初の「発信者情報開示命令事件」
昨年10月に改正法が施行された特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(俗称「プロバイダ責任制限法」ないし「プロ責法」)に基づいて、発信者情報開示請求が容易になりました。
具体的には、これまでの裁判手続きでは、①コンテンツプロバイダー(掲示板やSNSの運営会社)に対して当該投稿にかかるもしくは当該投稿と近接した時点でのログイン時のIPアドレスの開示を求める仮処分や裁判が必要であり、②その結果得られたIPアドレスを踏まえて今度はアクセスプロバイダー(NTTドコモやメガエッグなどというネットサービスを提供する会社)に対して、当該IPアドレスを割り付けていた契約者情報の開示を求める訴訟を起こす必要がありました。
それを簡易化するため、新たに改正法により「発信者情報開示命令」制度という非訟事件の類型が加わったのです。
この制度を使うと、ひとつの手続でコンテンツプロバイダーへの開示命令、その結果を踏まえたアクセスプロバイダーへの開示命令が可能となり、手続の簡略化や早期化が実現することとなります。
そして、この制度を利用するに際しては、コンテンツプロバイダーの所在地を管轄する裁判所に申し立てをすることが大半なので、必然的に東京地裁や大阪地裁に事件が集中することとなります。
そうした中、この度、当事務所でも同制度に基づく発信者情報開示命令申立て手続の依頼を受け、偶然にも管轄が高松地裁となる案件がありました。
高松地裁の担当書記官にお聞きしたところ、昨年の法改正から今回のうちの申し立てが初の案件となったとのことで、新しい制度の初の案件をこの高松地裁で対応することとなりました。
今後、新制度に基づく手続の状況などご案内ができるものがあればまたご報告いたします。
本人尋問、証人尋問について
民事、家事の裁判でお互いの主張と立証を書面で一通り提出し終わると、その後の裁判手続きの進行として「尋問」手続に移行することがあります。
いわゆるテレビドラマや映画でよく見る「あのシーン」です。
この尋問手続きは、当該裁判の中で原告と被告の間で相違する事実関係について、訴訟当事者である原告本人や被告本人、もしくは当該事実関係について知っている第三者に法廷の場で直接、その認識を問うための手続きです。
尋問手続きは何度も繰り返すことはないし、やり直すこともできない言わば「一発勝負」のため、事前の準備と当日の集中力、それから瞬発力が非常に大切になります。
まず、事前の準備としては、それまで出された双方の書面(訴状、答弁書、準備書面、書証)をきちんと精査し、内容を改めて把握しておくことが大切です。
事件によっては数百ページに渡ることも、さらにはそれを超えることもあるのでこの事前準備はとても大切です。
次に、記録を精査した上で、当日に向けて誰に何をどの順番で聞くのかを検討し、しっかりと整理しておくことが大切です。これがないと、いざ当日、何か聞こうと思っても当然うまく行きません。
そして当日はやり直しの聞かない一発勝負なので一瞬たりとも集中力を切らすことはできません。体調管理もまた大切になります。
その上で尋問の最中にこちらに有利な証言や、不利な証言が出ようものなら間髪入れずにそこを追及したり、フォローしたりする必要があります。
こうした事前の準備や当日の対応の結果、当該訴訟の勝敗や結論の行方が決まってくるのです。
当然、とても労力のいる作業ですが、そんな尋問手続きが今年は2月までに5件あり、年明け以降、準備や対応に忙しくしております。
弁護士になるために必要な「二度の試験」
弁護士になるためには司法試験に合格することが必要です。
この司法試験については多くの人が知る所ですが、実は司法試験に受かった後、弁護士になるまでに「もうひとつの試験」があることはあまり知られていません。
この「もうひとつの試験」とは、俗に「二回試験」と呼ばれており、司法試験に受かった後、司法研修所の研修を経て研修所を卒業するために必要な試験です。
そして、この二回試験に受かってやっと、弁護士登録が可能となるのです。
この二回試験の何が難しいか、ですが、司法試験に合格した人々が受験するという試験なため当然、難易度は高いです。しかも、基本的にはほとんど全員が合格していく試験なため、プレッシャーがかなりあります。
