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法律の庭

男性に圧倒的に不利な離婚条件とその対応策について

このコラムでは、「男性に不利」と言われがちな離婚条件について、具体的にどのように対処すればよいのか、どのように対応すればより有利な結論を得られるのかを離婚条件ごとに個別に解説をしています。離婚を考えているが、あまりに不利な条件は避けたい男性に向けて離婚に詳しい弁護士が解説をしています。

 

【目次】

1 離婚の際の離婚条件について

2 ①男性目線での親権争いとその対応策について

 ⑴離婚の際にどうやって親権者を判断するかについて

 ⑵①子の福祉について

 ⑶②子の意思の尊重について

 ⑷③監護の継続性について

 ⑸④母性優先の原則について

 ⑹⑤きょうだい不分離の原則について

 ⑺親権者の判断に際して男性にとって不利な点について

3 ②男性目線での養育費争いとその対応策について

4 ③男性目線での面会交流の対応策について

5 ④男性目線での財産分与の対応策について

6 ⑤男性目線での慰謝料の対応策について

7 男性目線での離婚条件についてのまとめ

 

【本文】

1 離婚の際の離婚条件について

 夫婦が離婚を余儀なくされると、離婚の条件についてお互いで協議をし、調停をし、裁判をし、いずれかの時点で決着に至ります。

 離婚の条件は当然、夫婦の間で公平であるべきですが、たとえば親権については現在の日本の法律では共同親権が認められていないこと養育費については男性の方が収入の多いことが多く、男性の負担が大きくなりがちなことなど当事者の立場からすると、「本当にこれが公平な離婚条件なのか。」と感じることも少なくありません。

 そこで、離婚の条件として取り決めるべき①親権、②養育費、③面会、④財産分与、⑤慰謝料について順次、男性の立場では圧倒的に不利になりがちな実情と、その上でなし得る対応策についてご説明いたします。

 

2 ①男性目線での親権争いとその対応策について

 ⑴離婚の際にどうやって親権者を判断するかについて

 離婚に際して、親権者争いは女性が有利と言われることが多々あります。このような言われ方をするため、当初の段階から親権者争いを諦めてしまう男性も少なくありません。

 しかし、女性であれば常に親権者争いで勝てるとか、女性しか親権者になれないということではありません。というのも、裁判所は以下のような判断要素にて親権者を判断するところ、これら要素をきちんと満たせば男性であっても親権者争いで勝つことは可能だからです。

 すなわち、裁判所は、親権者の適格性を判断するに際して、

 

①子の福祉

②子の意思

③監護の継続性

④母性優先の原則

⑤きょうだい不分離の原則

 

などの点から総合的に親権者を定めます。

 

⑵①子の福祉について

 ①の子の福祉は、総合的な観点から、離婚に伴い父母が別々に暮らすこととなった場合、どちらと暮らすことが総合的に見て子の幸せになるかということを意味します。

 

⑶②子の意思の尊重について

 ②の子の意思の尊重は、家事事件手続法に規定があり、「家庭裁判所は、親子、親権又は未成年後見に関する家事審判その他未成年者である子(未成年被後見人を含む。以下この条において同じ。)がその結果により影響を受ける家事審判の手続においては、子の陳述の聴取、家庭裁判所調査官による調査その他の適切な方法により、子の意思を把握するように努め、審判をするに当たり、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならない。」とされています(家事事件手続法65条、258条1項)。

 なおかつ、子が15歳以上の場合には、必ず子に直接意見聴取が行われます(家事事件手続法169条2項、人事訴訟法32条4項)。

 このように、親権争いに際しては、子の意思の尊重という観点が非常に重要となります。とりわけ、15歳以上の子の場合には、子の意思にしたがった親権者判断がなされることが通常です。

 

⑷③監護の継続性について

 ③の監護の継続性については、父母のうち、いずれが子の監護を継続的に行ってきたかという問題であり、これまで主として監護を担っていた方が離婚後も監護を継続することが子の安定した生活に資するという視点での判断要素です。

