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法律の庭

ダブル不倫問題の解決方法について

いわゆる既婚者同士の不倫というダブル不倫(w不倫)問題の解決は、当事者の置かれた状況や思惑、双方の夫婦の関係などに照らし、非常に複雑になることがあります。いわゆるゼロゼロ和解を含めた解決の方法について不倫問題・男女問題に詳しい弁護士の視点から解説をします。このコラムを踏まえてダブル不倫のトラブルに関し、必要な知識に基づく解決をご検討ください。

 

【目次】

1 ダブル不倫の法律問題について

2 ダブル不倫をした場合の不法行為責任について

 ⑴夫Aの責任について

 ⑵妻Bの責任について

 ⑶負うべき慰謝料額が同額の場合の処理について

 ⑷負うべき慰謝料額が同額でない場合の処理について

 ⑸ダブル不倫において、双方の夫婦が離婚に至る場合

3 ダブル不倫問題解決のまとめと弁護士費用について

 

 

【本文】

1 ダブル不倫の法律問題について

 ダブル不倫(W不倫)とは、不倫をした当事者が双方とも既婚者であった場合を指します。
 
 以前は男性(夫)が、女性(未婚)の方と不倫関係を持ち、そのことの責任を女性(男性の妻)が追及するケースが多かったところ、最近では既婚者同士での不倫(双方とも既婚者であることからダブル不倫といいます)が相当数、増えているのが実情であり、男女トラブルのうち相当数を占めるようになっています。
 
 
 
 
 当然のことながら不倫は、他方配偶者に対する不貞行為となります。
 
 
 そしてダブル不倫の場合には、自分の配偶者に対する責任と、不倫相手の配偶者に対する責任が問題となり、これが不倫をした当事者双方に生じることなどから、法律関係が複雑となり、問題解決が難しくなるケースやパターンが少なくありません。
 
 
 
 そこで、以下、ダブル不倫の場合の損害賠償責任とその解決について解説をしたいと思います。
 
 
 なお、ここではダブル不倫の当事者関係や事実関係を明確にし、理解しやすくするために、登場人物を
 
 
夫婦A(夫A、妻A)
夫婦B(夫B、妻B)とし、
 
夫Aと妻Bが不貞関係を持った(妻Aと夫Bが被害者となる)
 
 
と想定し、説明いたします。
 
 
 
 
 

2 ダブル不倫をした場合の不法行為責任について

 ⑴夫Aの責任について

 ダブル不倫をした当事者である夫Aは、まずは自分の妻である妻Aに対して不貞行為に伴う損害賠償責任(慰謝料)を負うこととなります。
 
 なお、ダブル不倫の場合、一方の夫婦のうち、不倫をされたことに気が付き、不倫の相手方に慰謝料を請求することで一気にダブル不倫問題が明るみになることが多いです。
 
 
 同時に、夫Aは、不倫相手である妻Bの配偶者である夫Bに対しても損害賠償責任(慰謝料)を負うこととなります。
 
 
 
 不倫の慰謝料については婚姻期間、不貞の回数や期間、子の有無、不貞行為により離婚を余儀なくされたか否かなどの事実関係や事情によって決まりますが、最近の裁判例の動向によれば、150万円前後で判断されることが多いと言えます。
 
 
 
 なお、不倫慰謝料の相場等については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。具体的にどのような場合に高額となるのか、それとも少額にとどまるかが分かると思います。
 
 
「不倫による慰謝料請求の根拠や慰謝料額について」
 
 
 
 その結果、夫Aは妻Aと夫Bに対してそれぞれ慰謝料を支払う義務を負うこととなり、仮に慰謝料額が150万円だとすると妻Aに150万円、夫Bに150万円の合計300万円の損害賠償責任(慰謝料)を負うこととなります。
 