さらに、試験は数日間に渡り、その間、朝に始まり夕方に終わる試験を複数こなす必要があります。当然、体力も必要です。
このようなあまり知られていない二回試験ですが、実は今日が今年の二回試験の発表日でした。
そして実は当事務所で内定を出していた修習生の合格発表を心待ちにしていたのです。
結果、無事に合格の連絡を受け、さきほど事務所内で喜びの声が上がったところでした。
ということなので、この12月に当事務所に新しく弁護士が加入することとなりました。またおいおい弁護士紹介のページにてご紹介ができると思いますのでそれまでまたお待ち頂けたら幸いです。
今日は、嬉しい合格発表の日となりました。
【倉敷】女性弁護士への相談をご希望なら
2019年より当事務所に河田布香さんという女性弁護士が加入してくれています。
彼女は現在、3年目のまだまだ新人弁護士ですが、とはいえもう弁護士として3年目を迎える中、かなりの経験を積んできました(呉が容赦なくあれこれ無茶ぶりするからです)。
また、見た目の雰囲気に関わらず、生まれ育った特異な(失礼)環境から、人一倍どころではない人生経験があります。
【彼女のプロフィールはこちら↓↓↓】
https://kakehashi-law.com/modules/kakehashi/index.php?content_id=26
彼女は女性弁護士としてこれまでの類まれな人生経験をバックボーンに離婚問題、不倫問題、男女の恋愛上のトラブル、子どもの権利(いじめや虐待被害など)に非常に優れた案件対応をしてくれています。
当然、これら案件以外にも彼女の能力は多分に発揮されており、男性の私からすると「よくここまでできるな。」と色々な意味で関心することが多々あります。
そのような彼女の女性弁護士としての能力や人柄が買われてか、今年に入ってからはとにかく彼女に対する「指名」がめきめきと増えました。
おかげでこれまで以上に当事務所がご提供できるサービスの質と多様性が高まったと自負できています。
「どんな場合に河田布香弁護士が指名されるか?」
ですが、
主に、自分の困っている境遇をうまく言葉にできないけど丁寧に汲み取って欲しいケース、女性同士の目線で対応してもらいたいと考えているケース、しっかりと話を聞いてもらいたいケースが多いように見受けられます。
なので、弁護士へのご相談をご希望の際には、ご自身が女性弁護士への相談に向いているとか希望したいということであればどうぞご遠慮なく河田布香弁護士をご指名ください。
なお、当然の事ながら、呉には呉の良さがあると自負していますので、呉弁護士を希望の方はやはり私を(ご遠慮なく)ご指名ください。
では、もう間もなく弁護士4年目になる女性弁護士河田布香さんの現在の活躍ぶりのご紹介を終わります。
(ちなみに倉敷にはまだ女性弁護士は河田布香さんを入れて9名しかいません。弁護士業界のジェンダーフリーはまだ先になりそうです。これはこれで引き続き考えて行かないと、変えていかないといけない問題です。)
文書連続送付により ストーカー規制法違反で初逮捕
令和3年にストーカー行為規制法が一部改正され、ストーカー行為の内容に、文書の連続送付が加わりました。
今回はかかる文書の連続送付を被疑事実として、岡山県内初の逮捕事例が報道されていました。
【NHK NEWS WEB 2022年8月24日】
https://www3.nhk.or.jp/lnews/okayama/20220824/4020013778.html
報道では、5月1日から1か月余りの間に、「電話だけはしてください」などと書いた手紙を3回に渡って女性の車のワイパー部分に置くなどしたとのことです。
ストーカー行為規制法は文書の連続送付以外にも、GPSの設置やこれによる位置情報の取得がやはり令和3年の法改正により規制の対象となっていて、今年5月にはかかる規制に違反したことを被疑事実とした県内初の逮捕事例が報道されていました。
【改正ストーカー規制法の県内初逮捕~GPS設置の規制~】
https://kakehashi-law.com/modules/blog/details.php?bid=1057
このGPSの規制は今までになかった新しい類型についての規制ということでイメージがしやすいのですが、他方で今回の文書の連続送付については、そもそもどうしてこのような類型が規制対象になっていなかったのか不思議に思います。