 

⑸④母性優先の原則について

 そして、親権者争いでは女性が有利と言われるのは、これらの要素のうち、④の母性優先の原則が妥当するからですが、④の原則は、とりわけ「乳幼児」に該当しやすいと言われているところです。

 すなわち、乳飲み子であれば相当、女性に有利であるとされます(母乳で育てているか否かを問わず、乳飲み子は母親との心身の強い結びつきにより安定した情緒を育むことから、可能な限り、もしくは母子の関係に大きな問題がない限りは母子の密接な関係を維持すべきとされています)。

 また、乳飲み子でなくても幼児の場合であってもやはり母子の強い結びつきを重視するため、やはり女性に有利とされやすいです。

 

⑹⑤きょうだい不分離の原則について

 きょうだい不分離の原則は、離婚に際してきょうだいはできるだけ別々に暮らすのではなく、同じ父なら父、母なら母の下で暮らすことが望ましいという考え方です。

 そのため、きょうだい間で親権者のあり方に意見の隔たりが生じたとしても、きょうだいを一体としてみていずれの父母の下で暮らすことが望ましいかを判断することがあります。

 

⑺親権者の判断に際して男性にとって不利な点について

 以上のように、親権者の判断は、上記①ないし⑤の要素を総合的に考慮して判断することとなります。そのため、決して④母性優先の原則のみで判断をしている訳ではない事母性優先の原則といっても主に乳幼児に限った問題であることに注意する必要があります。

 さらに、最近では男性も家事育児への協力が以前以上に進んでいること、女性の社会進出も進んでいることに照らすと意外と③監護の継続性の点では男性の方が有利なことも少なくありません。

 その上、裁判所の判断の傾向は、④母性優先の原則よりも③監護の継続性を重視する方向にシフトしつつあることに照らすと、男性だからといって最初から親権争いを諦める必要はないと言えます。

 

3 ②男性目線での養育費争いとその対応策について

 親権者を母とした場合、夫が子の養育費を負担することは当然ですが、その金額が余りに高額で、これでは支払うことができないと不満を感じるケースが少なくありません。

 男性からすると、生活を共にしないこと、離婚をした元妻に支払うということ、場合によっては面会すらままならない実情があることから養育費の支払いになかなか納得できないケースが生じるのです。

 そして、養育費は双方の収入と子の年齢及び人数で決めるのが裁判所の考え方ですが、離婚をすると世帯が二つに分かれることから男性からすると、離婚後の自分の生活のみならず、別世帯で暮らす我が子のために相当額の養育費の負担をしないとならないのでたしかに負担が大きいのは事実です。

 そのような場合、やはり当初の養育費の取り決め段階で譲歩することなく徹底して妥当な金額を目指す必要がありますが、実情としては容易ではありません。

 というのも、裁判所の養育費算定基準が広く周知され、誰でも容易に養育費の相場を算定することが可能だからです。また、裁判所も養育費算定基準により解決をすることで完全に定着をしており、そうすると算定基準以下での合意は至難の業となってしまうのです。

 とはいえ、離婚後に収入が減じたとか、再婚し扶養すべき子が増えたとか、元妻の収入が増加したなどの場合には養育費の減額調停が可能です。したがって、いったん決まった養育費についても、以後、変更の余地があると思っておくことが大切です。

 

4 ③男性目線での面会交流の対応策について

 面会交流は、これを実施すべきことは子の福祉の観点から非常に重要だと裁判所では考えられていますし、実際、子のためにとっては離婚後も自分の父と時折交流を持つことが健全な成長に資することと言えます。