 
 夫Aは、二人に対して慰謝料を支払うこととなるので当然、その金額は高額になります。
 
 また、夫Aは妻Aと夫Bの双方に不貞に伴う説明や謝罪、示談や訴訟の対応をしないといけません。
 
 
 

 ⑵妻Bの責任について

 次に、妻Bの責任についてですが、やはり夫Aと同様に、妻Bは夫Bに対してと、妻Aに対して損害賠償責任(慰謝料)を負うこととなります。
 
 そして、慰謝料額を仮に150万円だとすると、妻Bは夫Bと妻Aにそれぞれ150万円ずつで合計300万円の損害賠償責任(慰謝料)を負うこととなります。
 
 妻Bもまた二人に対して責任を負うので賠償すべき金額が高額になります。
 
 当然、夫Aと同様に妻Bもまた二人に対して示談等の対応をとることとなります。
 
 
 

 ⑶負うべき慰謝料額が同額の場合の処理について

 上記⑴、⑵のように、夫Aと妻Bとが負うべき慰謝料額がまったく同額である場合には、結局、夫婦Aが負担すべき金額と夫婦Bが負担すべき金額が同額なため、いわゆる「ゼロゼロ和解」の提案がなされることが良くあります。
 
 
 この「ゼロゼロ和解」とは結局、「お互いの夫婦で負担すべき金額が同じ(もしくは同じとみなす)である以上は、お互いの夫婦で金銭を支払い合っても結局、無意味なのでこれ以上、お金のやりとりはせずに事を収めましょう。」ということを意味します。
 
 
 このような和解方法は、夫婦Aも、夫婦Bも、ダブル不倫が発覚した後も離婚をせずに夫婦・家族関係を維持する場合には有効な解決方法といえます。
 
 
 
 
 実際、ダブル不倫の問題解決としてこのゼロゼロ和解という方法がそれなりに多く用いられており、時間的にも費用的にも4者にとってメリットの大きい紛争解決の方法として使われているようです。
 
 
 とりわけ、不倫を理由に離婚に踏み切ると、かえって財産分与の問題や子どもの親権を失うおそれがあるということから離婚に踏み切れないような場合にもこのような解決をすることがあります。
 
 
 具体的には、妻が不倫をしたが、離婚をすると結局は妻が親権者になる可能性が高いとか、妻からもらう慰謝料額よりも財産分与により渡す金額の方が高いというような場合にこのような解決にすることがあるのです。
 
 
 そのため、ゼロゼロ和解による解決の際には、今後、二度と不貞行為をしないとの確約を合意書などで明確に定めることも少なくありません。
 
 
 仮に職場が同じ場合であれば、業務上の必要がある場合以外に接触しない、メールやLINEをしないとの条項を求めることもあります。その方がお互いの口約束による解決よりも法的には安心ができます。
 
 
 
 他方で、不倫をした男性と女性がたとえば同じ職場同士であり、不貞関係が発覚後もメールやLINEで連絡を続けていたとかの事情から、今後も不貞関係を続ける可能性があるようなケースや、不倫の結果女性が妊娠をしてしまったケースなど、心理的な障壁からゼロゼロ和解が実現しないパターンも少なくありません。
 
 
 また、ゼロゼロ和解は以上のようなメリットがありますが、この提案を誰がどのタイミングで持ちかけるかも重要です。
 
 
 
 すなわち、いくら事案に照らし、ゼロゼロ和解が妥当なケースだったとしても、不倫をした当事者(加害者)から被害者に対して提案を持ち掛けると、提案を受けた側としてはこれにすぐに応じる機運にはなりにくいのが実情ですのでご注意ください。
 
 
 
 

 ⑷負うべき慰謝料額が同額でない場合の処理について

 しかし、このようなゼロゼロ和解は、一般的には慰謝料額が同等といえる場合や、どちらの夫婦も離婚をしない場合に限って有効です。なのでこれら条件が異なる場合にはいくら合理的とはいえ、ゼロゼロ和解は現実的ではありません。
 
