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法律の庭

モラハラ離婚で慰謝料を獲得するためには?~実例を踏まえた弁護士解説~

このコラムでは、モラハラ被害を受けた際に、どうやったら慰謝料が請求できるのか、実際にはどのような場合にはこれが認められないのかなどを分かりやすくまとめて解説しています。モラハラ被害の慰謝料請求を検討し、これを解決する際の参考になさってください。

 

【目次】

1 モラハラと慰謝料について

2 離婚慰謝料はどのような場合に認められるのか?
 ⑴離婚慰謝料とこれが認められるケースについて
 ⑵離婚慰謝料の典型例について
 ⑶離婚慰謝料の相場はいくらか?
3 モラハラを根拠とした慰謝料請求は認められるのか?
4 モラハラを理由とした慰謝料額の相場はいくらか?
5 モラハラによる慰謝料の獲得は難しいのか?
6 モラハラを理由とした慰謝料獲得のために
 

【本文】

1 モラハラと慰謝料について

 「モラハラ」を理由とした慰謝料請求の可否を検討する前提として、まずは「モラハラ」とは何かを理解しておくことが大切です。

 そして、「モラハラ」とは、モラルハラスメントの略称であり、倫理や道徳、常識やあるべき姿を根拠として他人に対して嫌がらせ行為をすることを意味します。

 

 モラハラの特徴としては、いわゆるDVが身体に対する直接間接の暴力ないし危害を指すのとは異なり、モラハラは身体に対する暴力行為ないし危害を内容とはしません。

 

 すなわち、パートナーの身体に対する暴力ないし危害がDVであり、精神に対する嫌がらせや攻撃がモラハラだと分けて考えることができます。

 

 そのモラハラについてですが、具体的な判断基準や、モラハラの認定を受けるために必要な証拠、モラハラの主張をする際の注意事項などについては別のページに詳細に説明していますのでご参照ください。

 

「モラハラにより離婚をしたい場合やモラハラの主張を受けた場合について」

https://kakehashi-law.com/modules/terrace/index.php?content_id=166

 

 他方、このコラムでは、モラハラを根拠として被害者から加害者である相手に慰謝料請求が認められる場合についてまず解説をします。

 

 その上で、実際にはどのような場合にモラハラを理由とした慰謝料が認められる可能性があるのかや、その難しさについて解説いたします。

 

 それらの前提として、離婚の際の慰謝料がどのような場合に認められるのか、認められる場合にはいくらぐらいが認定されているのかについても解説いたします。

 

 

2 離婚慰謝料はどのような場合に認められるのか?

 ⑴離婚慰謝料とこれが認められるケースについて

 モラハラによる慰謝料請求は、夫婦間で、相手から受けた精神的苦痛に対する損害賠償です。そのため、モラハラによる慰謝料もいわゆる「離婚慰謝料」の一部を構成します。

 

 そこで、モラハラによる慰謝料を検討する前提として、そもそもどうしたら離婚慰謝料が認められるのかを検討することは大切です。

 

 ここで離婚慰謝料とはすなわち、離婚を余儀なくされた、言い換えると夫婦婚姻共同生活を破壊させられたことにより被った自分の精神的苦痛を慰謝してもらうためのものです。

 

 そのため、離婚に至った原因が相手方にある以上は離婚慰謝料を請求して当然と考える方も少なくありません。

 

 では、どのような場合に具体的に離婚慰謝料が認められるかですが、実務上は「離婚に至った主たる原因が一方の配偶者にある」と言えるかどうかで判断されています。

 

 すなわち、夫婦婚姻共同生活というのは、お互いの思いやりや努力によって成り立っているところ、これをどちらか一方が壊したような場合には、離婚慰謝料を認めましょうということです。言い換えると、夫婦関係の中では途中で波風が立つこともあるところ、お互いに至らぬところがあるような場合にまで離婚慰謝料を認めることはしないということです。

 

 そのため、離婚に伴い慰謝料を請求したいケースはとても多く、かつこれを求める方もとても多いですが、実際上は離婚慰謝料を獲得することは容易ではありません。

 

 

 ⑵離婚慰謝料の典型例について

 他方で、離婚の原因がたとえば相手方による浮気、不倫(不貞)にある場合には離婚に至った原因としてはっきりとしています。他にも相手方から暴力(すなわちDV)があったという場合も同様です。

 

 したがって、これらを原因として離婚に至るのであれば離婚慰謝料の請求が可能です。

 

 その際、たとえば浮気、不倫(不貞)があったために離婚をすることになったのであればおおよそ150万円程度の慰謝料が認定されることが多いです。

 

 当然、その程度が重いほど慰謝料額は高額(たとえば300万円程度)になる傾向です。

 

 そして、浮気、不倫によって離婚をすることになった場合には、離婚の慰謝料イコール不倫の慰謝料と考えることが可能であり、そうすると結局は、離婚により配偶者に求める慰謝料はいわゆる不倫の慰謝料と実質的にほぼ同視できます。

 

 したがって、浮気、不倫を理由とした離婚の慰謝料は不倫の慰謝料の算定基準に基づき判断されるのが通常です。

 

 

 

 この点、不倫そのものの慰謝料については別のページに詳細に説明していますのでそちらをご参照ください。

 

「不倫の慰謝料相場や相手方に請求できる弁護士費用などについて知りたい」

https://kakehashi-law.com/modules/terrace/index.php?content_id=184

 

 

 

 

 ⑶離婚慰謝料の相場はいくらか?

