試用期間を経過したと同時に本採用を不当に拒否されたが有効なのか
試用期間を定めた雇用契約については、その法的性質について「解約権を留保した雇用契約」と説明されます。
そのため、試用期間を経て雇い主が解約権を行使した場合には、本採用に至らず雇用契約は終了することになりそうです。
しかし、それでは不当な解約権の行使により生活を脅かされる労働者の権利は保たれません。
そこで判例では解約権の行使は「解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許される」(三菱樹脂事件・最判昭和48.12.12)とされています。これは解雇権濫用法理と同様の考え方であり、客観的に合理的な理由があることなどについてはすべて雇い主に立証責任があります。
そのため、試用期間の間に解約権を行使されてもやむを得ないような事情が認められない限りは解約権の行使について無効とされます(したがって雇用契約に基づいた賃金の請求が可能となる)。
執筆者;弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)
1979年 東京都生まれ
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更