 
いずれかもしくは双方の夫婦が離婚をするもしくは離婚を前提に別居になるなど不貞をきっかけに婚姻関係が破綻した場合や、
 
夫Aと妻Bとが負担すべき慰謝料額に開きがあったり、減額事由がある場合(たとえば夫婦Aは婚姻期間が20年と長く、夫婦Bはまだ2年程度であるとか、夫婦Aには未成年の子どもが3人いるが夫婦Bには子どもがいないとかといった事情により慰謝料額に相違がある場合)
 
 
には上記のゼロゼロ和解による解決は難しくなります。
 
 
 
 この場合、たとえば夫Aは妻Aに慰謝料100万円を、夫Bには120万円を支払い、妻Bは妻Aに慰謝料50万円を支払い、夫Bには30万円を支払うなどという形で解決をすることがあります(金額はケースバイケースです)。
 
 
 この例だと夫Aは220万円を、妻Bは80万円を負担したこととなりますが、そうすると夫Aと妻Bの負担額が異なるため、後日、夫Aから妻Bに対して求償権の行使がなされることがあります。
 
 
 
 
 なお、不倫慰謝料の求償権については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
 
 
「不倫相手に慰謝料を求めたら、「求償権を放棄するから半額にして欲しい」と言われた。「求償権」について知りたい。」
 
 
 
 そして、この求償権の行使を巡って夫Aと妻Bとで紛争が継続することになるため、慰謝料額が同額でないケースにおいてはダブル不倫の問題解決が非常に難しくなる傾向にあるといえます。
 
 
 
 

 ⑸ダブル不倫において、双方の夫婦が離婚に至る場合

 上記⑷のケースにおいて、たとえば夫婦Aも夫婦Bも離婚に至るとなると、次のような内容で紛争が激化することがありますので参考のために説明をしておきます。
 
 
①夫Aと妻Bの不倫が妻Aもしくは夫Bに発覚し、これをきっかけにどちらかから内容証明郵便などによる請求がなされ、双方の夫婦共に不倫問題が明るみになる。
 
②夫婦Aと夫婦Bとで4者で話し合いをする。
 
③不倫を原因に双方の夫婦とも別居になり、離婚に至る。
 
④離婚の前後を通じて妻Aが妻Bに慰謝料を請求する。示談もしくは訴訟にて結論が出る。
 
⑤妻Bが、自分が妻Aに対して支払った慰謝料半額の負担を求めて夫Aに求償権を行使する。示談もしくは訴訟にて結論が出る。
 
⑥夫Bが夫Aと妻Bに対して慰謝料を請求する。示談もしくは訴訟にて結論が出る。
 
 

3 ダブル不倫問題解決のまとめと弁護士費用について

 このように、ダブル不倫において、双方の夫婦が離婚に至るような場合だと解決のために複数の示談交渉や訴訟手続きを経ることとがあります。
 
 そのため、上記のようなゼロゼロ和解を打診する当事者が生じうるのですが、たしかにゼロゼロ和解のメリットはあるにしても、不貞行為に対する心情や、負担すべき慰謝料額の違いなどのため、常にゼロゼロ和解で解決するとは限らないのです。
 
 したがって、紛争が長期化するような場合には以上のような注意点を踏まえ、専門家へのご相談をご検討することをお勧めいたします。
 
 
 なお、当事務所では不倫をされた側、した側双方からのご相談、ご依頼を受け付けております。
 ご相談料は30分あたり5,500円(税込)で、示談交渉の着手金は220,000円、報酬は不貞をされた側の場合、支払いを受けた額の16.5%で、不貞をした側の場合には相手方からの請求額と実際の支払い額の差額の16.5%です。
 
 その他、訴訟の場合の費用などを含め、詳細は弁護士費用のページをご確認ください。
 
 
 
執筆者;弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)
1979年 東京都生まれ
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更
 

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