 以上のとおり、離婚慰謝料を認めてもらうことは容易ではありませんが、次にこれが仮に認められるとしたら具体的にいくらぐらいになるかも気になるところです。

 この点に関しては、事例としては多くはないものの、数十万円から数百万円の範囲で算定されることが多い傾向にあります。婚姻期間の長短や、幼い子どもの有無などによって金額は異なってきます。

 

 そして、モラハラの慰謝料を検討する際には、上記のような意味で、婚姻関係を破綻させた主たる原因が相手方にあると言えるようなケースかどうかを慎重に見極めることが大切です。

 

 

3 モラハラを根拠とした慰謝料請求は認められるのか?

 以上の離婚慰謝料が認められるケースを前提に、具体的にどのような場合にモラハラによる慰謝料請求が可能かどうかについて、以下、検討します。

 

 この点、モラハラの証拠がきちんとそろい、かつモラハラの程度も重大であり、これが離婚の主たる原因だと認められた場合には、離婚慰謝料が認められます。

 

 たとえば、夫の妻に対する思いやりのなさ、夫の妻に対する配慮のなさ、妻の自己本位な態度、夫の妻に対する心ない発言、夫の高圧的侮辱的な振る舞い、夫が些細なことで怒るなどの言動が詳細に証明でき、認定された事例で慰謝料が認容されています。

 

 他にも、モラハラの例としては、無視をする、暴言を吐くなども含まれます。

 

 そして、これらの言動に対する証明の方法は、以下のようなものがあげられます。

 

・会話内容などの録音、録画、LINEやメールの内容(スクリーンショットやテキストデータの保存)などの記録

・自分で書いた日記(相手方から受けた言動、暴言、嫌がらせなどをできるだけ個別具体的に記載しておくとよい)

・第三者の証言(家族や友人、子ども)

・医師による心療内科などの診断書(たとえばうつ病の診断書など)などが非常に有効です。

 

 とはいえ、①そもそもモラハラは証拠に残りにくいこと、②程度問題と考えられがちなことなどからしっかりと証拠を確保すること、集めた証拠について詳しい弁護士によるアドバイスないし監修を受けることがとても大切です。

 

 これらをしっかりと準備し、有利な条件での離婚を実現するようにしてください。

 

 

4 モラハラを理由とした慰謝料額の相場はいくらか?

 以上のように、モラハラを理由とした慰謝料を勝ち取れる事例、もらえる事例は実はそこまで多くはありません。その上で、モラハラを根拠とした慰謝料が認められた限られた事例によれば、その額は、概ね数十万円から数百万円の範囲で認容されているようです。

 

 かなり幅のある数字にはなりますが、モラハラの内容や期間が千差万別であること、その証拠の程度もまちまちであること、夫婦婚姻生活の状況もやはり千差万別であることなどに照らし、金額にばらつきがあるものといえます。

 

 高額な慰謝料が認定されている事例は、証拠に基づき相当、立ち入ったモラハラ加害行為が認定されていることをご理解ください。

 

 

5 モラハラによる慰謝料の獲得は難しいのか?

 さらに言うと、モラハラを根拠として徹底して慰謝料請求を求め、判決に至るケース自体が多くないという問題もあります。少なくとも協議離婚や家庭裁判所における離婚調停といった手続きにより合意が成立し、モラハラの慰謝料をもらえる事例というのは相当レアです。

 

 協議離婚や離婚調停はいずれも話し合いを基本としたやりとりなので、これらによりモラハラ加害者が慰謝料を支払うということは、自らのモラハラ行為を認めるのと同然だからです(モラハラ加害者は慰謝料請求を当然に拒否する)。

 

 言い換えると、モラハラの夫や妻との婚姻生活を早く脱したいという気持ちがあるため、早く離婚できるのであれば慰謝料など求めないもしくは途中で放棄するというケースが少なくないと思います。

 

 すなわち、モラハラはそもそもその立証や認定を受けることが容易でないこと(モラハラ的言動の特徴は、「言った言わない」という言葉の問題も少なくない)、モラハラの加害者は当然、ひとつひとつに細かいタイプが多いのでこちらが主張した数々のモラハラ行為に対しては、こちらが主張した以上に何倍にもして反論をしてきます。

 

 それどころか、こちらの不手際を含めあることないことを調停や裁判で書き連ねてくるなどするのです。

 

 その結果、モラハラの被害を訴える側は、調停や裁判の場を通じてさらにモラハラの被害を受ける結果となり、自分の権利を勝ち取る前に早くその状況を脱したい(離婚したい)と考えるもしくはそうせざるを得ないことが多々あります。

 

 そのため、モラハラの被害があったことを前提に、その慰謝料を請求するかどうかは慎重に判断をする必要があると思います。

 

 

6 モラハラを理由とした慰謝料獲得のために

 以上のとおり、モラハラを理由とした慰謝料は、その被害回復のために当然に必要ですし、法律も裁判所も一定の場合にこれを認めています。

 

 とはいえ、証拠の問題を含めてこれを獲得するまでの道のりにはいくつかのハードルもあります。

 

 そのため、これらハードルをひとつひとつ乗り越えて、しっかりと被害回復に向けて進んでいくことが大切です。当然、モラハラをする相手と一人で向き合うことはとてもストレスが強いでしょうから、家族や友人などの協力や、専門の弁護士への相談が有効です。

 

 モラハラ被害の悩みを抱えた際に、一人で解決をすることは最善策とは言えません。そもそも別居によりモラハラ被害から脱し、必要な生活費(婚姻費用)の支払いを受け、親権を獲得し、養育費や財産分与などのお金の確保についてもしっかりと取り決めることは、これから先の自分や子どもの人生を考えた際にとても重要なことです。

 

 したがって、これからの新しい生活や守るべき子どものために、何があるべき解決策なのかを慎重に検討して頂けたらと思います。

 

 

執筆者;弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)
 
1979年 東京都生まれ
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山県倉敷市に岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更
2022年 香川県高松市に香川オフィスを開所
 

 

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