刑の執行と刑の消滅~教師のわいせつ犯罪と資格再取得の可否~
ほとんど知られていないと思いますが、刑事犯罪を犯したことで刑事罰を受けた場合でも刑の執行が終了した後、相当期間が経過すると「刑の言い渡しは効力を失う」とされています。
このことの意味は、過去の有罪判決言渡しの効力は「将来に向かって消滅する」ことを意味します。
過去に有罪判決を受けたことは事実であっても、執行終了後、それなりの期間が経過したにもかかわらず、いつまでも「前科」に拘束されるのではなく、新たな人生を切り開く機会を確保するためのものともいえます。
特定の資格(医師や弁護士、教師、公務員、取締役など多数)においては、前科があると資格制限に該当し、当該資格を喪失したり取得できないこととなっているため、刑の消滅の規定を設けることで再度の資格取得を認めるものです。
最近では、教員によるわいせつ犯罪により失職した場合、免許の再取得自体を禁止する改正の意見が出ていましたが、本日の文部科学大臣の会見では、これを断念することになったとされています。
その理由として、わいせつ犯罪よりも重罪(殺人罪等)であったとしても、執行終了から10年で刑が消滅するのであり、そうすると殺人罪で服役して出所後10年経過すればいろいろな資格の再取得が可能なのに、教員のわいせつ犯罪のみ、永久に再取得を認めないというのはバランスを欠くためとされています。
たしかに、過去にわいせつ犯罪で教員資格を失ったとしても、一生、免許の再取得の機会を奪うことは行きすぎなのかもしれません。
ただ、教師によるわいせつ犯罪が後を絶たないことは事実であり、これはこれで法律や行政上のいろいろな対策が必要なことも明らかだと思います。
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