被相続人が死亡した後、預金の引き出しはできるか。葬儀費用などのために使いたいがどうしたらよいか。
被相続人が死亡するとその人の預金は一切、引き出すことができなくなるのでしょうか。葬儀費用などの支払いのために充てたいがどうしたらよいか。被相続人の預金で生活をしていた他の家族はどうしたらよいか。
相続の発生に伴いこのような問題が生じることがよくあります。
①預金口座の凍結
まず、被相続人の死亡に伴い、これを知るに至った金融機関はその口座を凍結し、預金の引き出しはできなくなります。そのため相続人であったとしても無条件に預金の引き出しはできなくなります。
②遺産分割の成立など
ただし、相続人間で遺産分割が成立するとか、預金の払い戻しの同意書を取り付けるなどすれば当然、引き出しは可能になります。
③仮払い制度
しかし、冒頭の事例のように、被相続人の死亡後、ただちに預金の引き出しが必要になることも少なくありません。また、預金債権は可分債権と判断した最高裁の判例が出たこともあり、預金債権の仮払い制度が創設されました(民法909条の2)。これにより遺産分割が成立するなどしていなくても一定額での引き出しが可能となりました。
具体的には、相続開始時の預金額×3分の1×払い戻しを行う相続人の法定相続分について払い戻しが受けられることとなっています。
④家庭裁判所による仮払いの審判
そのほかにも、③の仮払いでも不十分な場合を想定し、家庭裁判所による仮払い審判の制度もあります(家事審判法200条3項)。
具体的には仮払いの審判により、家庭裁判所が仮取得を認めた金額について払い戻しが受けられることとなります。
このように、被相続人の死亡、相続の発生という事態により生じる口座の凍結に対する措置がいくつか設けられ、これらにより相続人の負担を軽減する措置がとられています。
執筆者;弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)
1979年 東京都生まれ
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山県倉敷市に岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更
2022年 香川県高松市に香川オフィスを開所