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法律の庭

労災事故は労災トラブルに強い弁護士に相談を

労災事故に際し、労災保険で受けられる給付と、それ以外の補償について解説をしています。労災の問題は労災に詳しい弁護士に相談の上で適切な補償、賠償を受けてください。
 
【目次】
1 労働災害(労災)とは何か
2 労災保険で受けられる補償内容について
3 労災保険で受けられない補償について
4 会社に対する損害賠償請求の可否と内容について
5 労災事故を弁護士に相談するメリットについて
 
 

1 労働災害(労災)とは何か

 ⑴労働災害(労災)と使用者の責任について

  労働災害とは「労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡することをいう。」とされています(労働者安全衛生法2条1号)。
  かかる労災事故に対して、労働基準法では使用者は労働者に対して療養補償(労基法75条)、休業補償(同法76条)、障害補償(同法77条)、遺族補償(同法79条)などの補償を義務付けています。
  しかし、労災事故が生じた際に、これら療養補償などの補償をすべての使用者が自前で行えるとは限らず、そうなると被災した労働者の健康や生活は十分に守られません。
 

 ⑵労働災害保険について

  そこで、労災事故から労働者を守るために定められたのが労働災害保険制度です。
  この労働災害保険制度について、厚生労働省のウェブサイトでは「労災保険制度は、労働者の業務上の事由または通勤による労働者の傷病等に対して必要な保険給付を行い、あわせて被災労働者の社会復帰の促進等の事業を行う制度です。その費用は、原則として事業主の負担する保険料によってまかなわれています。」と紹介されています。
 

 ⑶労働災害保険の対象者について

  また、労働災害保険は、「原則として 一人でも労働者を使用する事業は、業種の規模の如何を問わず、すべてに適用されます。なお、労災保険における労働者とは、「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」をいい、 労働者であればアルバイトやパートタイマー等の雇用形態は関係ありません。」とされており(上記厚生労働省ウェブサイトより)、その結果、あらゆる労働者が労働災害に遭った際に守られるようになっているのです。
  なお、労働災害保険は、使用者が労働者を雇用さえすれば保険関係が成立するとされており、仮に使用者が労働災害保険料を納付していなくても、労働災害事故の際には保険給付を受けることができることとなっています。その意味でも労働者に対する手厚い補償であることが分かります。
 

 ⑷労働災害と認められるための要件について

  労働者が被災した事由が「業務上」のものと認められて初めて労災保険の適用が認められます。そこで、この「業務上」のものと認められるための要件が問題となります。
  この点については、①業務遂行性(労働者が使用者の労働関係上の支配下にあること、②業務起因性(使用者の支配下にあることに伴う危険が現実化したものと経験上認められることが必要であるとされています。
 

2 労災保険で受けられる給付内容について

  労災保険給付で受けられる給付の内容は以下のとおりです。

 ①療養補償給付

  いわゆる治療に必要な費用であり、全額給付されます。
 

 ②休業補償給付、休業特別支給金

  労災事故により休業を余儀なくされた際に補償される給付です。
  休業の初日を含む3日目までは待機期間となり、以後の休業期間について支給されます。給付の内容としては、給付基礎日額の6割を休業補償給付で、2割を休業特別支給金で受けられます。結果、給付基礎日額の8割が補償されることとなります。
 

 ③障害補償年金、障害補償一時金、障害特別年金、障害特別一時金、障害特別支給金

  労災による傷病が症状固定となった後に、障害が残る場合に支給されます。障害等級1から7級は年金で、8から14級は一時金で支給されます。
 

 ④遺族補償年金、遺族補償一時金、遺族特別年金、遺族特別一時金、遺族特別支給金

  

 ⑤葬祭料

 

3 労災保険で受けられない補償ないし賠償について

 以上のように労災保険では、労働者の被災事故に対して相当手厚い補償が定められています。
 とはいえ、労災保険は労災事故の際に労働者の生命身体やその後の生活を守るための最低限の補償を保険で賄うという意味合いが強く、そもそも労災事故について使用者側に責任があった場合のその他の補償については保障の対象とされていません。
 具体的には、使用者に落ち度がある労災事故であれば、労働者は使用者に①傷害慰謝料、②入院雑費、③付添看護費用、④後遺障害慰謝料、⑤逸失利益、⑥死亡慰謝料について労災保険で補償されない金額の支払いを求めることが可能なのです。
 そして、これら①から⑥の支払い額は数百万円から数千万円、場合によっては一億円を超える賠償額となることもあるのです。
 そのため、労災事故により労災保険の補償を受けたからすべてを満足してしまって良いかどうかは慎重に判断が必要です。
 

4 会社に対する損害賠償請求の可否と内容について

 以上を前提に、労災事故に使用者に責任があるかどうかをきちんと見極め、かつ請求可能な補償額を検討することは受けた事故の損害を回復するためにとても大切なこととなります。
 その際、使用者である会社に損害賠償を求めるためには、不法行為に基づく損害賠償請求もしくは雇用契約上の安全配慮義務に基づく損害賠償請求が考えられます。
 これらの法律構成による損害賠償が可能だとした場合には今度は具体的に受けられる賠償額の計算をします。
 その上で、損益相殺、過失相殺の計算をします。損益相殺は、労災事故により損害を被った反面、労災保険等の給付を受けた額を使用者に対する請求額から差し引きすることとなります。過失相殺は、労災事故について使用者に落ち度があるとしても、同時に労働者側にも落ち度が認められる場合には、損害額の何割かが相殺されてしまうので慎重に検討が必要です。
 これら検討を踏まえて、最終的には労災保険の申請とは別に、使用者に対する損害賠償を示談交渉もしくは裁判などで求めて行くこととなります。
 

5 労災事故を弁護士に相談するメリットについて

 以上が労働災害に遭った際の労災保険による補償内容と、労災保険では賄われない民事損害賠償の内容についての解説になります。
 労災事故は、日ごろからお世話になっている自分の会社での事故であることが通常であるため、社長などから労災申請をしないで欲しいとか、労災保険だけで勘弁して欲しいとか、労災保険に加えて見舞金を出すから損害賠償は放棄して欲しいなどと求められ、これに応じてしまうケースが多々見受けられます。
 しかし、上記のように民事損害賠償を求めることで相当額の賠償を受けられることもあり、仮に後遺障害を負った場合にはしっかりとこれら賠償を受けることがその後の生活や家族のために極めて大切なことです。
 また、そもそも労災保険でしっかりとした後遺障害認定を受けることの可否や、民事損害賠償請求の際に、きちんとした法律構成の下、妥当な金額の請求を求めるためには労災事故に詳しく、専門的かつ経験のある弁護士への相談や依頼が必須です。
 そのようなことから、労災事故に遭われた場合には、詳しい弁護士への相談をお勧めいたします。
 
 
執筆者;弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)
 
1979年 東京都生まれ
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山県倉敷市に岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更
2022年 香川県高松市に香川オフィスを開所
 

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