の継続した期間が長かった、回数が多かった、不貞により離婚の危機に瀕した、実際に離婚になった、小さい子どもがいる、不倫をした女性が妊娠に至ったなど)があるかどうかにより、150万円から増減をして決めているように見受けられます。
(昨今の岡山地方裁判所や岡山地方裁判所倉敷支部での事例をベースに解説しています。また、一般的によく「慰謝料相場は300万円と聞いた」と言われる方がおられますが、決してそのような相場が裁判所上で形成されていることはなく、単なるネット上の言説に留まると思います。)
その際、減額事由としては、不貞行為が単発的であるとか、夫婦関係が悪化していた(夫婦がすでに別居をしていたなどのため、夫婦関係ないし婚姻関係が破綻していた)といった事情が影響している傾向にあります。
その他、不倫関係に至った原因についてどちらが積極的だったかの主張がなされることもありますが、裁判所はこのような事情はあまり重視しない傾向にあります。
また、不倫をした側からの謝罪の有無も慰謝料減額事由として主張されることがあり、慰謝料算定上、ある程度、考慮されるべき事由といえます。
なお、夫婦関係の悪化については、慰謝料請求を受けた側から「婚姻関係破綻の抗弁」が主張されることが非常に多いところ、これが認められる可能性があるかどうかなどについて、その詳細を別のページにまとめていますのでご参照ください。
「不倫慰謝料請求の際の「婚姻関係破綻」の主張が通る場合について」
https://kakehashi-law.com/modules/terrace/index.php?content_id=169
他方で増額事由としては、不貞行為の期間が長い、回数が多いとか、不貞行為により離婚に至ったといった事由を重視する傾向にあります。
⑶示談交渉により解決する場合の慰謝料額の相場について
では、訴訟に至る前に相手方に内容証明郵便を送るなどし、示談交渉をする場合には具体的にいくらぐらいの慰謝料相場となっているでしょうか。
この点、先に述べたとおり、示談交渉の際の不貞慰謝料については裁判の場合の相場とはやや異なる形で慰謝料額が決まることが多いといえます。
これは、①不貞をした側が訴訟を避けたいとどの程度考えるか、②不貞をしたことに対してどの程度の責任を感じているか、③どの程度の慰謝料なら支払う経済力があるかによって、不貞をした側が具体的にいくらの慰謝料を支払うかを決めることが多いためです。
すなわち、これら①から③の事情から、いわゆる上記のような裁判になった場合の慰謝料額を超えた額を支払うのか、それともそれよりも低い額を提示するのかが異なってくるためです。
より具体的には、①不貞をした側が、自分の配偶者や身内、会社などに不貞のことが発覚するのを避けたいと強く考えれば裁判になる前に裁判所の相場を超える慰謝料を支払う傾向にあります。
また、②不貞をしたことに強く責任を感じ、反省の意思を持っているような場合にはやはり裁判所の相場を超えた額を支払うことが多いと言えます。
さらには、③裁判所の相場を超えた慰謝料であってもこれを支払う経済力があればやはりこれを支払うことを厭わず、示談交渉で決着することも多いと言えます。
当然、これらと逆の事情となれば、裁判所の相場よりも低い金額での解決を打診してくることになり、そうするとそのような相場を下回る金額での示談に応じるか否かは今度は慰謝料を請求する側の納得の問題となります。
以上の結果、裁判所の相場が150万円をベースにしているところ、示談交渉の場合にはこれを離れ、双方の合意の下、時には1,000万円での解決をすることもあれば、50万円での解決に留まる場合もあるのです。
3 不倫慰謝料を請求するのに要した弁護士費用について
⑴裁判の場合
不倫による慰謝料請求は不法行為に基づく損害賠償請求権の行使という性質を持ちます。
そして、不法行為に基づく損害賠償の際には、裁判であれば裁判所は認定した慰謝料額の1割前後を、相手方が負担すべき弁護士費用として認容してくれます。たとえば、慰謝料を150万円と認定した場合には、慰謝料とは別途、15万円を、不倫をした側に負担するよう認めてくれるのです。
この裁判所が認める弁護士費用というのは、実際に依頼者が、依頼した弁護士に支払う弁護士費用や弁護士報酬の金額そのものではない点には注意が必要です。すなわち、慰謝料請求をする際に、どの弁護士に依頼し、いくらの費用が生じるかは契約内容によるところ、裁判所が認める弁護士費用というのはこのような契約内容とは別に算定されるものなのです。
したがって、裁判によって相手方から、かかった弁護士費用の全額を回収できるということは通常ないと思ってください。
なお、不倫慰謝料の請求の際に要する弁護士費用の詳細は別のページをご参照ください。
https://kakehashi-law.com/modules/kakehashi/index.php?content_id=17
⑵示談の場合
他方で、これはあくまで慰謝料請求訴訟の場合であり、示談交渉の際には当然には弁護士費用の負担が認められる訳ではありません。
当然、相手方が弁護士費用の負担を認めれば構いませんが、多くの事例(ほとんどの事例)では、示談交渉の際には慰謝料その他一切の費用を含めた「解決金」の支払いにより示談をすることとなるので、慰謝料と別に弁護士費用を計上することはしません。
4 調査費用について
⑴裁判の場合
不倫をしたことの証拠をとるため、調査事務所に調査依頼をするケースが増えています。
調査費用について、裁判所は、当該調査が必要な場合には、相当額を、不貞された側の損害として認め、不倫相手にその支払いを命じてくれます。
具体的に調査が必要な事例としては、不倫をしていることの証拠が手元になく、配偶者や不倫相手に問い詰めてもこれを否定したような場合です。このような場合には、他に証拠がない以上、調査事務所に依頼し、証拠収集するしかなかったといえるので、調査依頼の必要性が肯定されます。
その上でいくらを相当額として認めてくれるかですが、調査事務所の調査内容や調査費用は事務所によりけりで、かなりの開きがあります。そのため、あまりに高額な調査費用はその全額を認めてくれることはなく、他方でさほど高額でない調査費用の場合であったとしても半額程度にとどまることが多いです。
そのため、調査会社への調査依頼が必要な場合でも、どの調査会社にどの程度の調査をいくらかけてお願いするかは事前に慎重に検討をすることをお勧めします。
なお、不倫慰謝料の調査を調査会社に依頼する際には、以下のブログをご参照ください。
「どんな探偵事務所に依頼すべきか?」
https://kakehashi-law.com/modules/blog/details.php?bid=1041
⑵示談の場合
調査費用について、示談の際にこれを相手方に求めることも多いのですが、弁護士費用の場合と同様、これもなかなか認めないことが多いです。もしくは調査費用も含めた一切の損害を解決金としてまとめて支払うことで示談をすることが多いと言えます。
5 まとめ
以上の結果、裁判の場合には一般的には慰謝料150万円、弁護士費用15万円の計165万円が、これに調査費用として60万円かかっていた場合にはその半額の30万円が加算され約200万円前後で解決する事例が多いといえます。あとは慰謝料については総額になるか減額になるかが異なってきます。
他方で、示談の場合には、弁護士費用も調査費用もひっくるめて数十万円から数百万円で解決することがあり、その相場はあるようでないものと言えそうです。