というのも、ストーカー行為規制法では連続して電話をかけることや、FAXを送信すること、メールを送信することもストーカー行為として規制の対象となっていたからです。
ちなみに、ストーカー行為規制法で具体的にどのような行為がストーカー行為に該当し、規制の対象になるかは別のページに詳細を説明していますのでご参照ください。
【ストーカー行為規制法における「つきまとい等」と「ストーカー行為」の違いについて】
https://kakehashi-law.com/modules/terrace/index.php?content_id=182
いずれにしても、法改正の効果が出た事例だといえます。
弁護士の役割~依頼者との関係について~
弁護士は依頼者の代理人として種々、活動をします。「代理人」である以上は基本はあくまで依頼者の声を代弁する立場です。
ですが、弁護士の仕事や役割は単にこれに留まりません。
すなわち弁護士は時に依頼者に寄り添い共に前に進み、時に悩んだ依頼者の決断を後押しし、場合によっては前に進むこと自体が困難な状態に陥った依頼者を前から引っ張りという役割を担います。
弁護士は依頼者の方と長きに渡り関係を続けますが、その時その時の状況に応じて最適な役割を果たすのです。
なので弁護士は依頼者の方に常に意識を向け、その様子を観察しています。依頼者の方の状況を踏まえての対処をするためです。
その上で弁護士はいつかは依頼者と離れるようになります。それは依頼を受けた案件が解決し、依頼者が新しい道を一人で進む、進めるようになった時です。
弁護士はこのことも当然、視野に入れて受任をし、事件処理をしています。言い換えると、いつまでも弁護士頼みでは本当の意味での紛争の解決にはならないということです。
逆に言うと、弁護士に頼らず物事を判断したり、決断したりできるようになればもはやその紛争や抱えた悩みは解決したとほぼ同視できます。
したがって、最後は弁護士の手を離れ、一人で前に進むことができるように、それまでの間、しっかりとサポートをすることを心掛けています。
野洲市長の「何が」パワハラなのか~明石市長パワハラ問題との相違も踏まえ~
野洲市長の言動の一部が第三者委員会により、パワハラと認定されたことが話題となっています。
弁護士や学者で構成された第三者委員会による調査報告書(https://www.city.yasu.lg.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/9/toshinshokohyo.pdf)を見たところ、問題となった言動は次のとおりです。
1病院の整備場所について協議中、
①市長席の机にペンを投げつけ、②「三日間協議しても同じや。」、③「良い案がないなら市長室に入るな。」と発言をした。
2 土砂災害警報は発表されている中で、携帯に架電してきた職員に④「偉そうに言うな。」と発言した。
3 来客に職員を紹介する際、⑤「こいつは、頑固でうんこや。」と発言した。
4 閉会直後の議場において、⑥「ええかげんにせえよ。」⑦もっと協議したやろ、それは言えんのか。」⑧「P、お前もじゃ。」と罵声を浴びせた。
これら言動のうち、第三者委員会は、①、②、④、⑥~⑧の事実を認定した上で、これらをいずれもパワハラに該当すると判断しました。
他方で、③、⑤については事実を認定できず、パワハラに該当するとの判断に至っていません。
そもそも本件は、懸案となっていた病院の移転先を巡る市長自身の公約と、その実現が困難な状況を踏まえての職員との対立の中で生じた出来事ですが、パワハラ認定された言動は、思う通りにならない苛立ちを行動で示し、職員を黙らせ、威嚇するという側面があります。
当然、これら言動をみた他の職員は、他の案件でも「市長を怒られたら怖い。」と感じ、遠慮がちな進言もしくは市長の意に沿った進言しかしないようになる可能性があります。
よって、上記①、②、④、⑥~⑧がパワハラと認定されたことは当然だと言えます。
他方で、事実自体が明らかでないとして、③「頑固でうんこ」発言についてはパワハラの認定に至っていません。
仮にこれが事実であると証拠をもって明らかにできていれば、他人に職員を紹介するに際して「うんこ」と評することは明らかに侮辱ですし、業務上の必要性も相当性も欠く行為としてパワハラと判断できます。
ところで、市長の職員に対するパワハラ問題と言えば、数年前の明石市長の「火つけてこい」発言があります。
