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ネット名誉棄損における発信者情報開示請求が容易ではない理由~ネット誹謗中傷の被害回復のための方策と今後の展望について~

2020-12-4 9:39  執筆:oh

ネット社会の現在、その誹謗中傷被害も増え続けています。有名人の方の被害も広く報道され、また一般人の方も何らの理由なくある日突然、誹謗中傷の対象となるなどその被害の実態は深刻です。

たとえば有名人のケースでは木村花さんの件がありました。また、一般人のケースでは、あおり運転の同乗者であるとのデマが拡散したケースがありました。その他、一般企業でも社長がコロナに感染したなどとのデマが拡散し、被害を被ったケースもあります。

これらはいずれも昨今の社会情勢の中で誹謗中傷が拡散したケースですが、一市民がある日突然、誹謗中傷をされるケースも多々あります。

 

このような被害に対しては、発信者情報開示及び削除、その後の損害賠償請求という法的措置が可能ですが、これら制度は必ずしも利便性が高いとか、その効果が高いとは言い難いのが実情です。

 

その理由の一つが、発信者情報開示に至るまでの法的プロセスの困難性です。

具体的には、発信者情報開示を受けるには、

➀投稿された媒体(掲示板やSNS)に対してIPアドレスの開示を求める

②開示を受けたIPアドレスから投稿に用いられたプロバイダーを調査する

③当該プロバイダーに発信者情報開示訴訟を起こす(併せて発信者情報の保存を要請などする)

④発信者情報請求訴訟で勝訴したら開示された発信者情報に基づき、投稿者に対する損害賠償請求を起こす

 

という長い道のりが必要で、弁護士費用もそれぞれ必要になるからです。

期間としては➀~③までで約10カ月、④でさらに半年~1年が必要なのが現在の裁判実務です。

 

その上で、たとえば今どきはネット上の媒体にも多くの物があり、上記の➀に関し、媒体の運営会社に辿り着かないケースがあったり(そうなるとIPアドレス自体の開示が受けられない)、書き込みをした媒体が特殊なケース(Wi-Fi利用など)だと③で開示を受けた発信者情報と実際の投稿者とが結びつかなかったりという問題もあります。

 

このような実情を踏まえ、総務省では法改正の在り方をずっと検討してきていました。そして、いよいよ上記の問題を解決するための方法の一つとして、一回の手続きで発信者情報の開示を受けられるような制度の創設が目指される方向で取りまとめがなされました。

これが実現すれば、上記➀~③がまとめて一つの手続きで行うことが出来る想定のようです。当然、期間も費用も節約できます。

私としては、これから先の時代もネットによる恩恵を受けて社会が発展する以上、その弊害たる誹謗中傷の問題にも早期に解決できる制度が重要だと思っているので、この度の総務省としての方向性は大歓迎です。

 

ただし、新制度の創設は、ネット上の誹謗中傷の問題をすべて完全に解決するものではありません。上記のようなWi-Fi利用での投稿者の特定の問題や、「執拗に繰り返される誹謗中傷の問題」(開示をしても、削除をしても誹謗中傷が繰り返されるケース)などまだまだ多くの問題があります。

そのため、今後も引き続き抜本的な解決を目指した制度の改正などが検討されるべきですし、本来的には、このような誹謗中傷をしないことを一人一人が心掛けるべきですので、そのような意味での教育や啓発活動が重要だと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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