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法律の庭

ネットへの書き込みやアップロードが犯罪になる場合と処罰について知りたい。

【目次】

1 ネットへの書き込みやアップロードが犯罪になる場合について

2 ①名誉棄損について

 ⑴刑法上の名誉棄損と民事上の名誉棄損について

 ⑵事実適示の具体例について

 ⑶ネット上の名誉棄損行為とその後の捜査や裁判について

3 ②侮辱について

4 偽計業務妨害について

5 脅迫について

6 著作権侵害について

【本文】

1 ネットへの書き込みやアップロードが犯罪になる場合について

ネットへ書き込んだ内容や、各種データをアップロードしたことが犯罪となるのかどうか、犯罪となるとした場合にどのような手続き(逮捕の有無など)があり、最終的にどのような刑罰になるのかをご説明します。

まず、ネットへの書き込みが犯罪になる場合としては、①名誉棄損、②侮辱、③偽計業務妨害、④脅迫、⑤著作権侵害などがあり得ます。したがって、これらについて順次説明をします。

 

2 ①名誉棄損について

⑴刑法上の名誉棄損と民事上の名誉棄損について

 ①刑法所の名誉棄損(刑法230条)とは、事実を適示して人の社会的評価を低下させる行為です。その法定刑は「三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金」とされています。

 すなわち、刑法上の名誉棄損は、事実を適示することによる名誉棄損のみを処罰の対象としています。

 条文上は、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず」とされているところこれは、「事実を適示したものの、その事実が本当に真実か否かにかかわらず」名誉棄損と認定されることを意味します。

すなわち、名誉棄損罪の成立に必要な「事実の適示」とは、「真実」である必要はないのです。

 

 他方で民事上は、他人の社会的評価を低下される行為であれば、事実の適示がある場合に限らず、論評による場合でも名誉棄損が成立します。

 この点で刑事上の名誉棄損と民事上の名誉棄損の成立範囲が異なります。刑事上は、事実の適示を伴わない行為は侮辱罪の成否が問題となります。

 

⑵事実適示の具体例について

 この、事実を適示の例としてたとえば

「〇〇病院の院長は、新人看護師の尻を触るスケベな医者だ。若い女性の患者を食事に誘うこともあるから気を付けた方がよい。」

という表現があったとしたら、「新人看護師の尻を触る」という部分が事実の適示に該当します(この院長が本当に新人看護師の尻を触るかどうかは問題ではありません。これが上記の「事実の適示」とは、「真実」である必要はないということの意味です。)。

 

 単に「スケベな医者だ。」と述べただけでは具体的な事実の適示があったとまでいえるかどうかの判断が付きがたく、「スケベ」の具体的中身を事実として適示する「新人看護師の尻を触る」という部分が重要になってくるのです。

 

 ただし、「スケベ」という表現をもって「具体的な事実の適示」と評価できるともいえるので(スケベという表現自体で、他人に対して性的な強要をする人物との評価ができるなど)、何をもって「事実の適示」と評価するかは非常に難しい問題です。

 

⑶ネット上の名誉棄損行為とその後の捜査や裁判について

 ネット上の表現行為について、名誉棄損の罪で刑事告訴を受けると、投稿者の特定が行われ、投稿に使われた端末の捜索差押がなされます(名誉棄損罪は親告罪なので被害者の告訴がないと公訴提起ができず、公訴提起の前提としての捜査も行われません。)。

 

 他方で、逮捕まで至るかどうかは投稿者に前科があるかどうかなどによってまちまちだといえます。

 

 そして、一定の捜査の後、投稿者が事実を認めるようであれば略式罰金にて数十万円の罰金で終わることがあり得ます。

 

 前科があるとか事実を否認している、もしくは被害の程度が著しい場合には正式裁判といい、公判での裁判が開かれます。その上で有罪の認定を受けると、多くの件では懲役刑、ただし執行猶予付きとなると予想されます。

 

3 ②侮辱について

 ②侮辱罪(刑法231条)は、(名誉棄損と異なり)事実を適示することなく、他人の名誉感情を侵害するもので、その程度が著しい場合に刑事罰の対象となりやすくなります。たとえば「バカ、うそのろ」などの投稿を再三に渡り繰り返した場合です。

 

 侮辱罪については現在、懲役刑を含める法改正が検討中ですが、現時点ではまだ抑留と科料しか定めがありません。それでも侮辱を理由として刑事手続きが進み、判決に至るようなら前科であることには変わりはありません。

 侮辱罪の法定刑は法改正の結果、懲役刑を含むものとなりました。具体的には、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料とされています。
 
 侮辱罪も名誉棄損罪と同様に親告罪とされ、被害者による告訴が公訴提起の条件となっています(刑法232条1項)。

 

4 偽計業務妨害について

 ③偽計業務妨害罪(刑法233条)は、虚偽の事実を告げて他人の業務を妨害する行為です。「〇〇病院に爆弾をしかけた。」という類のものがそれです。法定刑は三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金とされています。

 偽計業務妨害罪は、ネットでの書き込みによる実害が大きくなりがちな類型であり、かつ頻発していることもあり、上記2類型よりも重い処罰となりやすいです。被害相談があれば警察はすぐに犯人の特定に進み、身柄の確保(逮捕)とその後の刑事処分へと繋がりやすいです。

 量刑としては、悪質性の程度や前科の有無などにもよりますが、上記①よりも厳しい結論になりやすいといえます。

 

5 脅迫について

 ④脅迫罪(刑法222条)は、③に似た類型であり、他人の生命身体、財産などに対して危害を加える旨を告知し、脅すものです。「〇〇病院の患者をナイフで傷つけてやる」という類がそれです。法定刑は二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金です。

 この類型も悪質性が高く、上記③と同様の結論を迎えることが多いといえます。

 

6 著作権侵害について

 ⑤著作権侵害は、最近、増えている類型ともいえるものです。漫画やアニメの動画、AVなどをネットにアップロードするなどした結果、著作者の著作権を侵害したというものです。法定刑は「10年以下の懲役、1000万円以下の罰金またはその併科」とされています。

 

執筆者;弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)
 
1979年 東京都生まれ
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山県倉敷市に岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更
2022年 香川県高松市に香川オフィスを開所
 

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