業務と関係のない私的なことで刑事事件になった。解雇になるか。
会社での業務外、すなわち完全に私的な行為については本来は会社と無関係であり、私的な行為が刑事罰に問われたとしても本来は会社から懲戒処分を言われる理由はないとも思われます。
しかし、私生活上の行為であっても、会社の秩序や信用に影響を及ぼす場合も少なくないことから、私生活上の犯罪行為も懲戒事由になるとされています(最判昭和49.2.28)。
とはいえ、懲戒解雇は労働者の身分を失わせる重い処分であることから、いかなる犯罪行為であっても当然に懲戒解雇が許されることにはなりません。すなわち、当該労働者の会社での地位、職務内容、犯罪行為の内容などに照らして当該犯罪行為を理由とした懲戒解雇が許されるかどうかが個別に判断されることとなります。
たとえば、職業運転手が私的に飲酒運転をして人の死傷を伴うような事故を起こした場合には懲戒解雇が認められやすいといえます。
他方で会社の経理担当者が、私的に飲酒によらず、人に軽微なケガをさせる事故を起こしたような場合には懲戒解雇は行き過ぎとされやすいといえます。
以上のとおり、最終的には犯した犯罪行為の内容なども踏まえて個別の判断となるといえます。
執筆者;弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)
1979年 東京都生まれ
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更