この事案は、立ち退きがうまくいかないことに苛立った市長が職員に対して「もう行ってこい、燃やしてこい、今から建物」「損害賠償、個人で負え」などと発言した問題です。
かかる発言は刑事罰に相当する行為をするよう求めるものですから、業務上、必要かつ相当な行為とは言えないことは明らかです。
そして、この件では、当該発言が録音されていて、マスコミにも流れたこともあり発言の有無自体は争いになりませんでした。
その意味で野洲市長の「頑固でうんこ」発言と異なる顛末を辿っています。
このように、発言を基にしたパワハラの主張に際しては、録音がいかに重要かということが分かります。
いずれにしても、地方自治体の長という権力の長に着くと、自分の政策目的実現に向けて職員に対して乱暴な言動をとるケースが少なくないことが分かります。そのため、有権者は、市長の本当の意味での人柄も踏まえて投票行動に出るべきだと思います。
兵庫・尼崎市の個人情報紛失事案とその刑事責任について
兵庫県尼崎市、全市民の個人情報が入ったUSBメモリーが紛失したとして大問題になっています。
紛失の経緯としては、業務委委託先の社員が、飲酒し、路上で眠り込んでしまい、目を覚ました時にはUSBメモリーが入ったカバンごと無くなっていたとのことです。
「今どき全市民の情報をUSBメモリーで管理?」
「それを持ったまま飲酒し、路上で眠り込む?」
ツッコミどころ満載なこの事件、先日の阿武町と同じような自治体業務の脆弱性を感じさせます。
ところで、本件ではUSBメモリーを紛失した当該従業員に、何らかの刑事責任は課されないのでしょうか。
この点、すぐに思いつくところとして個人情報の保護に関する法律があります。
この法律の第1条は、デジタル社会の進展に伴う個人情報の利用の著しい拡大を踏まえ、国、自治体、取り扱い事業者などに義務を課し、個人の権利利益を保護することを目的として定めています。
まさに、本件事件のような事態に備えた法律と言えそうです。
当然、尼崎市も、業務委託先の事業者も個人情報保護法に基づき、適切かつ厳格な情報管理の義務を負うこととなります。
ところが、個人情報保護法の罰則規定自体は、いずれも故意犯とされ、過失により個人情報を流出した場合を刑事罰の対象としていません。
たとえば正当な理由がないのに個人情報ファイルを提供した時には2年以下の懲役又は100万円以下の罰金という規定がありますが(個人情報保護法171条)、「提供」という文言からも明らかなとおり、これは故意犯となります。
他にも罰則規定は複数定められていますが、いずれも過失により個人情報を流出したとか、過失により個人情報ファイルを紛失したという定めはないのです。
過失犯を定めていない理由としては、そもそも個人情報の流出という事態は通常、意図的に何者かによってなされることを想定しているからではないか、過失により個人情報を流出した場合を罰則の対象とすると規制対象が広範に過ぎることになるからではないか(たとえば行政機関の職員が謝ってAさんの個人情報をBさんに通知してしまった場合でも刑事罰の対象とするとあまりにも罰則の範囲が広すぎる)と思います。
いずれにしても、本件事件では紛失した当該従業員については刑事罰として何か問われることはあり得ません。
他方で、民事上の損害賠償の問題については、個人情報が現実に流出した場合には、その精神的苦痛に対する賠償を尼崎市や業者に求めることが可能です。
ただし、その額はごく低額にとどまることが裁判例の傾向です。たとえばベネッセコーポレーションの情報流出事件では、原告ひとりあたり3000円の慰謝料がベネッセの関連会社に認められているにとどまっています(ベネッセに対しては棄却)。
そうすると、本件事件で我々が考えるべきは、現代社会における個人情報の扱いをどのように行うべきか(自治体の情報管理のあり方、USBメモリーでの管理のあり方の是非、業務委託先選定のあり方など)であり、それこそ民主的な議論を経て行政サービスの質を問い、また選ぶ時代なのではないかと思います。
猪瀬氏のボディタッチと海老沢氏の「擁護」が問題な理由
2022年6月12日にJR吉祥寺駅前で行われた日本維新の会の街頭演説会で、猪瀬直樹氏が、参院選立候補予定の海老沢由紀氏の体を何度も触るという出来事がありました。
動画が広く公開されているため、ご覧になった方も多いと思いますが、肩や胸元を何度も触っている状況がよくわかります。
