ネットに書き込みしてしまった場合の対処について
インターネットに他人の悪口や個人情報などを書き込みしてしまい、後で後悔をし、削除をしたいとか、被害者側からの開示請求がプロバイダーなどから届いた場合にどのように対処すべきか、という相談が多くあります。
まず、被害者からの開示請求が届く前の段階であれば、投稿先へ削除の任意請求を行い、これに応じてもらうことで投稿が削除になることがあり得ます。
次に、開示請求が届いた段階では、開示に応じるかどうかを慎重に検討し、回答をする必要があります。他人の悪口や個人情報といっても、あらゆる投稿が違法となり、開示の対象となる訳ではありません。
法的には、名誉棄損、侮辱、プライバシー権侵害などといった法的な権利侵害が肯定されることで初めて開示になるのです。なので、開示請求が届いた時点ではまず、自らの投稿が本当に開示請求者の権利を侵害しているかどうかを法的な観点から厳密に評価・判断することが重要です。
当然、この評価・判断には法律のプロであり、インターネット誹謗中傷問題に長けている弁護士に相談することが必須です(当事者の素人判断で法的に権利侵害があるかどうかを試みてもまずもってうまくいきません。ネット誹謗中傷の権利侵害性の判断はかなり高度な法的判断が伴います。)。
そうして、投稿内容が権利侵害に該当しないと判断された場合には開示請求に対しても堂々と「応じない」と回答すれば構いません。
他方で、弁護士への相談の結果、どうしても権利侵害が肯定されざるを得ないとなった場合には、二つの対応が考えられます。
一つ目は、事実を認め、反省の姿勢を示し、開示に対して任意で応じ、その後の示談に向けて交渉をするという対応です。
二つ目は、弁護士からの助言では権利侵害が肯定されるとしつつも、あくまで裁判所の判断を待つという対応です。
一つ目のやり方は、早期に被害者と比較的低額での示談の余地が生じるというメリットがあり、これは非常に大きなメリットと言えます。被害者からすると、投稿に対してかなり悪い感情を持っていますし、開示のために相当の費用と労力、時間を要しています。
なので、任意開示の時点で応じれば、費用も時間も労力も節約できるし、何より投稿者の反省の姿勢が見えることで収まりをつけやすくなります。
他方で二つ目のやり方は、権利侵害の判断を裁判所に委ねる結果、費用も時間も労力もかかります。任意開示に応じなかったということで被害者の心象も悪いです。なのである意味で裁判所の判断次第の一か八かの対応と言わざるを得ないものです。
以上、ネットに誹謗中傷などをしてしまった場合の対応について整理をしてみました。ネットは便利な道具ですが、その先には常に「人」がいることを深く理解し、誤った投稿に対しては誠実な対応をとることが必要だと考えています。もし誤った投稿をしてしまった場合には、何よりもまずこの分野に長けた弁護士への相談をお勧めします。
人は誰でも過ちを犯します。隠し通すことが良いのか、逃げずに対処すべきなのか、その判断の違いでその後の経過も大きく異なることでしょう。
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