 とはいえ、離婚をするとお互いの生活環境が完全に変わってしまうため、毎日会うことは当然無理ですし、毎週会うことも困難なのが実情です。

 特に子が小さい時(幼児、小学生のころ)には、面会のために子を誰がどこに連れて行くかとか、体調を崩した時にどうするかという問題が常につきまといます。

 他方で、中学生や高校生くらいになると、父と子で直接、電話などで連絡を取ることは可能になってきますが、今度は部活や受験、思春期ゆえの父との難しい距離感などが生じてきます。

 

 これらの問題に加え、最近では母が面会交流に積極的でない事例が相当増えており、その影響がかなり及んでいるといえます。

 

 そのため、離れて暮らす父は、我が子と十分に交流できないことの不満がどうしても募ります。

 

 これに対しては、まずは裁判所の一般的な基準である月に一回の直接面会をまずは確実に取り決めて、それに加えて電話やLINE,ビデオ通話、写真や動画の送信といった間接交流を条件に加えるよう交渉することがとても大切です。

 これらはスマホやインターネット通信が非常に安価かつ多様に、即時に使えるようになった現代だからこその交流方法であり、このような便利な方法すら拒否するようではそもそも親権者としてふさわしくないと主張をすることすら可能です。

 したがって、親権を諦めるにしても、最低限、このような方法も含めた面会を前向きに実施することを条件として求めることが大切です。

 

5 ④男性目線での財産分与の対応策について

 以前よりは女性の社会進出が進みましたが、それでも世帯の収入は主に男性に依存し、貯蓄も男性の収入の結果という家庭が多いのが実情です。

 そのため、離婚に伴い財産分与の問題が生じると、男性が稼いで得た貯蓄の半分を持って行かれ、退職金についても半分持って行かれるという状況に陥り、これだけ頑張って来たのに身ぐるみ剥がされる思いになるケースが少なくありません。

 これに対しては、やはり何と言っても財産分与の寄与割合の変更を主張することが大切だと言えます。確かに財産分与の割合は1:1という考え方が相当、徹底されているため、容易にこれを変更することはできません。とはいえ、とりわけ収入が高額なケースや、特異な才能で得た収入のケースなどでは変更の余地があるのできちんとこれらの事情を主張することが重要です。

 加えて、将来受け取る退職金に関しては、実際に受け取った時点での分割としたり、現時点で分割をするのであれば額面を減じて分割をすることを求めたりするのが良いかと思います。

 

6 ⑤男性目線での慰謝料の対応策について

 離婚に伴い慰謝料が問題となることは少なくありません。とはいえ、典型的には慰謝料が生じるのは不倫やDVの場合であり、その他の離婚原因の際にはなかなか慰謝料が認められることはありません。

 そして、最近では妻による不貞がきっかけとなって離婚に至るケースが増えており、そのため、夫が妻や不貞相手に慰謝料を求めることも当然、増えています。

 しかし、不貞相手が特定できないとか、不貞相手は妻が既婚者であるとまったく知らなかったし知り得なかったという場合には、不貞相手への慰謝料請求は認容されません。

 そうすると妻に対して慰謝料を求めるしかないのですが、妻に収入がないような場合には簡単には慰謝料の支払いを受けることができません。

 そうかと言って、離婚の原因を作った妻に対する慰謝料を放棄するのは妥当ではなく、子がいる場合であれば養育費との金額調整をしたり、財産分与との金額調整をしたりするなどし、慰謝料についてもしっかりと支払いをしてもらい、解決をするよう対策をすることが大切だと言えます。

 

7 男性目線での離婚条件についてのまとめ

 離婚に伴い諸々の条件を検討し、決めていく必要がありますが、男性ばかりが不利な結論を容認する必要はありません。当然、負担すべきものは負担しなくてはなりませんし、現時点で共同親権が実現する訳でもありません。

 とはいえ、最大限、納得のできる離婚条件を可能な限り追及し、離婚後の再スタートに臨んで頂きたいと思います。

 

執筆者;弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)
 
1979年 東京都生まれ
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山県倉敷市に岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更
2022年 香川県高松市に香川オフィスを開所
 

 

 

 

 

 

 

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