このことがセクハラに該当するのではないかと批判されると、猪瀬氏は、公式Twitterで次の通りツイートしました。
「仲間を紹介する際、特に相手が異性の時は肩に手をやるなど身体を触ることには慎重になるべきだとご指摘をいただきました。確かに軽率な面がありました。十分に認識を改め、注意をして行動していきたいと思います。改革のために、引き続きご支援のほどよろしくお願い申し上げます」
他方で、触られた側の海老沢氏は、Twitterで次の通りツイートしました。
「猪瀬さんとわたしの関係では全く問題が無かったものの、猪瀬さん本人からは丁寧なご連絡がありました。胸にあたってもいないし、話題になったことにむしろ驚いたほどなのに、誠実な対応だと思います。」
このように、海老沢氏は、自分の体を公の場でベタベタ触り回った猪瀬氏のことを「誠実な対応だ」と擁護にまわったのです。
そうなると、触られた側が容認している以上、猪瀬氏の行動は、果たして「セクハラ」といってよいのか、海老沢氏の擁護の姿勢には何ら問題がないのか、モヤモヤとした気持ちが渦巻いている方も多いと思います。
この点、たしかに、触られた側が真意に基づき、触られることに同意をしているならセクハラに該当しません。当然のことです。いくら客観的にはセクハラと評される行為であってもそうなります。
ただ、本件で気を付けて欲しいのは、海老沢氏が猪瀬氏のことを擁護するのはあくまで置かれた立場上、当然のことであるという点です。
また、問題の本質は他にもあって、国会議員に立候補するような人物が、公の場で、一般的にはセクハラと評されるような行動をとられたにも関わらず、何ら意に介さないどころか、触った側を擁護する言動をとったという点です。
すなわち、あの動画とその後の海老沢氏の擁護発言は、世の中で蔓延し、今も被害が多数生じているセクハラについて、「あの程度のボディタッチはしても構わないんだ。」との誤解を多くの男性に植え付けているということです。
その結果、あの動画と海老沢氏の擁護発言のために今も新たなセクハラ被害が生じている可能性すらあるのです。
そのような結果を生じうることを海老沢氏はきっと考えもせずに単に置かれた状況ゆえに猪瀬氏のことを擁護したのだと思いますが、やはり政治家を目指す以上、自分の言動が社会にどう影響を与えるのかもっと考えて欲しかったです。
当然、最終的には有権者の判断です。この度の擁護発言を踏まえて海老沢氏に投票をするかどうか、しっかりと考えて決めてもらったらと思います。
一番残念なことは、ひょっとすると、世の中のセクハラ加害男性ないしその予備軍の方々が海老沢氏に多数投票し、当選するという結果です。
そうはならないことを心から期待します。
他人の金で勝った賞金の行方~阿武町事件でもしも被疑者がカジノに勝っていたら~
実際にはネットカジノは利用していなかったのではないかとのことになっている阿武町の件ですが、「仮に阿武町から誤送金されたお金で実際にネットカジノを利用し、大勝ちしていた場合、差額は誰のものになるのか?」という問題があります。
この点、民法上の不当利得返還請求権や不法行為に基づく損害賠償請求権の理屈では、阿武町は差額の返還等を求めることはできません。
すなわち、不当利得返還請求というのは、生じた損失に対して、利得の損する限度において返還する義務を負うものであり、ここでいう「生じた損失」というのは阿武町が誤送金をした4630万円となります。
そのため、仮にネットカジノで大勝ちし、4630万円以上の大金が被疑者に残されても、阿武町が返金を求めることができるのはやはり4630万円に留まるのです。
一応、民法704条では「悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない」となっているので、利息の返還義務は生じます。が、これもやはりカジノで勝った額そのものの返還ではありません。
次に、不法行為による損害賠償ですが、これもやはり生じた損害に対する賠償を意味するので、阿武町が被った損害たる4630万円と弁護士費用程度が請求可能になる程度です。
ということなので、被疑者が仮にカジノで大勝ちしていた場合には、非常に納得し難い感情が市民、国民の中に広がることは明らかです。とはいえ、法治国家ですから、被疑者がカジノで勝った金を保有すること自体、違法と言えない以上は、強制的に奪うことは誰にもできないこととなります。