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不倫慰謝料の求償権とは?放棄のメリットなどの弁護士解説

このコラムでは、不倫慰謝料請求に伴い問題となる求償権について、その意味や放棄の効果などを解説します。不倫慰謝料を請求したが、求償権の問題で交渉がうまくいかないなどという問題を抱えている方はぜひご一読ください。
 
【目次】
1 不倫慰謝料の根拠と連帯責任について
2 求償権とは何か?
3 求償権の負担割合とは何か?
4 不貞当事者からの求償権放棄の主張について
5 求償権放棄を不倫相手に持ちかけることの意味について
 
 
【本文】

1 不倫慰謝料の根拠と連帯責任について

 まず、求償権の説明の前提として、不倫慰謝料の根拠やその法的な性質について少し説明をします。
 
たとえば、不倫をした男性(A)と女性(B)は、Aの配偶者である妻(C)に対して不倫をしたことの責任を負います。Aにとって、不倫は他方配偶者であるCに対する貞操義務に違反する行為に該当し、Bにとって、不倫はCの夫婦婚姻生活の平穏を侵害する行為だからです。
 
その結果、AもBもCに対する不法行為責任を負うことになります。そして、AとBの不貞行為は、共同してなされたものであり、一緒になってCの権利を侵害するものであることから、共同不法行為となります。
 
この共同不法行為は、連帯責任とされ、結果、AとBの責任は不真正連帯債務となります。
 
共同不法行為とは要するに、「二人で一緒にCを傷つけた」ということであり、不真正連帯債務とは、「AとBが連帯してCに責任を負う」ということです。
 
そして、Cは、AとBが連帯責任を負う結果、AとBに対して慰謝料等を①同時に請求することもできるし、②AとBのいずれかに請求することも可能です。
 
その結果、Cは示談や訴訟により、Aまたはから慰謝料を満額もらっても構わないし、たとえば慰謝料額100万円が妥当だとした場合に、AとBから50万円ずつとか、30万円と70万円とかという形で分けてもらうことでも構わないのです。
 
 
 

2 求償権とは何か?

 このように、不貞行為が連帯責任となることから、不貞当時者は自分が負担した金額について、自分の負担割合部分を超える分は他方当事者に負担をしてもらうことができます。
 
 すなわち、仮にAとBがCに支払うべき慰謝料等が100万円だったとし、CがAに100万円を支払ってもらった場合には、AはBに後日、自分の負担部分を超える50万円について支払ってもらうことができるのです。
 
 そして、このことを求償権といい、AがBに対して有する権利です。
 
3 求償権の負担割合とは何か?
 この求償権の行使については、AとBの責任割合に応じて他方当事者に請求できる負担割合が異なってきます。
 
 要するに、当該不貞行為についてAとBのいずれがより大きな責任を負うべきかという問題です。
 
 この点、不貞を強く誘ってきたとか、関係を求めてきたとか、交際終了に応じてくれなかったとかという事情がかなりはっきりある場合には負担割合の変更があり得ますが、そうでない限り、基本的には5:5の負担割合となることが通常です。
 
 とはいえ、この負担割合を巡って不貞当事者間で紛争になることも少なくないのが実情です。
 
 
 

4 不貞当事者からの求償権放棄の主張について

以上を前提に、多くのケースではCは自分の配偶者である夫Aではなく、不貞相手である女性Bにのみ請求をすることが多いのですが、そのような請求に対してBからCに対して求償権放棄を前提とした金額交渉ないし減額交渉がなされることがあるのです。
 
すなわち、BからCに対して、Cの請求する慰謝料に関し、「求償権を放棄するので支払う金額を半額に減額して欲しい。」との提案がなされることがあるのです。
 
そして、上記のとおり、AとBは不真正連帯債務であることから、結局はCの慰謝料はAとBが一緒になって負担する必要があるところ、Bだけが慰謝料を支払った場合、後日、BはAに半額を負担してもらうように「求償」することができるのです。
 
Cとしては後日、BからAに請求されるのを防ぐためには求償権を放棄してもらうしかないのですが、放棄する以上は慰謝料を半額にして欲しいとの提案を持ちかけてくるのです。
 
 
Cとしては負担してもらう慰謝料額が求償権を放棄してもらうことでいきなり半額になってしまうので納得しがたい気持ちになると思いますが、そもそも不貞行為についてはAとBの双方の責任である以上はやむを得ないところです。
 
 
 

5 求償権放棄を不倫相手に持ちかけることの意味について

 上記とは別に、不貞をされたCの立場から積極的に不貞相手のBに求償権放棄を持ち掛けることも考えられます。
 
 これは多くは不貞行為の発覚後もCがAとの離婚を臨まないで夫婦婚姻生活を維持する場合です。
 
 Cとしては、深く傷つきつつもAとBの関係が今後一切解消し、Bがしっかりと責任を果たし、以後、Aと接触をしないと約束してくれるのであれば夫婦関係を継続するのでそれで構わないと考えている時に、求償権を巡ってBとAとがやりとりをしたり、交渉をしたり、場合によっては訴訟になったりする可能性を避けたい時に、このような求償権の放棄を打診することがあるのです。
 
 求償権放棄を打診されたBとしては、もともと負担すべき慰謝料額が求償権の放棄によって半額程度になるので、Aとの関係終了を考えているようであれば、これに応じることは大きなメリットとなることが通常です。
 
 しかし、負担割合について5:5では納得できないような場合や、何だかんだ言ってもAに対する未練があるような場合や関係継続を希望している場合には素直に求償権放棄に応じ難い気持ちだろうと思います。
 
 なので、求償権の放棄については、当該不倫関係のあり方をどう解決するかという問題にも深くかかわってくるので求償権放棄をCから持ち掛けたのに素直に応じないようであれば注意が必要です。
 
 
 
執筆者;弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)
1979年 東京都生まれ
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更
 

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